■『自分でできるカウンセリング 女性のためのメンタル・トレーニング』(創元社)
川喜田好恵/著
その1はこちら→here
その2はこちら→here
<part15 不安から抜け出すには?>
認知とは?
私たちは「見たもの」に反応するのでなく、「見たと思った」ものに反応している。
「感じる」のは感覚そのものではなく、外界の刺激を取り入れる「認知の過程」を通して受けとったものに対して。
「聞いたこと」に応えているのでなく、「自分の価値観を通して理解したこと」に応えている。
歪んだ環境・価値観・社会通念などで偏った認知は修正(再学習)ができ、異なる結果を得ることができる。
思考・感情・行動・生理は、関連して1つのシステムをつくっているので、一部で生じた変化は、ほかの変化につながる。
認知行動療法
1960年、アメリカで発展した心理療法。
女性は調整役や人に気に入られることを優先する姿勢が求められ、でなければ社会から排斥される暗黙の圧力もある。
女性は不安感や自責の気持ちを持ちやすく、自己否定に陥りやすい。
→もっと公平・合理的・現実的・肯定的なものに変えること。
同じ出来事が起きても、人によって受けとり方・感情がまったく違うことに注目。
悩みを生むのは、出来事そのものではなく、自分の無理な考え・偏った価値観で認識するから。
●論理情動療法
無意識に持った非合理的な考え方に気づき、論理的に論駁(相手の論や説の誤りを論じて攻撃すること)して変え、
結果的に「悩み」を解消する。
●自動思考・体系的な思考の誤り
うつや不安症状の引き金になる。
●セルフ・ステイトメント(自分への語りかけ)
否定的な自問自答を肯定的に変えることで、ストレスフルな場面でも対処できることを明らかにした。
これらは、うつや不安、パニック障害、摂食障害、肥満、アルコール・薬物依存等に活用されている。
●女性の抑うつ
抑うつの中心にある一番の問題は「認知の障害」であり、「感情の障害」は二次的なもの。
もともとの「抑うつへの脆弱性(ひ弱さ)」+ネガティブな自動思考、体系的な思考の誤りがある
自動思考
日常生活の中で無意識に心の中でつぶやいている言葉や文章。
例:「自分は何をしてもダメな人間だ」
体系的な思考の誤り
人を落ち込ませる極端な考え方。
拡大解釈・過小評価
過去のマイナス経験等を拡大解釈し、「どうせ何をしても自分はダメだ」と決めつける。
過度の一般化
わずかな事実や経験から広範囲なことを推論する。
完全主義的・二分法的思考
ものごとに完全かゼロしかないという極端な考えで結論を出す。
恣意的推論
データもないのにネガティブな結論ばかりを出す。
選択的注目
自分の先入観で、些細なことやネガティブなことばかりを重視する。
個人化
自分に関係ないことまでネガティブに自分に関係づける。
とくに女性は、性役割社会での立場、社会経験の少なさなどから、広く、客観的な思考を訓練する機会が限られてしまう上、
虐待や性被害などのネガティブな体験も多い。
女性と「うつ」を考える際、「女性の特性」という偏見に陥らないで済む。
パニックを引き起こさないために
1.危険が起こる確率を過大に見積もる
2.恐怖の対象に常に注意を向け
3.以前の不安体験を選択的に思い起こす
傾向がある。
・パニックとなる刺激は自分の内部と外部の場合がある。
・不安の身体感覚を「我慢できない」「大変だ!」と認知すると、恐怖に対する「二次的恐怖」が生じる。
・それをコントロールできないと感じ「パニック発作」となる。
→その不安を「自分でコントロール可能なものとして認知」できればよい。
自分の体を自覚的に認識し、統合された自分として感じる感覚そのものが希薄な女性が多い。
女性に対するジェンダーを考える上で、自分・社会に対する「コントロール感」の問題は避けられない。
学習性無力感
犬の実験によって、いくら行動してもそれが結果と結びつかない経験が続くと、
「どうせ何をやっても無駄だ」と無気力に陥ることが分かった。
抑うつになる人とならない人の違い
「コントロール不能なのはなぜだろう?」と原因を考えるプロセスにある。
2つの考え方
A.コントロールできなかったのは「自分のせい」で、これからもずっと続くにちがいない。
B.コントロールできないのは「状況のせいで仕方ない」、それは「たまたま起きた」もので、状況は変わるかもしれない。
自分に問題があると責めることなく、時間の経過を待つ。
自分の「刷り込み」を消し去り、別の認知の枠組みを改めて学ぶことが必要。
強迫的思考
ある考えが頭から離れない。気づくと、いつもそう考えてしまっている。
認知の枠組み
1.その思いが自分でコントロールできるか考える(コントロール可能性
2.その思いが自我親和的なものとして受け入れられるか(受容可能性
3.その思いを忘れられるか(忘却可能性
強迫的枠組み
1.自己責任に関するもの。例:「こんなことを考えるなんて、実行したのと同じだ」
2.自己非難に関するもの。例:「こんなことを考えるなんて、自分は悪い人間だ」
3.自己コントロールに関するもの。例:「自分の考えをコントロールできないなんて、ダメな人間だ」
「そんなことないよ」と言っただけでは、なかなか変わらないどころか、逆に
「いろいろ言ってもらってるのに、変われない自分はほんとうにダメだ」とさらに落ち込む。
→認知の再構成が必要。
<part16 リフレイミング>
リフレイミングとは?
「再枠組み」「再意味づけ」という意味。
問題の原因は自分のせいじゃないと気づいたり、問題をどう認識するかが変わり、行動の変化が起こりやすくなる。
自分の考え方を自分で転換できれば、自分を自由にできる。
【ケース1】不幸な母と、長年その保護者役を引き受けてきた「良い子」である娘
冷たく無関心、手のかかる夫や家族の関係に疲れ果て、娘を慰め役・話の聞き役として頼り、コントロールしている(まったくその通り
母の嘆き・非難に応えられずに自分を責める「自動思考」、自罰的、抑うつ的な気分になる。
「自分を責めなくてもいい」となぐさめても、再び否定されたように感じてさらに落ち込む。
母の期待に応えるようプログラムされ、その通りに動いている時は罪悪感は出てこない。
→「この罪悪感は、自立への道かもしれない」「苦痛ではあるが望ましい罪悪感だ」と発想の転換を試みる。
【ケース2】家事をしない夫
「掃除ぐらい手伝ってよ!」→「掃除は誰がする?」と主語を変えて言う。
【ケース3】問題のラベルを替える
登校拒否→不登校→登校渋りなど、リラベリング(ラベルの張り替え)で、問題の意味や影響を変える視点ができる。
【ケース4】問題の枠組みを変える
PTSDなどの症状も「こんな被害に遭ったのだから苦しむのは当然。そんな被害を生み出す異常な社会では正常な反応だ」
心に取り込んだ社会の問題を客観視でき、自責・自罰を防ぐ。
<part17 女性を縛るダブルバインド(二重拘束)の破り方>
ダブルバインド(二重拘束)
相反する命令、二律背反的な状況に陥って、身動きが取れない状態。
女性は感情的・ヒステリック⇔動じないと女らしくない、理屈っぽいと、どちらを選んでも責められる。
疑問を持つ、問題提起をするのも許されない。
【ケース1】嫌われるのを怖れて、友だちの中で自分らしく振る舞えない
「女性は自分らしく振る舞うと嫌われる」というジェンダー社会の問題。
「気にしなくても大丈夫」と言っても、本人の認識・状況は何も変わらない。
逆説的に言い換えることで、どちらに動いても、何らかのメリットが生じる
「実害の少ない場面で嫌われることをしてみたら? 練習になるし、次善の策を考える材料になると思うよ」
→自分で課題を達成する、心配が払拭される経験になる。
「人」と「症状」の関係が逆になり、「人」が「症状」をコントロールできる。
「回避行動」も意図的に取るよう指示されれば、自分を責めなくて済み、問題解決に向かう。
<part18 自分らしさを大切にするために>
他人の考え方や行動に惑わされない
同じ出来事でも、価値観によって、悩みになる人と、そうならない人がいる。
この論理療法は、相手の言動を客観的に理解するのにも役に立つ。
ダブルスタンダード(二重規範)
「その問いは、誰にでも問われるの?」「逆の問いは問われるの?」と考える。
例:「あなたは結婚したら、仕事を辞めますか?」という面接での質問を女性だけにしたら差別になる。
問い自体に問題があるのだから答える必要はないと考えてもよい。
「そんなの、どっちでもいいじゃん」は、議論を打ち切って現状を守るために使われる。
例:「子どもの日曜参観なんてどっちが行っても同じだろ」「じゃあ、あなたが行ってね」と言ってみると、相手の隠された本音が分かる。
「自分は完全じゃない」「世の中は理不尽だという諦め」を理解し、克服するのに必要。
<part19 男社会の支配のテクニックへの対処法>
生物学的な差異は、現代の社会生活を送る上ではほとんど関係ない程度。
1.理論で勝つ
「男は仕事優先」という考えが、女性を家事&仕事の二重負担に追いやって社会参画を妨げたり、男を過労死に追いやったり、熟年離婚に至らせたりする。
この正攻法は、「女らしさを放棄している」という攻撃を受けることは予測できる。
2.実力で勝つ
「実力で勝つ」ことは「女を捨てる」ことではない。
淡々と仕事をして、実績を挙げ、実力で相手を超えればいい。
人の間違った理屈や価値観をいちいち修正してエネルギーを使う必要はない。
3.無視して相手にしない
もっとも楽な方法。「私は私」と聞き流す。
4.同じジョークで切り返す。知的に勝つ
5.相手の差別的な態度を利用する
食事をごちそうになる、力のいる仕事をやってもらって、ほかの仕事を片付ける。
続くとある意味、危険な方法。
6.肩書き・レッテルを外して見る
ノンバーバル(言葉で表現されない部分)が、人の本質を表現している。
7.女性嫌悪を女性恐怖と気づいて余裕をもつ
「怒らせたら怖い」など、暴力的になる大きな理由は、恐怖・怯え。
最後まで追い詰めず、逃げ道を用意しておくのも賢い方法。
人は、弱点を突かれると感情的になり、怒鳴ったり、威嚇してくる。今後の危険予防のためにどの言葉が刺激したか知っておく。
8.冷静に矛盾を分析して対応を決める
例:「子育てに専念したいとは思わないの?」などの男性側の質問に、同じ質問を返してみる。
9.別の価値観、人生、領域を考える
上記を試しても差別を繰り返す職場より、いきいきと働ける職場を探す。
<part20 支配と特別扱い>
1.保護と支配は紙一重。保護されている=相手との関係が対等ではない。
例:レディファースト、女性割引(賃金が男性と同じなら半額にしてもらう必要はない
2.強者は弱者なしに存在できない
支配する側は、支配される存在を必要としている。
どうして支配が起こるのか、構造に気づいておくと、傷ついたりせずに、問題整理ができる。
3.「知っていること」と「伝わっている」ことは違う
自分で分かっていても、伝えなければ相手は無視することができる。
4.自己表現・主張の方法を身につける
自分の思いを人に伝えるのは、けっこうエネルギーの要る作業。
「言いたいことは言ったけど、自分の望む結果にならなかった・・・」ということもある
相手に伝わりやすい方法や工夫を考える。
5.自立・自律していないと、自分を大切にできない
経済的な自立は精神的自立・社会的自立と密接に関係している。
夫に経済的に依存している妻は、関係が悪くなったら、お金の使い方や生活の細部に自分の意思を大切にすることが許されなくなったり、
関係が終わることで生活が困窮することもある。
「妻の収入が夫の4/1では、夫婦の支配関係は変わらないが、2/1以上を超えると、大きく関係が変わる」という調査結果がある。
<あとがき抜粋メモ>
水平の暴力
抑圧されている人間同士の間の心理的な暴力。例:「女の敵は女」、妬み、陰口など
被支配者が分断、対立していれば、支配者にははむかいにくい。分割統治・分断統治。
自分を大切にできていないと、意図せずに人を傷つけることがある。
他者からの何気ない言葉に傷ついたり、必要以上に自己防衛的になったり、
「あなたのためにしている」と言って、相手を利用したり、
自分の弱さや嫌な部分を相手の中に見て攻撃しているケースも珍しくない。
自分で自分を枠にはめていると、同じ枠で相手を見てしまう。
例:「私は女だから我慢しているのに・・・」→「女のくせに・・・」
逆に、相手の中に見るプラスの力を自分に当てはめて、「あの女性にできるなら、わたしにもできる可能性がある」とする。
自分なりの力があると信じると、人を羨む、妬む、恐れがなくなる。
「気にする」と「気づく」はまったく違う
人の評価や目を気にする:自分中心に考えてしまう弱さからくる。
人の気持ちや周囲のニーズに気づく:自分を離れて、ありのままの相手を見れる強さがある。
今、女性が再確認しようとしているのは、自分の中から湧き出て、自分を支え、
コントロールする力、自分のために使う力。
1970年代の「フェミニズム」は心理学にも浸透し、カウンセリングにも反映されてきた。
親が自分の人生を、自分のために誠実に生きることが、子どもが自由に生きることを可能にする。
(そう、それも母に言い続けたけど、結局理解してもらえず、逆に責められたんだよな。。
川喜田好恵/著
その1はこちら→here
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<part15 不安から抜け出すには?>
認知とは?
私たちは「見たもの」に反応するのでなく、「見たと思った」ものに反応している。
「感じる」のは感覚そのものではなく、外界の刺激を取り入れる「認知の過程」を通して受けとったものに対して。
「聞いたこと」に応えているのでなく、「自分の価値観を通して理解したこと」に応えている。
歪んだ環境・価値観・社会通念などで偏った認知は修正(再学習)ができ、異なる結果を得ることができる。
思考・感情・行動・生理は、関連して1つのシステムをつくっているので、一部で生じた変化は、ほかの変化につながる。
認知行動療法
1960年、アメリカで発展した心理療法。
女性は調整役や人に気に入られることを優先する姿勢が求められ、でなければ社会から排斥される暗黙の圧力もある。
女性は不安感や自責の気持ちを持ちやすく、自己否定に陥りやすい。
→もっと公平・合理的・現実的・肯定的なものに変えること。
同じ出来事が起きても、人によって受けとり方・感情がまったく違うことに注目。
悩みを生むのは、出来事そのものではなく、自分の無理な考え・偏った価値観で認識するから。
●論理情動療法
無意識に持った非合理的な考え方に気づき、論理的に論駁(相手の論や説の誤りを論じて攻撃すること)して変え、
結果的に「悩み」を解消する。
●自動思考・体系的な思考の誤り
うつや不安症状の引き金になる。
●セルフ・ステイトメント(自分への語りかけ)
否定的な自問自答を肯定的に変えることで、ストレスフルな場面でも対処できることを明らかにした。
これらは、うつや不安、パニック障害、摂食障害、肥満、アルコール・薬物依存等に活用されている。
●女性の抑うつ
抑うつの中心にある一番の問題は「認知の障害」であり、「感情の障害」は二次的なもの。
もともとの「抑うつへの脆弱性(ひ弱さ)」+ネガティブな自動思考、体系的な思考の誤りがある
自動思考
日常生活の中で無意識に心の中でつぶやいている言葉や文章。
例:「自分は何をしてもダメな人間だ」
体系的な思考の誤り
人を落ち込ませる極端な考え方。
拡大解釈・過小評価
過去のマイナス経験等を拡大解釈し、「どうせ何をしても自分はダメだ」と決めつける。
過度の一般化
わずかな事実や経験から広範囲なことを推論する。
完全主義的・二分法的思考
ものごとに完全かゼロしかないという極端な考えで結論を出す。
恣意的推論
データもないのにネガティブな結論ばかりを出す。
選択的注目
自分の先入観で、些細なことやネガティブなことばかりを重視する。
個人化
自分に関係ないことまでネガティブに自分に関係づける。
とくに女性は、性役割社会での立場、社会経験の少なさなどから、広く、客観的な思考を訓練する機会が限られてしまう上、
虐待や性被害などのネガティブな体験も多い。
女性と「うつ」を考える際、「女性の特性」という偏見に陥らないで済む。
パニックを引き起こさないために
1.危険が起こる確率を過大に見積もる
2.恐怖の対象に常に注意を向け
3.以前の不安体験を選択的に思い起こす
傾向がある。
・パニックとなる刺激は自分の内部と外部の場合がある。
・不安の身体感覚を「我慢できない」「大変だ!」と認知すると、恐怖に対する「二次的恐怖」が生じる。
・それをコントロールできないと感じ「パニック発作」となる。
→その不安を「自分でコントロール可能なものとして認知」できればよい。
自分の体を自覚的に認識し、統合された自分として感じる感覚そのものが希薄な女性が多い。
女性に対するジェンダーを考える上で、自分・社会に対する「コントロール感」の問題は避けられない。
学習性無力感
犬の実験によって、いくら行動してもそれが結果と結びつかない経験が続くと、
「どうせ何をやっても無駄だ」と無気力に陥ることが分かった。
抑うつになる人とならない人の違い
「コントロール不能なのはなぜだろう?」と原因を考えるプロセスにある。
2つの考え方
A.コントロールできなかったのは「自分のせい」で、これからもずっと続くにちがいない。
B.コントロールできないのは「状況のせいで仕方ない」、それは「たまたま起きた」もので、状況は変わるかもしれない。
自分に問題があると責めることなく、時間の経過を待つ。
自分の「刷り込み」を消し去り、別の認知の枠組みを改めて学ぶことが必要。
強迫的思考
ある考えが頭から離れない。気づくと、いつもそう考えてしまっている。
認知の枠組み
1.その思いが自分でコントロールできるか考える(コントロール可能性
2.その思いが自我親和的なものとして受け入れられるか(受容可能性
3.その思いを忘れられるか(忘却可能性
強迫的枠組み
1.自己責任に関するもの。例:「こんなことを考えるなんて、実行したのと同じだ」
2.自己非難に関するもの。例:「こんなことを考えるなんて、自分は悪い人間だ」
3.自己コントロールに関するもの。例:「自分の考えをコントロールできないなんて、ダメな人間だ」
「そんなことないよ」と言っただけでは、なかなか変わらないどころか、逆に
「いろいろ言ってもらってるのに、変われない自分はほんとうにダメだ」とさらに落ち込む。
→認知の再構成が必要。
<part16 リフレイミング>
リフレイミングとは?
「再枠組み」「再意味づけ」という意味。
問題の原因は自分のせいじゃないと気づいたり、問題をどう認識するかが変わり、行動の変化が起こりやすくなる。
自分の考え方を自分で転換できれば、自分を自由にできる。
【ケース1】不幸な母と、長年その保護者役を引き受けてきた「良い子」である娘
冷たく無関心、手のかかる夫や家族の関係に疲れ果て、娘を慰め役・話の聞き役として頼り、コントロールしている(まったくその通り
母の嘆き・非難に応えられずに自分を責める「自動思考」、自罰的、抑うつ的な気分になる。
「自分を責めなくてもいい」となぐさめても、再び否定されたように感じてさらに落ち込む。
母の期待に応えるようプログラムされ、その通りに動いている時は罪悪感は出てこない。
→「この罪悪感は、自立への道かもしれない」「苦痛ではあるが望ましい罪悪感だ」と発想の転換を試みる。
【ケース2】家事をしない夫
「掃除ぐらい手伝ってよ!」→「掃除は誰がする?」と主語を変えて言う。
【ケース3】問題のラベルを替える
登校拒否→不登校→登校渋りなど、リラベリング(ラベルの張り替え)で、問題の意味や影響を変える視点ができる。
【ケース4】問題の枠組みを変える
PTSDなどの症状も「こんな被害に遭ったのだから苦しむのは当然。そんな被害を生み出す異常な社会では正常な反応だ」
心に取り込んだ社会の問題を客観視でき、自責・自罰を防ぐ。
<part17 女性を縛るダブルバインド(二重拘束)の破り方>
ダブルバインド(二重拘束)
相反する命令、二律背反的な状況に陥って、身動きが取れない状態。
女性は感情的・ヒステリック⇔動じないと女らしくない、理屈っぽいと、どちらを選んでも責められる。
疑問を持つ、問題提起をするのも許されない。
【ケース1】嫌われるのを怖れて、友だちの中で自分らしく振る舞えない
「女性は自分らしく振る舞うと嫌われる」というジェンダー社会の問題。
「気にしなくても大丈夫」と言っても、本人の認識・状況は何も変わらない。
逆説的に言い換えることで、どちらに動いても、何らかのメリットが生じる
「実害の少ない場面で嫌われることをしてみたら? 練習になるし、次善の策を考える材料になると思うよ」
→自分で課題を達成する、心配が払拭される経験になる。
「人」と「症状」の関係が逆になり、「人」が「症状」をコントロールできる。
「回避行動」も意図的に取るよう指示されれば、自分を責めなくて済み、問題解決に向かう。
<part18 自分らしさを大切にするために>
他人の考え方や行動に惑わされない
同じ出来事でも、価値観によって、悩みになる人と、そうならない人がいる。
この論理療法は、相手の言動を客観的に理解するのにも役に立つ。
ダブルスタンダード(二重規範)
「その問いは、誰にでも問われるの?」「逆の問いは問われるの?」と考える。
例:「あなたは結婚したら、仕事を辞めますか?」という面接での質問を女性だけにしたら差別になる。
問い自体に問題があるのだから答える必要はないと考えてもよい。
「そんなの、どっちでもいいじゃん」は、議論を打ち切って現状を守るために使われる。
例:「子どもの日曜参観なんてどっちが行っても同じだろ」「じゃあ、あなたが行ってね」と言ってみると、相手の隠された本音が分かる。
「自分は完全じゃない」「世の中は理不尽だという諦め」を理解し、克服するのに必要。
<part19 男社会の支配のテクニックへの対処法>
生物学的な差異は、現代の社会生活を送る上ではほとんど関係ない程度。
1.理論で勝つ
「男は仕事優先」という考えが、女性を家事&仕事の二重負担に追いやって社会参画を妨げたり、男を過労死に追いやったり、熟年離婚に至らせたりする。
この正攻法は、「女らしさを放棄している」という攻撃を受けることは予測できる。
2.実力で勝つ
「実力で勝つ」ことは「女を捨てる」ことではない。
淡々と仕事をして、実績を挙げ、実力で相手を超えればいい。
人の間違った理屈や価値観をいちいち修正してエネルギーを使う必要はない。
3.無視して相手にしない
もっとも楽な方法。「私は私」と聞き流す。
4.同じジョークで切り返す。知的に勝つ
5.相手の差別的な態度を利用する
食事をごちそうになる、力のいる仕事をやってもらって、ほかの仕事を片付ける。
続くとある意味、危険な方法。
6.肩書き・レッテルを外して見る
ノンバーバル(言葉で表現されない部分)が、人の本質を表現している。
7.女性嫌悪を女性恐怖と気づいて余裕をもつ
「怒らせたら怖い」など、暴力的になる大きな理由は、恐怖・怯え。
最後まで追い詰めず、逃げ道を用意しておくのも賢い方法。
人は、弱点を突かれると感情的になり、怒鳴ったり、威嚇してくる。今後の危険予防のためにどの言葉が刺激したか知っておく。
8.冷静に矛盾を分析して対応を決める
例:「子育てに専念したいとは思わないの?」などの男性側の質問に、同じ質問を返してみる。
9.別の価値観、人生、領域を考える
上記を試しても差別を繰り返す職場より、いきいきと働ける職場を探す。
<part20 支配と特別扱い>
1.保護と支配は紙一重。保護されている=相手との関係が対等ではない。
例:レディファースト、女性割引(賃金が男性と同じなら半額にしてもらう必要はない
2.強者は弱者なしに存在できない
支配する側は、支配される存在を必要としている。
どうして支配が起こるのか、構造に気づいておくと、傷ついたりせずに、問題整理ができる。
3.「知っていること」と「伝わっている」ことは違う
自分で分かっていても、伝えなければ相手は無視することができる。
4.自己表現・主張の方法を身につける
自分の思いを人に伝えるのは、けっこうエネルギーの要る作業。
「言いたいことは言ったけど、自分の望む結果にならなかった・・・」ということもある
相手に伝わりやすい方法や工夫を考える。
5.自立・自律していないと、自分を大切にできない
経済的な自立は精神的自立・社会的自立と密接に関係している。
夫に経済的に依存している妻は、関係が悪くなったら、お金の使い方や生活の細部に自分の意思を大切にすることが許されなくなったり、
関係が終わることで生活が困窮することもある。
「妻の収入が夫の4/1では、夫婦の支配関係は変わらないが、2/1以上を超えると、大きく関係が変わる」という調査結果がある。
<あとがき抜粋メモ>
水平の暴力
抑圧されている人間同士の間の心理的な暴力。例:「女の敵は女」、妬み、陰口など
被支配者が分断、対立していれば、支配者にははむかいにくい。分割統治・分断統治。
自分を大切にできていないと、意図せずに人を傷つけることがある。
他者からの何気ない言葉に傷ついたり、必要以上に自己防衛的になったり、
「あなたのためにしている」と言って、相手を利用したり、
自分の弱さや嫌な部分を相手の中に見て攻撃しているケースも珍しくない。
自分で自分を枠にはめていると、同じ枠で相手を見てしまう。
例:「私は女だから我慢しているのに・・・」→「女のくせに・・・」
逆に、相手の中に見るプラスの力を自分に当てはめて、「あの女性にできるなら、わたしにもできる可能性がある」とする。
自分なりの力があると信じると、人を羨む、妬む、恐れがなくなる。
「気にする」と「気づく」はまったく違う
人の評価や目を気にする:自分中心に考えてしまう弱さからくる。
人の気持ちや周囲のニーズに気づく:自分を離れて、ありのままの相手を見れる強さがある。
今、女性が再確認しようとしているのは、自分の中から湧き出て、自分を支え、
コントロールする力、自分のために使う力。
1970年代の「フェミニズム」は心理学にも浸透し、カウンセリングにも反映されてきた。
親が自分の人生を、自分のために誠実に生きることが、子どもが自由に生きることを可能にする。
(そう、それも母に言い続けたけど、結局理解してもらえず、逆に責められたんだよな。。