伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

アソシエイト 上下

2013-02-24 16:16:55 | 小説
 イェール大学ロースクールの優等生が、5年前のアパートでの乱痴気騒ぎをめぐるビデオで正体不明の男から脅され、世界最大を誇る法律事務所に就職してその事務所が担当している8000億ドル規模の訴訟の機密情報を漏洩することを求められるという設定のリーガルサスペンス小説。
 巨大な力による謀略の圧力と、巨大事務所の大量の証拠書類の山とそのセキュリティの壁に挟まれながら、新人弁護士が知恵をめぐらせ、FBIと協力しながら立ち向かうという設定とストーリー展開は、グリシャムの出世作「法律事務所」を彷彿とさせます。主人公のルームメイトの名前がミッチというあたりにも、「法律事務所」を意識しているよというグリシャムのサインが見て取れます(原作で読んだわけじゃないから綴りが違うかもしれませんが)。ストーリーの流れのよさも、あの頃のグリシャムが戻ってきた感じがします。作品自体の出来映えはいいと思います。そして「法律事務所」とは似ているけれども、謀略の主体と法律事務所の関係が違い、「法律事務所」のある種見せ場だった追いかけっこがないなどの違いがあります。そういったさまざまな要素を考え合わせて、グリシャムファンには、やはり「法律事務所」を想起させ、そのことがグリシャムの復活ないし健在を祝福すべき気持ちとノスタルジーと、出世作への回帰に行き詰まりと限界を感じさせる、複雑な思いを持たせるものとなっているように思えます。
 弁護士の目からは、この作品では多数登場する弁護士にワーカ・ホリックは多くても悪辣な人物が登場せず、グリシャムの弁護士総体への愛情がほの見えて少しホッとする思いがありました。


原題:The Associate
ジョン・グリシャム 訳:白石朗 
新潮文庫 2010年7月1日発行 (原書は2009年)
コメント
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