72歳のポーランド人ピアニストのヴィトルト・ヴァルチキェーヴィチが、バルセロナのコンサート・サークルに招聘された際に世話役として応対した50歳間近の既婚者のベアトリスに惹かれ、その後バルセロナ近くの音楽学院で仕事をしてベアトリスに誘いを続け、ダンテを引用するなどしながら言い寄り続けるなどする恋愛小説。
老いらくの恋にのめり込む男の姿を、自分が言い寄られることへの快感に自己陶酔しつつも覚めた目であしらう女の側から描いた小説の体で展開し、男が思いを遂げるのか果たさずに潰えるかを最後まで引っ張るかと思いきや、後半は男をではなく女の自己陶酔を描くことの方に収斂し、全体としてはそちらがテーマの作品となっている感じです。
2003年のノーベル文学賞受賞者の最新作ですが、難解なところはなく(ダンテの引用とか、あれこれ考えていけばきっといろいろあるのでしょうけれども)、読みやすい一方で、それほどの感動・感慨もありませんでした。
ヴィトルトからベアトリスへの通信でメールとは別に度々「手紙」が出てくるのですが、本当にそれは手紙と訳していいのか(削除したとか書かれてるし)、終盤で突然「めっちゃピューリタンふうに?」(184ページ)とかいう言葉が出てきたのが唐突感があるなど、ちょっと翻訳にも疑問を感じてしまいました。
原題:THE POLE
J.M.クッツェー 訳:くぼたのぞみ
白水社 2023年6月10日発行(原書のスペイン語版は2022年、英語版等は2023年)
老いらくの恋にのめり込む男の姿を、自分が言い寄られることへの快感に自己陶酔しつつも覚めた目であしらう女の側から描いた小説の体で展開し、男が思いを遂げるのか果たさずに潰えるかを最後まで引っ張るかと思いきや、後半は男をではなく女の自己陶酔を描くことの方に収斂し、全体としてはそちらがテーマの作品となっている感じです。
2003年のノーベル文学賞受賞者の最新作ですが、難解なところはなく(ダンテの引用とか、あれこれ考えていけばきっといろいろあるのでしょうけれども)、読みやすい一方で、それほどの感動・感慨もありませんでした。
ヴィトルトからベアトリスへの通信でメールとは別に度々「手紙」が出てくるのですが、本当にそれは手紙と訳していいのか(削除したとか書かれてるし)、終盤で突然「めっちゃピューリタンふうに?」(184ページ)とかいう言葉が出てきたのが唐突感があるなど、ちょっと翻訳にも疑問を感じてしまいました。
原題:THE POLE
J.M.クッツェー 訳:くぼたのぞみ
白水社 2023年6月10日発行(原書のスペイン語版は2022年、英語版等は2023年)
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