昨晩は、仲秋の名月が残念ながらちょっとしか見ることが出来なかった。
★名月や神泉苑の魚踊る 与謝蕪村
前書きに、雨のいのりのむかしをおもひて、とある。
神泉苑は、弘法大師が神泉苑にて雨乞いの祈祷をしたという故事がある。月光は仏性のあまねく行き届くさまをさすたとえとして語られる。その清浄な光がもっとも美しいしいう名月の光に、池でいきおいよく泳ぐ、ないし、水面から飛び上がるような魚を配している。生臭いものの象徴なような魚であるから、月光とは正反対の俗の代表であろう。
その俗の象徴のような魚に名月の光が当たり、柔らかい反射光が目に飛び込んでくる。そんな情景を思い浮かべることが出来る。浄化などというしたり顔では語りたくない。月の光の一瞬の反射を想像した句として、私は好きである。これは幻想の世界である。想像によってもたらされる一瞬の美でないと成り立たない句である。