伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

インデックス

2016-02-05 19:47:31 | 小説
 姫川玲子シリーズの短編集。
 第1編の「アンダーカヴァー」は長編第3作の「インビジブルレイン」で警視庁本部捜査1課の姫川班が解体された後、長編第4作の「ブルーマーダー」の前、第2編の「女の敵」は長編第1作「ストロベリーナイト」で殉職した大塚の思い出で姫川班の初期、第3編「彼女のいたカフェ」は警察官になる前、と時期が転々とし、第4編「インデックス」から第8編「闇の色」までは連作になり、長編第4作「ブルーマーダー」後、姫川玲子が捜査1課に返り咲き心が通わない新たな部下たちとの関係に苦慮しつつ捜査に当たるという構成です。目次(Contents)はタイトルの英語表記のアルファベット順でまったく脈絡なく、作品の掲載順序は単純に初出の順(書いた順)のようです。第4編から第8編は話がつながっていますからこれをこの順序で並べるのは当然として、第1編から第3編の位置づけはよくわからない。時系列なら第3編、第2編、第1編の順だと思いますし、何にせよ、第1編は落ちのレベルが低すぎる。これを最初に持ってくるのは、読者の意欲を失わせると思うのですが。
 姫川玲子シリーズのファンには、第3編のキュートなイメージ(「ブルーマーダー」で強調されている姫川の暗い過去のキャラ設定とそぐわない感はありますが)と、いまだに長編作品が出ない「ブルーマーダー」後の姫川の活躍が読めるのが魅力でしょう。


誉田哲也 光文社 2014年11月20日発行
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企業法務のための労働組合法25講

2016-02-01 20:27:20 | 実用書・ビジネス書
 企業が労働組合にどう対応するかをテーマとして、労働組合法と不当労働行為、労働委員会等での手続について、使用者側から解説した本。
 冒頭の野川教授の推薦文がすごい。労働事件の判決文を読むのが苦にならない読者には、判決や労働委員会命令の事案から採りだした説例に基づく解説は実務的(現実的)で、法律書にありがちな抽象的で荒唐無稽な説例(業界では「学校説例」などと言われる)はなく、裁判例の紹介も多めで、読みやすく、わかりやすい。ただ業界外の読者には、説例が詳しすぎ複雑に見えて取っつきにくいかも知れません。弁護士の立場からは、「といわれている」という記述が、その根拠(誰が言っているのか、法令なのか、判例なのか、行政解釈・通達なのか…)が示されずになされているところが少なからずあり、その部分にもやもや感を残します。業界外の人、この本の主たる想定読者の企業の法務・労務担当者には、実務の結論がわかりさえすればその根拠まではいらないということでいいのだろうと思いますが。
 この本の立場は、企業外の地域合同労組(解雇されるなどした労働者が紛争になってから加入して団交要求に至るケースが多い)に対しては妥協せずに闘い(ただし、拙速な団交拒否は避ける)、企業内労働組合はうまくてなづけることができれば就業規則の変更では無効とされかねない労働条件(賃金等)の切り下げも組合の同意を得て労働協約にすれば有効(反対する組合員にも問答無用で適用できるし、就業規則でも同じ変更をすれば組合員以外にも適用でき、多数派労働組合の同意があれば就業規則の不利益変更も有効とされやすい)になるので上手につきあおうというのが基本線です。
 地域合同労組とは、企業側の弁護士は対決する場面が多くあり、現実に企業側の弁護士の奮闘の結果、街宣禁止の仮処分や企業側からの損害賠償請求などで地域合同労組側の敗訴事例が積み上げられてきていますが、労働側の弁護士はむしろ(提携関係にある少数の弁護士を除けば)つきあう機会が多くなく、今ひとつ当事者意識を持てないでいます。しかし、改めてこういう形で論じられると、使用者側にこういうふうに言わせておいていいのかという発憤材料になりました。


五三智仁、町田悠生子 商事法務 2015年12月25日発行
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