メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

愛のはじまるとき K・M・ペイトン/著 晶文社

2025-01-20 14:15:31 | 
1984年初版 石井清子/訳

ヤング・アダルト向けだからか、性の描写がわりと生々しく描かれている
当時は今より浮気が教会のルールで厳しく縛られているからこそ
余計に気持ちが高揚する火に油状態

そして急に予知能力を持つ少年が現れてSF要素も加わる

アイドルのように人気だった騎手が実在の人物と知って驚いた



【内容抜粋メモ】

登場人物
フィリップ・キーン 父
セシリー 母
ローラ 13歳
アルバート 執事
ハリー 叔父
ジャーベース 従兄 セシリーの兄の息子
フレッド・アーチャー 競馬の騎手
ドウソン 競馬馬の調教師
タイガー
ヒルダ・ベル ローラの家庭教師
バーティ・ラッシュ 調教師
ロッティ 妻
チャーリー 長男 15歳 アダ、ハービー、アグネス


競馬で有名なニューマーケット・ヒースに暮らす13歳の少女ローラは
人気騎手フレッド・アーチャーに心酔していて、大人になったら結婚すると信じている
元騎手で現調教師の叔父ハリーの家にしょっちゅう出入りしているのを両親はよく思わない

フレッドは調教師ドウソン氏の元に奉公に入り
12歳で初優勝、19歳でダービーを初制覇し
5年間チャンピオンの座を守っている

見知らぬ少年が厩舎で寝ていたのを父フィリップが見つけて
妻セシリーに食事をさせ、風呂に入れるよう指示する

ローラは強い興味を持ち、名前も言わないのでタイガーと呼ぶ
父はタイガーが寝言で何度もチャリーバートと言っていたと話す

ローラはハリーに話すと、ファルモウス卿の子馬の名前と分かる
タイガーはチャリーバートに賭けるようローラにうながす

セシリーは完璧な女主人を演じているが、本当に愛し合っているのは義弟ハリー
2人の関係を執事アルバートや女中、ハリーの世話をするマーサも知っている

フィリップがロンドンに出かける日、ハリーはセシリーをレースに誘う
タイガーの予想通り、チャリーバートに乗ったフレッドが勝つ

セシリーはハリーを夕食に招き、朝まで過ごす
ハリーは庭でタイガーに見られて、弱みを握られたと思う

タイガーはハリーの元で働きたいとローラを通して頼む
ハリーは秘密をバラさない条件だと思って、厩舎を任せるが
対等の立場になるため、タイガーの素性を調べる
タイガーは寝言を言うから1人で寝たいと願い出る



セシリーはローラに家庭教師をつけるために面接するが決められない
執事アルバートが知人の娘ヒルダ・ベルを推したため彼女に決める

ハリーはタイガーの身辺を調べ、彼が夢で予知できる能力があると知る
その能力のせいで父と兄に虐待され、監禁されていた

周りに秘密にする代わりに勝ち馬を教え、儲けたお金は銀行に積み立てると約束する
ローラにもタイガーの能力について周りに言わないよう約束させる

ベルもフレッドの大ファンで、ローラと噂話に興奮する
ローラがタイガーにしつこく聞いたため、フレッドが大けがをすると話す

フレッドは予知通り、馬に襲われて大けがを負い
治療中に体重が増えて、4日間で6.3キロもムリな減量をしてレースに臨む

ハリーはセシリー、ローラ、タイガーもレースに連れて行き
セシリーと2人になるためにタイガーにローラの世話を任せる

フレッドはまさかの逆転で優勝し、タイガーの予知が必ず当たると分かる
群衆の中にタイガーの父と兄がいて、2人でレストランに逃げ隠れる
タイガー:もし逃げられなくても、君を愛しているよ
タイガーは家族に捕まってしまう



いとこのジャーベースは、シミスターという学友を連れて来る
消極的でネガティブ、自信がなく、得意なことのないジャーベースと真逆のタイプ

フィリップをおだてて、昔、兄弟で登山をしていた話から
みんなでコルシカに山登りに行くことになる

セシリーの親はボヘミアンで、若い頃は奔放な生活を楽しんでいたが
親を憎み、ローラには同じ苦しみを味わわせたくないと思う心情を吐露すると
ハリーはローラとタイガーが厩舎でキスしていたのを見たし、恋愛は自然なことだと諭す

ハリー:
どうにもならないことに反撥してもはじまらない
われわれにできることをする それを楽しみ、感謝すればいい


フィリップはローラを社交デビューさせるために
ロンドンの祖父母の元に送る計画を立てているが
ローラは生まれ育った土地を離れる気はない

フレッドがネリー・ドウソンにプロポーズしたと噂が広まり、ショックを受けるローラとベル
フレッドは花嫁のために新しい家を建て、ファルモウス・ハウスと呼ばれるようになる

ハリーはタイガーのいるサーカス一家が近くで興行しているのを知り、ローラを誘う
綱渡りをする肝っ玉ディアボロの1人がタイガーだと見抜くローラ
ネットの命綱もなくワイヤーの上でとんぼ返りをする姿が美しくて感動する

ハリーは馬車で待ってると告げ、タイガーはショーの衣装のまま逃げて来る
ローラにタイガーがサーカスにいたことを秘密にするよう約束させる
タイガー:まだフレッドを愛しているんですか?



フレッドの結婚式の日、ファンが町にあふれる
タイガーとローラも見に行くが、タイガーがなにか恐ろしい予知を見て発作を起こす
ローラはフレッドの身に何が起きるのか聞きたいが、ハリーが止める



タイガーはローラを散歩に連れ出し、ローラはタイガーにとんぼ返りをして見せてもらう
木に登って話していると、ハリーとセシリーが来て
木の下で愛し合うのを見てショックを受ける

いつも冷静な母はずっと仮面をかぶっていたと知り、ベルに心の内を打ち明ける
ベルは驚き、母の弱みを知られてしまう



コルシカに行く前、ハリーは怪我を負って行けなくなる
登山基地で一泊し、ローラとジャーベースを残して、みな登山に向かう

あまりの暑さに耐えられず、ローラは服を脱いで川で泳いでいると、ジャーベースも一緒に泳ぐ
2人の距離は急に縮まり、嵐が来て、一行は帰らず
小屋を見つけて、シチューを食べる

ジャーベース:君はもう知ってもいい年ごろだよ

ジャーベースは学校でもいじめられ、親からは外務省に入るよう期待され
嫌いなことを懸命にやらなきゃいけない辛さを吐き出して、声をあげて泣く

彼は愛されたことがないと知り同情するローラ
ジャーベース:幸せは今だ こんなに幸福だったことは今まで一度もなかった

2人は何度も愛し合うが、登山の案内人パスカルに見つかりホテルに戻る
父が捻挫し、ベルは甲斐甲斐しく世話をしている

母が病気だと電報が来て、一行が家に帰ると、脳膜炎で亡くなっていた(!
ハリーはショックで参り、タイガーが仕事を仕切る



葬儀後、ローラは母の席についてアルバートらに指示を出すが
今後、父の面倒をみるつもりはなく、ベルはハウスキーパーとして残り
ゆくゆくは父と再婚するつもりだと分かる

アルバートはフレッドの家に近いラッシュ夫人がお手伝いを探していると伝え
ローラは早速家を出て、ラッシュの住み込みになる

ラッシュ家はみな率直で、よく笑い、フレッド夫婦とも近しいため
子どもを連れて時々遊びに行くようになる

フレッドは結婚しても減量のために家族と食事をせず
家にいる時は風呂ばかり入り、それ以外は海外のレースで忙しい

シーズンが終わると元の63キロに戻るが
春になると無茶な減量でげっそり痩せる
こうした無理な減量で大勢の騎手が亡くなっている

タイガー:僕が親から自由になったら結婚してほしい

ハリーはタイガーがフレッドの結婚式で発作が起きた晩
「セント・マイリンに乗るな」と寝言を言ったとローラに話す

ネリーは男児を生んだがすぐ亡くなる
その後、再び妊娠し、フレッドの姉コールマン夫人が世話に来る
ネリーは出産後、けいれんを起こしてそのまま亡くなる

タイガーが見たのはこの悲劇かと問い詰めると、否定する
タイガー:それが終わったら、僕を愛してほしいんだ

タイガーはフィリップにローラと結婚したいと話し
これまでの貯金がフィリップの財産を超えているし
反対する理由もないので許可する父
タイガーは新婚生活を送る新居を建てている



フレッドは減量のためにライト博士が特別に調合した酒だけを飲んでいる
「アーチャーの混合酒」として知られていた

ローラもレースを見に行くが、フレッドは穴馬に負ける
ハリー:ほんの少しの体重オーバーのせいだよ

ネリーの3回忌の日、フレッドは銃で自死する
店もホテルも閉められ、町中が喪に服した
タイガーが見た予知はこれだった

タイガーは20歳になり、子どもにだけ与えられる予知能力がなくなったことを
父に話し、ひどく殴られた後、自由の身になる

ハリー:
これからは、すべて先が楽しみなんだ
済んだことを考えるヒマはないよ 忘れるだろうさ

タイガーとローラはフレッドの墓をお参りする
ローラ:これがフレッドがお墓の中で初めて聞いた蹄の音なんだわ



訳者あとがき

フレッド・アーチャー
1857年イギリス生まれ 12歳で初優勝してから29歳で自死するまで
数えきれないほどのレースに出場し優勝した


キャスリーン・ペイトン
1929年イギリス生まれ
15歳で最初の本を出版
1950年 クラスメイトの画学生マイケル・ペイトンと結婚






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