和辻哲郎はいまも結構影響がある人である。
思うに、この時期のオールドリベラリストたちは、武力を用いる凡夫たちの変節をよく想定するのに、なぜ天皇の変節を想定しないのかはよく分からない。この論文だって、15年戦争の時の天皇を、古代以来、天皇が神道とも本質的には関係がなく、寧ろ仏教や儒教とともにあったやさしい存在である(そんなもんかな?と思うけど)ということにして、そこから類推しているだけのように思える。実証的には天皇がすべて命令していたとはとても証明できないにせよ、わたくしはまだ疑っている。天皇にすべての責任を負わせなければならないほど、彼から指示が出ていた可能性をである。
それにしても、和辻は過去の記述の方が鮮明で、現在の記述は曖昧だ。我々にもそういう傾向がありますね。