とりあえず本日読んだ部分からの引用を2個所。引用は要約やポイントというところではなく、気になった個所ということである。
「現在の日本も無宗教の時代と言われるが、(柳田の妖怪、お化け研究の中心テーマは)1910年代という時期は、日本が明治以来の大きな変革の中でだんだん精神的なものを見失いつつある、そういう時代にさしかかっていた。その時点で、日本の宗教が勢力を失いつつある、そういうことを指摘して、改正させるために、天狗の研究を行い、幽冥教のデータを発掘しなければならないという主張である。」(第二章「妖怪と幽霊」 第一節「妖怪と幽霊」)
「私たちが日常生活の中で何気なく過ごしていても、何だかよく分からないけれども、突然日常的なものではない、異質なものに遭遇したり、体験したりする。それは無意識の慣習といわれたりする。それを柳田は、フォークロアの口で伝えられるている伝承として記憶に止めている。『遠野物語』はは柳田の手で「物語」となった。全国各地で明治二十~三十年代の、近代化が農村部に浸透していく時期に起こっている曖昧とした不安な精神状態がその規定にある。『遠野物語』の階段のような不思議な話にそうした精神状況が反映しているとみていくと、不思議を語りたがる私たちの心の奥に隠れた何ものかに出会うことができ、それを突き詰めていくと霊魂観やあの世に対する日本文化の根っこの部分に触れることが可能になる。」(同上)