本日は日本の広い範囲で猛暑日らしい。気象庁も「命の危険も高まるので水分や塩分の補給をこまめにし、外出時はもちろん室内でも十分注意してほしい」と呼びかけているとのこと。
日射病という言葉はすっかり死語になった感がある。今ではすっかり熱中症という言葉が定着している。
★瓦葺く熱中症の身の重き 三宮芳明
★霍乱の一とき雲を負ふ目あり 和田暖泡
熱中症は危険、危ないと思ったらすぐに日陰に避難して休まなければならないが、それを許さない職場やスポーツの世界がまだまだ蔓延している。このような句を見るたびに、職人仕事の厳しさへの敬意も持つものの、日本の社会の怖さを実感する。
「霍乱」は漢方の用語で、日射病のことを指したようだ。今では日射病とは言わず、熱中症という。熱中症では眩暈が症状の一つとしてある。私も水分を取り損ねながら炎天下を30分以上歩いて、急に冷房の強く効いたスーパーに入った途端に眩暈が起きて、商品の収めてある棚にしがみついたことがある。30秒ほども続いた眩暈には生きた心地もしなかった。棚が頑丈で助かった。商品にしがみついたり、棚が倒れていたらおおごとであった。
あの時の目を他人が見たらきっと両目が左右に動いているのに気がついたと思う。外ならばそこに青空に浮かんだ白い雲が映っていたかもしれない。
実際に映っていなくとも、そのうつろな目は空を見上げていたはずである。その目は、何かを追う目だったのだろう。突然にすべての目的や楽しみが遮断され、意識を失いかける。しかし目は、まだ遮断される前の意識の延長を願っている。そんな情景だと思う。