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爾に海神、自ら出で見て、「此の人は、天津日高の御子、虚空津日高ぞ。」と云ひて、即ち内に率て入りて、美智の皮の畳八重を敷き、亦畳八重を其の上に敷き、其の上に坐せて、百取の机代の物を具へ、御饗為て、即ち其の女豊玉毘売命を婚せしめき。故、三年に至るまで其の国に住みたまひき。
娘っこはニニギをみて「見感でて、目合し」(見た瞬間ビビッときて、目で交わった)た(若い者は是だからケシカラン)。そして「門にイケメンがおります」と父親に言うのであった。で、父親が確かめにいくと、そこには高天原の太子ではないかっ(
ジュゴンのある写真がこの前話題を呼んでいた。本当に人間の足があるように見えたのである。
https://www.reddit.com/r/pics/comments/4g31ap/beluga_whales_no_wonder_sailors_often_mistook/
それはともかく、水の神と合体した山の神は最強である。
わたしはよく知らないが、――あんがい古代から、政略結婚みたいなものは行われていたのかもしれない。たしかにこの話は南方系の神話にみえるのではあるが、それだけではここまで劇的な一目惚れにならない気がするのである。
公子、美女と手を携えて一歩す。美しき花降る。二歩す、フト立停まる。三歩を動かす時、音楽聞ゆ。
美女 一歩に花が降り、二歩には微妙の薫、いま三あしめに、ひとりでに、楽しい音楽の聞えます。ここは極楽でございますか。
公子 ははは、そんな処と一所にされて堪るものか。おい、女の行く極楽に男は居らんぞ。(鎧の結目を解きかけて、音楽につれて徐ろに、やや、ななめに立ちつつ、その竜の爪を美女の背にかく。雪の振袖、紫の鱗の端に仄に見ゆ)男の行く極楽に女は居ない。
――泉鏡花「海神別荘」
どういう話か忘れてしまったが、泉鏡花は最後にいいこと言った。ニニギが行ったところは極楽ではなく、四国とか瀬戸内海とかの豪族の所なのであろう。故郷を追われた若者がそこでまた一旗揚げたのではなかろうか。