なあむ

やどかり和尚の考えたこと

墓洗う

2013年08月16日 18時26分00秒 | ふと、考えた

7月の末、「あいの沢の草取り」という企画で福島県飯舘村を訪ねました。

ご縁は2005年に始まった日本再発見塾というプログラムです。

第1回の開催地は岩手県葛巻町、第3回が飯舘村で、第4回が山形県最上町でした。

最上町では私の寺も会場となり、30数名が泊まって坐禅などを体験しました。

この塾の発起人代表になっているのが俳人の黛まどかさんです。

黛さんは飯舘村の菅野村長に請われて、2001年に募集が始まった「愛の句」の選者になりました。毎年選ばれた50句は、あいの沢に句碑として建てられています。

今回の企画は、黛さんの他、ゲストとして投句したスポーツライターの増田明美さん、漫画家わたせせいぞうさん、歌舞伎俳優の坂東三津五郎さんが呼びかけ人となって実現しました。

句碑に刻まれた俳句を詠んだ方や再発見塾の関係者ら、全国から50人余りが集まりました。

草取りには、「お盆を迎える前に少しでも帰礼にして、気持ちよく故郷に帰っていただきたい」という思いが込められています。

わずかな時間で故郷飯舘村がきれいになるわけではありません。

しかし、この頃露出が少なくなってきた村の話題をつくって、全国の皆さんに忘れないようにしてもらいたいという意図は無駄ではないと思います。

1本の草でも、むしった分だけきれいになります。参加者の心も1本分きれいになったかもしれません。

お盆を故郷で迎えたい。それは日本人共通の思いではないでしょうか。

親戚が集まり、懐かしい想い出を語る。胸にツンとくる郷愁は、人々を優しくさせる浄化装置なのだと思います。

あいの沢でこんな句を見つけました。

「いくたびも 背きし父の 墓洗う」

胸にズキンときました。私の句だと思いました。

若いころは敵だとしか思えなかった父。まともに言葉を交わそうともしなかった私。

どんなに寂しい思いをしていたことだろう。失ってようやく気付くことがあります。

わびながら墓洗うお盆です。

お盆、帰省、墓参り。

1年の大事な行事として当たり前に行ってきた習慣さえもできない方々がいます。

その苦痛と寂しさを想像しながら手を合わせます。

(8月15日 河北新報、木曜随筆「微風旋風」拙稿)