1976年初版 高杉一郎/訳 アントニー・メイトランド/画
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ガーフィールド作品はどれももれなく期待をはるかに越えてくる面白さ
本作も夢中で一気読みした
軍隊の中で鼓手というのが、まるでアイドルのような存在なのがフシギ
物語の最初から付き纏う赤い軍服の霊
いろんな伏線が回収されてゆくのも見事
美しいソフィアは周囲のエネルギーを吸って生きるバンパイアみたい
【内容抜粋メモ】
登場人物
チャーリー・サムソン 少年鼓手
フィンチ伍長
パーソンズ
ムッシュー フランス人
エドワーズ ウェールズ人
ジェイムズ・ディグビー
ロレンス将軍
将軍令嬢ソフィア
召使いチャリティ
フィッツウォレン少佐
アイザック・ガリヴァー 密輸業者
マドックス
●1
山腹に花が咲いたように、赤い軍服を着た兵士たちが登っていく
誇らし気に進軍マーチを打ち鳴らす少年鼓手のチャーリー・サムソン
突然、森から伏兵にあい、ばたばたと倒れていく連隊
気づけば、チャーリーだけが生き残っていた
チャーリーは退却のマーチを叩きながら山をおりる
一番末の息子をまるで構わない家族を困らせるために
故郷リンドハーストの家を出た時のことを思い出す
第23歩兵部隊のフィンチ伍長が仲間と一緒に現れる
彼らは戦いを避けて隠れ、死体から金目のモノを盗んでいる
フィンチ伍長:
おれたちは勝ったのか?
チャーリーは目の前の死体が握っている手紙を見つける
ジェイムズ・ディグビーが愛するソフィアに宛てた遺書だった
軍医ミスター・ショーは母国で売るために戦死者から歯を取っている
(入れ歯を死者から取った歯で作るって発想が凄い/驚
ショーはディグビーが戦闘が始まってすぐに倒れたため死んでいないと教える
戦争に負けたと分かり、7人の生き残りは海に向けて出発する
●2
ディグビーはソフィアにふさわしいと証明するために出征した
ショーはなんとか将軍令嬢に紹介してもらって出世したいがためにディグビーにつきまとう
ひどい嵐に遭い、納屋で雨宿りしていると、突然崩れて、エドワーズは腕がもげ
ディグビーは頭を砕いて死ぬ
ショーが素早くエドワーズを治療するのを見て、その天才的な技に感心するチャーリー
●3
ショーはチャーリーがディグビーの手紙を届けると期待してつきまとい、少年鼓手が好きになる
ディグビー:勇敢に戦って死んだとソフィアに伝えてほしい
チャーリー:そんなのはウソっぱちだ!
食べ物を盗みながら、敗残兵はようやく海岸に着く
小屋の中で漁師が酒を飲んでいる
●4
フィンチ伍長は船を盗む間、チャーリーに太鼓を叩かせる
老給仕はクモのように手足を伸ばして踊りはじめる
客の1人が喋り、イギリス人だと分かる
フィンチ伍長:
なにもかもはぎとられて、残っているのはこの命と祖国への愛だけなんですよ
イギリスへ連れて帰ってくだせえ
アイザック・ガリヴァーは密輸業者で、1人3ポンドで船に乗せる
●5
これまで亡霊が追いかけていると思っていたのは、22歩兵連隊のマドックスだと名乗る
船の上でもショーはフィンチ伍長にフランス兵から取った歯で入れ歯を作ることをすすめる
マドックスはみんなとつかず離れずにいたが、いきなり海から飛び降りる
チャーリーも反射的に海に入り、マドックスを助けたため、英雄となる
●6
ガリヴァーはフィンチ伍長らを密輸品の倉庫番として雇うが
チャーリーは手紙を渡すためロンドンへ行き、ショーもついていく
マドックス:たのむ ブルートン通りへは行かないでくれ!
●7
ロンドンにマドックス通りがあると分かり、奇妙な偶然に驚くチャーリーとショー
ロレンス将軍の屋敷に着くと忌中の旗がたっている
●8
ロレンス将軍の娘婿フィッツウォレン少佐が妻子を残して戦死した
ロレンス将軍は1万人もの兵を死なせた責任で軍法会議にかけられようとしている
ロレンス将軍:
お前たちも私を責めに来たのか?
あれは全部私の指揮のせいだと思うかね?
前線にいた公爵は前進したがっていた
私は森に何もないことを確かめるためにフィッツウォレン少佐を派遣したが
あれが部隊の後ろに隠れたのをハッキリと見た
命令を下すところを誰も見た者がいないために責められているのだ
すべて娘ソフィアのためだ
あの娘の命は私の首にかかっている
深紅のガウンをはおり、驚くほど美しいソフィアが現れる
ソフィア:あの人は戦死したのね 私は知りたい
●9
屋敷中にたちこめる変に甘酸っぱいにおいはソフィアの部屋から漂ってくる
チャーリー:ディグビーは書いていました 全身全霊をこめて愛していると
チャーリーが戦死した兵の話をすると、退却のマーチを聞きたいと頼むソフィア
ソフィアが
「私と一緒に来てくださる?」と言った気がするチャーリー
ショーはロレンス将軍の入れ歯を作る約束をして
40ポンドをだまし取り、出世の道がようやく開けたことに興奮する
チャーリーはソフィアに恋していると気づく
●10
ショーは店に寄って、ロレンス将軍用の入れ歯づくりを依頼する
外で待っていたチャーリーのそばで老兵が物乞いをしている
老兵:おれも昔は美少年で、鼓手を務めたことがあったんだ
ショーが天才的な技でソフィアの病も治してくれるのではないかという望みを抱くチャーリー
ショー:
あれは長生きするたちじゃないな
ちらっと見ただけだから知らんが
チャーリー:僕は彼女を心底愛しているんだ!
ショー:愛はこの世でたった1つ我々に残されたものなんだよ
●11
ディグビーの霊はソフィアを助けずに、自分の所へよこしてくれと頼む
チャーリーの太鼓の音で召使いチャリティが屋敷から出てくる
チャリティ:
大人であるということは、軍隊で行軍するだけじゃない
ソフィアさんはあなたには向かない
人々はロレンス将軍が軍事法廷に出る代わりに自死するのではないかと期待して屋敷に集まる
●12
白く染めた象牙にはめたロレンス将軍の入れ歯が出来上がり
ショーは供人に1シリング銀貨を持たせて屋敷に入る
ソフィアに呼ばれた気がしてチャーリーも入る
どんどんやつれていくチャーリーと反して、ソフィアは元気づく
ソフィア:
私たちって幻みたいなものね
愛と若さと美貌のつかの間の姿が私たちなのよ
ロレンス将軍は入れ歯をいれて20歳も若返ったようす
再び周りから責められて、取り乱しているところにチャーリーが証言する
チャーリー:僕も聞きました
大臣は念のために肖像画の中から少佐の顔を指すよううながす
チャーリーは一度も少佐を見たことがないが
マドックスの肖像画を見て、この人だとつぶやく
●13
ショー:この男はまだ生きてますぜ
チャーリー:言ってはいけない!
チャーリーはマドックスに知らせるために屋敷を飛び出す
一銭も持ってないため、太鼓を叩いて金をもらって、馬車に乗り込む
ロレンス将軍は馬車を2台用意し、歩兵1個分隊を動員する
ソフィアも連れて行ってくれと頼み、チャリティと一緒に乗る
自分の名誉を守るためにロレンス将軍が娘婿を殺そうとしていて
その共犯者になったことに気づくショー
●14
チャーリーが太鼓を鳴らすとフィンチ伍長らが木の影から出てくる
チャーリー:マドックスに言わなきゃ 追ってが来るんだ
ジプシーの老女に水をくんできたマドックスに追ってが来たと知らせるチャーリーとショー
チャリティ:ソフィアさんが死にそうです!
●15
宿で休んでいたソフィアは体調が急変して高熱を出す
ロレンス将軍も駆けつけるが、部屋を見渡して、自分を映す鏡を探すことは忘れなかった
ソフィア:ちょっと休めばまたよくなると思うの だからみんな出かけないで・・・
ショー:
お嬢さんは病気でもなんでもない
ここには良心を捨てた堕落の悪臭がプンプンしている
娘が父親に与えたのは虚栄、父親が娘に与えたのはいつまでも続く死んだような生活だったんだ
この娘は死にそうなふりをしているが、ただ生きているふりをしているだけだ
チャーリー:神を愛する心があるなら出ていってくれ!
ショー:
愛の神のと言うのは、この世の苦しみをすっかり見てからにしろ
私は神がいるのを信じている
同時に悪魔がいることも信じている
許してくれよチャーリー
俺は俺なりにお前を愛していた
お前が人生と希望の本当の象徴のように思えたんだ
チャーリーはショーの天分を信じていて
急にロレンス将軍とソフィアが自分の邪魔をしているように思えて
ショーの後を追って宿屋を出る
●16
マドックスと間違われて撃たれた副官が馬車に乗り、ソフィアはにっこり微笑み
この世にこんなに美しい人がいたかと目を奪われる
一行が去った後、チャーリーは太鼓を取りに戻ると
チャリティが召使いを辞めて縫物をしている
フィンチ伍長:
わが軍はつまり勝ったのかね?
戦争はみんな内戦になるんだ
勇敢に敵をやっつけたと思ったら、それは兄弟だったというわけだ
ショーはリングウッドから馬車に乗って去る
チャーリーは太鼓を鳴らして皮が破れてしまい
泣いていると、ディグビーの霊も泣いて、星々となって消える
マドックスはあらゆる通りの名前に変えながら
貧乏人や病人のために身を粉にして働き
少なくとも1万人の命を救おうと決めていた
チャリティ:
結局みんな亡霊でしょ
あなたは孫たちにとんでもないほら話をする
おばあさんになったチャリティは皮のなくなった太鼓を野菜入れに使ってるの
2人はサムソンの宿屋に着いた
少年鼓手は戦場から帰還した
深いチャリティ(愛情)を胸に抱いて