伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

顔に取り憑かれた脳

2024-06-26 23:57:23 | 自然科学・工学系
 顔についての識別や自己認識について検討し解説した本。
 自分と近い者の顔はわずかな差異でも識別できるが、そうでないものは容易に見分けがつかないもの(外国人の顔ってみんな一緒に見えたりしますし、私など、若いタレントグループなんかもう誰が誰だか判別できません)ですが、生後6か月の赤ちゃんは人間の顔も、サルの顔も見分けられる、でも生後9か月くらいになると人間の顔は見分けられるがサルの顔は見分けられなくなるそうです(79ページ)。聴覚の方でも、日本人の生後6か月の赤ちゃんはLとRを聞き分けられるけど生後10か月くらいになると聞き分けられなくなるとか(79ページ)。日常生活でよく使うことの方に能力資源が振り分けられて行くということなのでしょうけれども、人体の神秘を感じます。
 鏡に映った自分の姿を自分だと認識できることが確認されているのは、人間以外に、チンパンジー、オランウータン、ボノボ、イルカ、ゾウ、カササギ、ホンソウワケベラ(魚)くらいなのだそうです(90ページ)。もちろん、そういう実験をやった動物がそれほど多くないのでしょうけれども、サルや犬は認識できない(同種の別個体だと思っている)というのも不思議に思えます。
 犬は切なそうな表情をする(猫やウサギはそういう表情はしない)ことがよく見られますが、犬には眉毛の内側を上に引き上げる表情筋があるのだそうです(204~206ページ)。犬がそのように「進化」したというよりは、そういう人間に好かれる特性を持った犬が増殖された結果そういう犬が満ち満ちているということでしょうけど。でも、そういう表情筋が発達しているとして、犬がその表情筋を使ったとき、犬の内心でそれに見合った(人間がそうだと評価する)感情が生じているのかは、より緻密な実験・検証が必要に思えるのですが。


中野珠実 講談社現代新書 2023年12月20日発行

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 事例からわかる相談担当者の... | トップ | -196℃のゆりかご »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

自然科学・工学系」カテゴリの最新記事