Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「台風」という季語

2022年09月16日 22時02分23秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 あくまでも素人の独善的鑑賞である。

★なま白き月地をいづる颱風あと       野澤節子
★台風あと別な白さの萩咲ける        細見綾子
★台風の眼が澄んでゐる死の商人       佐藤鬼房
★孤り昏れ野の光も昏れ颱風の樹       赤尾兜子
★目が並ぶ颱風の夜の軍用車         加藤秋邨

 第1句、台風一過、大気が澄んで月もことのほか明るく照る。騒がしく、おどろおどろしい恐怖すら味わったかもしれない台風に耐えていたのか。気分が安らぐとともに月が「なま白く」く見えるのだという。黄色の月ではなく、「なま白い月」というのはどんな感じなのであろうか。
 第2句、こちらは萩の花がいつもとは違う「白」に見えたのだという。湿気の多い空気から秋の乾いた空気と太陽光のもとでの萩の白。きっとくすんだ白から輝く白への変化なのだろうと想像してみた。
 第3句、ちょっと難しい。台風の眼が澄んでいる、眼が澄んでいる死の商人、どちらと解釈するのだろうか。眼の澄んでいるような一見悪いことなど考えたこともなさそうでも、戦に関わる商売に関わることもある。衛星画像で台風を見ると勢力の強い間は眼がくっきりとしている。しかしその眼は邪悪な猛威をもたらす。
 第4句、気象災害時、人は孤独になるものである。自然に向き合う時は人はいつも孤独である。だから怖さが勝るのである。颱風の「樹」は作者の孤影に思える。
 第5句、戦前の句集「颱風眼」所収。夜の列車から軍用車両が並行して走るのを見たのであろう。折から颱風下。戦前の軍靴が人々を圧して押し寄せてくる怖さを感じる。

 



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