伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

「ぼっち起業」で生きていく。

2024-12-30 22:01:43 | 実用書・ビジネス書
 会社勤めに向いていない陰キャでぼっちな人に独立起業を勧める本。
 ぼっち、陰キャ、人見知り、コミュ症(この本では、著者の言葉の時はコミュ障ではなくコミュ症と表記しています)でいい、電話も受けなくていい、テキストライティングで対応すればいい、仕事の8割は蒲団の中で済ませているというのですが、他方で軌道に乗るまで不眠不休(210~213ページ)、オーダースーツを着用する(237~241ページ)ことも求めています。誰でもできる、ではなくて、向いていないと、集中力がないとダメということです。それはそれでそういうものだと思いますが。
 ①電話をかけてきたり、電話を求めてくる人、②説明済みの内容について何度も質問してくる人、③威圧的な人、自分のルールを押しつけてくる人はお客にしない(288ページ)って。できるものならそうしてみたいですが…
 風邪はひかないと決めればひかない(205~252ページ)というのも…私は年をとってから毎冬のように咳が続き止まらなくなりそれが長引く(年をとると回復がとても遅くなる)ようになって、確かにそれがコロナ禍以降はマスクや手洗いの励行からかずっと治まっていたのですが、この冬また出てきて今往生しています。自分が気をつけても、今はコロナ禍の頃はいなかったマスクをせずに人前で咳やくしゃみをする人がわんさかいますので、避けきれません。まだまだ修行が足りないのでしょうけれど。


杉本幸雄 フォレスト出版 2024年9月24日発行

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なぜ、あなたの料理はちょっとマズイのか?

2024-12-29 23:34:07 | 実用書・ビジネス書
 卵焼き、おにぎり、味噌汁、野菜炒め、鶏もも肉のソテー、豚しゃぶサラダ、チャーハン、肉じゃが、鯖の味噌煮など定番の料理を題材に、ひと手間をかける意味、手順(順番)を守る意味を説明した本。
 サラダの味付け(その前に野菜の洗い・水揚げ・水切りという話はちょっと置いて…)は、油を入れて手で混ぜる、塩を振って手で混ぜる、酢をかけて手で混ぜる(34~35ページ)って。油・塩・酢を攪拌して(要するにフレンチドレッシングにして)かけて混ぜるじゃないんだ…手で揉み込むことでドレッシングが馴染むのは感じるのですが、手がベトベトになり洗うのが面倒と近年は菜箸でまぜていました。
 フライパンを1分熱するのが「基本中の基本」(74ページ)、野菜炒めはフライパンにゴマ油を入れて中火で1分~1分半(95ページ、93ページ)、チャーハンではフライパンにゴマ油を入れて中火で2分熱する(123ページ)というのですが、今どきのガスコンロはフライパンを中火で空焼きしてたらそこに至る前に勝手に弱火になってしまうと思います。料理が苦手な人向けの本ですし、そのあたりの対処の仕方も触れておいて欲しかったなと思いました。


小田真規子 講談社 2024年10月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黄色い家

2024-12-28 23:21:41 | 小説
 1990年代後半の東京で行き場のない女4人がともに暮らしていた封印していた記憶をコロナ禍のときに振り返り、辛く忘れたい過去だったのか真実は違ったのかを思い惑う小説。
 語り手の伊藤花が、自分がただ仲のよい相手とともに暮らしたいと思って始めた共同生活なのに、いつの間にか自分ばかりが犠牲になっているという思いを募らせる流れが、切なく思えます。その思いも、花が、何も考えていない、楽していると見ている相手方からは別のように見え、それを指摘されて花がたじろぎつつさらに対立が深まるのも、端から見ているとやはり悲しい。世に好きで結婚した相手との離婚がつきないことからして、人間関係の宿命かも知れませんが。
 責任感が強いというか、周りの人が負った負債や生活能力の喪失を自分が解決しないといけないという気持ちになってしまう(もちろんなぜ自分がという被害者意識も持っているのですが)花が、真っ先に犯罪に手を染めてしまうという展開が、問題提起なのでしょうけれども哀しいところです。
 できごとについての報道、世間の目が、当事者ないし近しい人から見た「真実」と違うことが1つのテーマとなっている作品です。それが読売新聞に連載されていたというのも興味深いところです。


川上未映子 中央公論新社 2023年2月25日発行
2024年本屋大賞第6位
読売新聞連載
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミーナの行進

2024-12-27 23:07:41 | 小説
 岡山で母と暮らしていた朋子が中学生となる1972年に芦屋に住む裕福な伯母夫婦に預けられ、1つ年下の従妹ミーナやコビトカバのポチ子らと過ごした1年をまばゆく懐かしい想い出として語る小説。
 それまでの人生と隔絶した裕福な暮らしを夢のような楽しい日々として思い返す、ノスタルジー小説の王道を行く作品で、暗さや辛さとは無縁なものですから、読後感は軽く清々しい。
 朋子と同学年となり、1972年を関西で過ごした私には、触れられるできごとや世相も懐かしく、物語世界に入りやすかったという点からも基本的には読みやすいものでした。
 TIMEが「2024年の必読書100冊」に選んだ(日本人作家の作品としてはこの1冊だけだとか)という記事を見て、読んでみたのですが、そういった明るい青春ノスタルジー小説ということが評価されたのでしょうね。「ラジウム飲料」が体にいいということに何の疑問も呈されず、ミュンヘンオリンピックでのイスラエル選手団殺害事件について、もちろん選手たちが被害者であることはそのとおりですが、「イスラエルは迫害を生き延びたユダヤ人が作った国」としてイスラエルが100%正しいみたいなことを無邪気に言えるセンスがアメリカ人に評判がいいのかなと勘ぐってみたりもしますが。


小川洋子 中公文庫 2009年6月25日発行(単行本は2006年4月)
読売新聞連載
谷崎潤一郎賞受賞作
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マテリアル・ガールズ フェミニズムにとって現実はなぜ重要か

2024-12-25 15:07:30 | 人文・社会科学系
 トランス活動家の主張や運動を敵視し攻撃的な批判をしている本。
 トランス活動家が、医学的移行(性別適合手術やホルモン剤投与等)等なしにジェンダーアイデンティティのみでジェンダー女性(体は男性、心は女性)を女性と扱うべきとすることに対し、現実レベルでは主として更衣室、シェルター等の女性専用スペースへのジェンダー女性の侵入と女性アスリート扱いをすることの不当性を挙げて、哲学的・論理的な面からの批判を延々と展開しています。専用スペースやスポーツ選手の区分などの問題についてはそれぞれの問題に応じた対処・ルールを検討して解決すればいい、犯罪者は犯罪者として処遇すればいいと私は考えます。著者のようにそれを理由に、すべての基準を生物学的性別に戻すのではなく。
 著者は繰り返し自分はトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪者)ではない、トランスの人々が自由に生きられることを望んでいると述べていますが、トランスの人々が生きやすくするよう活動している活動家に対して激しい非難を続けることでトランスの人々の解放を妨げることになるでしょうし、多くの青少年が医学的移行を選択して取り返しのつかないことになりかねないという危惧を示しながら、トランス女性が女性スペースを利用したいなら医学的移行をしろと言わんばかりの論調がトランス女性の幸福を願っているという言葉に沿うのか疑問です。著者がトランスフォビアではないということは受け入れるとして、著者の主張は、トランスの人々の存在は認めるが、静かにしていろ、団結して権利を拡張するなどけしからんということに見えます。
 著者の姿勢は、俗耳に入りやすい刺激的な例を論ってマイノリティを苦しめるもので、私には、不正受給例を採り上げて生活保護受給を厳しく制限すべきだと主張している人々と似ていると思えました。そして、著者は、そのように多数派のマイノリティに対するネガティブな感情に依拠しそれを利用してマイノリティを制約する主張をしておいて、自分が批判されると自分は迫害されているなどと被害者意識を丸出しにしています。そういう主張をするのは自由だと思いますが、率直に言って、見苦しい。
 細かいことですが、273ページに「女性カメラマン」、274ページに「カメラマン」という表記があります。これは原書ではどのように表記されているのでしょうか(さすがに原書を取り寄せて確認しようとまで思いませんが)。フェミニストを自認する(著者が批判している人たちに用いている「称している」という言葉は使いませんが)著者が “ female cameraman "とか" cameraman "と表記しているのでしょうか。" photographer "でも" videographer "でも" camera operator "でもなく。言葉の使用にいろいろ神経を使っているように述べている著者が、男性・女性を通じた職業を " man "で代表し、その上で「女性」をつけているとすれば驚きです。そして、もし原書では" cameraman "ではなく中性的な用語だったものを、訳者あとがきで訳語に神経を使ったことを強調している(336~337ページ)肩書きに「専門は憲法、ジェンダー法学」と記している訳者が「カメラマン」と訳したとすればまた驚きです。著者、訳者ともに力んでいる本ですが、こういうことが出てくるように丁寧な気遣いには欠けるというか、フェミニズムの感覚に日頃から馴染んでいるわけではない人の本だと感じてしまいました。


原題:Material Girls : Why Reality Matters for Feminism
キャスリン・ストック 訳:中里見博
慶應義塾大学出版会 2024年9月20日発行(原書は2021年)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダーウィン 「進化論の父」の大いなる遺産

2024-12-21 18:02:23 | 自然科学・工学系
 ダーウィンがビーグル号の航海後、進化論、性淘汰の考察を深める一方で、フジツボ時代、ハト時代を経て、ランの研究、ミミズの研究などさまざまな分野で新たな発見をしていく様子を紹介した本。
 ダーウィンが生物学者というよりは博物学者であり、組織に縛られず(そもそも組織に属せず)興味の赴くままに学問研究を進めていった様子、その人となりがよくわかります。その旺盛な好奇心と、組織の背景なくさまざまなものにアクセスし研究・実験を重ね実現していった実行力に驚嘆します。
 ダーウィンの研究成果を紹介している本ですが、業績や知識よりもその人間力に魅せられました。


鈴木紀之 中公新書 2024年7月25日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリエイターのためのトラブル回避ガイド

2024-12-18 23:36:05 | 実用書・ビジネス書
 広告作成に当たっての広告会社、制作会社、クリエイター(業務受託者:フリーランス)の関係、その中でクリエイターが身を守るために気をつけるべきことについて解説した本。
 著作権等の問題について、制作過程のさまざまな面に触れられていて、問題点をイメージしやすくなっています。トラブル回避ガイドというタイトルに合わせて、法律でギリギリ詰めたらどうなるというところではなく、リスクの意識の方に重点が置かれている感じです。
 著者でない「企画・編集協力」という記載の人が「編集後記」を書いて、そこで謝辞が述べられていて、著者のあとがきやご挨拶の類いはありません。この体裁だと、果たして著作者は誰なのか、「著者」のクレジットがある以上関係者間では合意があるのでしょうけれども、著作権をメインテーマの1つとする本でこういう疑問を感じさせるのはちょっとどうよと思いました。


志村潔著、近藤美智子、雪丸真吾監修 パイインターナショナル 2024年10月5日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカ合衆国連邦最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯

2024-12-17 23:09:13 | ノンフィクション
 1993年にクリントン大統領に女性として史上2人目のアメリカ合衆国連邦最高裁判事に任命され2020年に病死するまでその職にあり、弁護士時代から性差別撤廃のために闘い続けたルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)の2015年までの半生を紹介した本。
 2010年代前半、保守派が多数を占めた最高裁でリベラル派の最古参となって反対意見を書かざるを得なくなったギンズバーグがフェミニストや若者のアイコンとして人気を博していったことを背景に書かれた本なので、RBGのさまざまな面を読みやすく紹介することに力点が置かれています。
 弁護士の目からは、最高裁でのRBGの活動などは、「RBGの反対意見まとめ」(226~232ページ)みたいなキャッチコピーやワンフレーズ斬りではなく、より事案・背景とRBGの意見の狙いや工夫もちゃんと紹介して欲しかったなと思います。この本が繰り返し、RBGが冷静に実務的に緻密に論を重ねていったこと、少しずつの着実な勝利を目指していたことを述べていることからしても、その着実さ緻密さがより読み込み実感できる方が説得力があったと思います。まぁ、そうすると業界外の人に読みにくくなるのでしょうけど。


原題:NOTORIOUS RBG : The Life and Times of Ruth Bader Ginsburg
イリーン・カーモン、シャナ・クニズニク 訳:柴田さとみ
光文社 2024年9月30日発行(原書は2015年)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

検証 政治とカネ

2024-12-09 21:24:31 | ノンフィクション
 政治資金規正法違反や自民党の裏金問題の告発を続けて来た政治資金オンブズマン代表で憲法学者の著者が、政治資金規正法のしくみと問題点、政治家の資金集めと報告書記載を逃れる手口、報告書の入手やチェック方法と政治資金規正法違反の見つけ方などを解説した本。
 細川内閣の下での「政治改革」では、企業献金禁止を目指すことをいってその代わりに税金から数百億円もの政党助成金を交付することとし、小選挙区制を導入したのですが、政党への企業献金は禁止されず企業が政治家のパーティー券を買うことも禁止されず実質は企業献金がフリーパスのままである上に政党は多額の政党助成金を得られてまさに盗人に追銭だし、小選挙区制と多額の政党助成金が政党を通して議員(建前は「政党支部」)に配られることで自民党の総裁への権力集中が進んだと説明されています。まったくそのとおりだと思います。不祥事がある度に再発防止対策と称して実質的に規制が緩められて行く火事場の焼け太りは、原発でも繰り返されてきました。懲りない面々への監視と追及はとても重要で、続けている人には頭が下がります。


上脇博之 岩波新書 2024年7月19日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リスボンのブック・スパイ

2024-12-08 21:22:54 | 小説
 第2次世界大戦の最中、ニューヨーク公共図書館のマイクロフィルム部で働く27歳のマリア・アルヴェスが、後輩の男性が新たに組織された外国刊行物取得のための部局間委員会(IDC)に採用されて海外派遣されることを知り、自分も派遣されたいと積極的に売り込んでリスボンで敵国側の発行物を収集してマイクロフィルム化して送る任務に就きつつ、さらに有益な情報を求めて踏み込んでいくうち、リスボンで書店を営みつつナチスドイツ占領下の国々から逃亡してきたユダヤ人たちをポルトガルの秘密警察の目を避けて匿いアメリカに旅立たせるための活動を続ける28歳のティアゴ・ソアレスに惹かれて行くという小説。
 マリアの強い意志と度胸、ティアゴの覚悟と信念に心を揺さぶられる作品です。この物語が感動的なのは、やはり迫害されるユダヤ人を助けるために献身的に活動するティアゴと周りの人々がいて、そこにマリアも引き寄せられて行く展開にあると思います。それを訳者あとがきで「マリアは強い愛国心と正義感を胸に」(439ページ)とまとめられてしまうと、ちょっと違和感を持ちます。マリアの動機心情はややもすれば軽くあるいは観念的情動的に見えますが、弱者を迫害する権力者・独裁者への敵対心・反発に、言い換えれば迫害される者を救いたいというところにこそ焦点が置かれ、それは「愛国」というのとは別のものではないかと思うのです。
 実在の人物・事件を元にしたフィクションということですが、そういう人々の活動に希望と敬意を感じ、読み味のよい作品でした。


原題:THE BOOK SPY
アラン・フラド 訳:髙山祥子
東京創元社 2024年9月27日発行(原書は2023年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする