1994年初版 1996年 第5刷
※「マンガ感想メモリスト1」カテゴリー内に追加します
■時じくの香の木の実
時じくの香の木の実は今の橘のこと
大王は多遅摩毛理(たじまもり)に永遠の命をもたらす木の実を探させた
長い年月をかけて持ち帰った時には大王は亡く
多遅摩毛理は悲しみで泣き叫んで死んだ
亡き正妻の子・日向と脇腹の子・日影は
一族が見ている前で木の実を食べて
永遠に生きる者を決めるテストを受ける
日向は巫女(ふじょ)になる代わりに聴覚を失い、未来が視えるようになる
姉の日影も生きていることに驚くが
歳をとっていると分かり勝利の気持ちになる
好きな長兄が災いをもたらす女と反対を押し切って結婚後
お告げ通りに不幸になり、離婚
次の妻は国家権力を握る未来が視えたため、結婚を許さざるを得なかった
長兄と日影の関係を見て、止めようとして
自分の体が透けていることに気づく
日向は果実を食べた時に死に、この世にとどまる存在となり
そのお告げを伝える巫女は日影のほう
だが、常処女であるはずが資格を失い、日影は追い出される
長兄と日影の子は両性具有
その子が8歳になり、果実を食べる日を待つ
その時こそ真の巫(シャーマン)が誕生する
■キルケー
オデュッセウスらはアイアイエー島に来て、美しいキルケーに会う
山に来た若者たちは、最後のバスに乗れずに戸惑う
町まで40キロの道を歩くが、堂々巡りしているのに気づく
突如現れた洋館から、妖艶な美女が出て来る(着物に蜘蛛の巣が・・・
明日朝一番のバスに乗ればいいと、館で一泊することをすすめる
夕食で出されたスープで眠り、1人1人女主人に襲われていくが
1人だけ飲まなかった奈津子だけが残る
奈津子に館から出るように訴えるように、動物が寄ってきて
仲間に似ている気がする
女主人に動物の姿にされそうになり
必死で逃げて、バスの運転手に救われるが
ショックのあまり白髪になり、精神が崩壊する
■鬼来迎(きらいごう)
敏子は都会の多忙な仕事についていけず
さびれた漁村に住むお花やお茶を教える先生の家に住みこみで働く職を得る
夫は亡く、時枝というお手伝いがいる
離れに息子・修一が暮らしていて異常な様子
片腕がなく、「鬼が出る」と怖れて奇声を発するが
このぐらいのことは我慢しようと留まる敏子
主人は夜釣りに出て、波にさらわれた息子を助けようとして溺れたと知る
庭には動かすと鬼が来るという言い伝えのある石があり
地震で動いた時、修一の部屋に鬼が出る
それは優しい先生
「修一が死ねば、夫が死ぬことはなかった あれが死ねばよかったんだ!」
とんでもない大津波が襲い、村は壊滅
敏子は奇跡的に助かる
再び会社勤めをはじめ、怒鳴る上司も妙に優しい人よりマシだと思う
自分が村で見たことも、すべて津波の恐怖が見せた悪夢だと納得させる
■笛吹き童子
●第1話 石笛
祖父が亡くなり、倉の中に高額の絵などが入っているため
祖母から倉の鍵をもらおうと慌てる親族たち
祖母は認知症で親戚の顔も覚えていないが
孫娘・美沙のもとに来て、倉の中の宝箱を開けるように言う
中には古い石笛があり、吹いてみると
棺から亡き祖父が起き出して、家が地割れの中に沈む
石笛を吹くと地獄の釜のフタが開くという話
●第2話 笛吹き童子
代々、雅楽頭(うたのかみ)を司る秦氏の総領・直行は
音の良し悪しが分かり、修理は出来るが
どの楽器を習わせても絶望的に下手で両親から匙を投げられる
家を出て、観音堂を建てる仕事に就くが、音楽のことを忘れられない
毎夜、笛を吹く音が聞こえるが姿が見えない“切り口ケ原”の噂を聞いて行くと
楽の音の精霊、笛吹き童子の姿を見る
吹いていた横笛が壊れていたため、その修理が自分のつとめと思い
観音堂の完成とともにようやく出来上がり
試しに吹こうにも自信がなく吹けない
そこに童子が現れ、口づけをすると
尋常ではない笛の音を奏でるようになる
それを聞いた大臣さまが調べさせる
童子は観音さまに仕える伎芸天で
直行は元は笛の名手として生まれたが
才能に増長して大成しない運命を変えてくれたと明かす
■海底(おぞこ)より
アイドル歌手でスターだった翼マミは
目が見えなくなって引退し、マネージャーをしていた姉は結婚するため
登(みのる)の実家に世話になる
近所に耳なし芳一が平家の亡霊に出会った七盛塚があると知り行くと
芳一が歌う平曲を聞く
雨の中で泣いている子どもは、平清盛の妻とともに海に身を投げる
♪波の下にも都のさぶらうぞ
なぐさめたてまいて ちひろの底へぞいり給ふ
海岸でも無念の者たちに引かれて行くのを見て助ける登
海の中で脚をつかまれ、なんとか助かるが、マミは完全に失明して絶望する
その背後にも平家の武者の姿がある
■夜叉御前(前出のため省略
■解説 愛天使のひと 夢枕獏
(先日、萩尾望都さんの番組でも熱く語っていたけど、山岸凉子さんのファンでもあるんだな
『ひいなの埋葬』『愛天使』の作品からハマった
品のある色調、線がまるで日本画のような完成度の高さ
少女マンガの作家の中でも色彩感覚がとくに抜きんでていた
それを読んだ1977年の少女マンガは
SF、ファンタジー、学園ものなどなど
少年マンガをしのぐ幅の広さを支える作家がいた
掲載されていた『ララ』昭和52年のラインナップは
表紙が大島弓子
木原としえ『摩利と新吾』
和田慎二『試衛館の鷹』
山田ミネコ、水野英子、森川久美、三原順、倉多江美、泉左京、坂田靖子という顔ぶれ
大人の男が読むと気恥ずかしくなる作品が多い中
それとは無縁の作家がいた
萩尾望都、倉多江美、ささやななえ、山岸凉子
山岸凉子の描く短編は怖い
「海底より」の平氏の亡霊は、マミの暗い想念に呼応してやって来る
「鬼来迎」の津波シーンは、『童夢』の超能力の戦闘シーンにおける
壁面が陥没する絵とともに漫画史に残るだろう
これは技術の問題ではなく、描き手が生まれ持つ
才能、美意識、感覚、資質の問題であろう
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■時じくの香の木の実
時じくの香の木の実は今の橘のこと
大王は多遅摩毛理(たじまもり)に永遠の命をもたらす木の実を探させた
長い年月をかけて持ち帰った時には大王は亡く
多遅摩毛理は悲しみで泣き叫んで死んだ
亡き正妻の子・日向と脇腹の子・日影は
一族が見ている前で木の実を食べて
永遠に生きる者を決めるテストを受ける
日向は巫女(ふじょ)になる代わりに聴覚を失い、未来が視えるようになる
姉の日影も生きていることに驚くが
歳をとっていると分かり勝利の気持ちになる
好きな長兄が災いをもたらす女と反対を押し切って結婚後
お告げ通りに不幸になり、離婚
次の妻は国家権力を握る未来が視えたため、結婚を許さざるを得なかった
長兄と日影の関係を見て、止めようとして
自分の体が透けていることに気づく
日向は果実を食べた時に死に、この世にとどまる存在となり
そのお告げを伝える巫女は日影のほう
だが、常処女であるはずが資格を失い、日影は追い出される
長兄と日影の子は両性具有
その子が8歳になり、果実を食べる日を待つ
その時こそ真の巫(シャーマン)が誕生する
■キルケー
オデュッセウスらはアイアイエー島に来て、美しいキルケーに会う
山に来た若者たちは、最後のバスに乗れずに戸惑う
町まで40キロの道を歩くが、堂々巡りしているのに気づく
突如現れた洋館から、妖艶な美女が出て来る(着物に蜘蛛の巣が・・・
明日朝一番のバスに乗ればいいと、館で一泊することをすすめる
夕食で出されたスープで眠り、1人1人女主人に襲われていくが
1人だけ飲まなかった奈津子だけが残る
奈津子に館から出るように訴えるように、動物が寄ってきて
仲間に似ている気がする
女主人に動物の姿にされそうになり
必死で逃げて、バスの運転手に救われるが
ショックのあまり白髪になり、精神が崩壊する
■鬼来迎(きらいごう)
敏子は都会の多忙な仕事についていけず
さびれた漁村に住むお花やお茶を教える先生の家に住みこみで働く職を得る
夫は亡く、時枝というお手伝いがいる
離れに息子・修一が暮らしていて異常な様子
片腕がなく、「鬼が出る」と怖れて奇声を発するが
このぐらいのことは我慢しようと留まる敏子
主人は夜釣りに出て、波にさらわれた息子を助けようとして溺れたと知る
庭には動かすと鬼が来るという言い伝えのある石があり
地震で動いた時、修一の部屋に鬼が出る
それは優しい先生
「修一が死ねば、夫が死ぬことはなかった あれが死ねばよかったんだ!」
とんでもない大津波が襲い、村は壊滅
敏子は奇跡的に助かる
再び会社勤めをはじめ、怒鳴る上司も妙に優しい人よりマシだと思う
自分が村で見たことも、すべて津波の恐怖が見せた悪夢だと納得させる
■笛吹き童子
●第1話 石笛
祖父が亡くなり、倉の中に高額の絵などが入っているため
祖母から倉の鍵をもらおうと慌てる親族たち
祖母は認知症で親戚の顔も覚えていないが
孫娘・美沙のもとに来て、倉の中の宝箱を開けるように言う
中には古い石笛があり、吹いてみると
棺から亡き祖父が起き出して、家が地割れの中に沈む
石笛を吹くと地獄の釜のフタが開くという話
●第2話 笛吹き童子
代々、雅楽頭(うたのかみ)を司る秦氏の総領・直行は
音の良し悪しが分かり、修理は出来るが
どの楽器を習わせても絶望的に下手で両親から匙を投げられる
家を出て、観音堂を建てる仕事に就くが、音楽のことを忘れられない
毎夜、笛を吹く音が聞こえるが姿が見えない“切り口ケ原”の噂を聞いて行くと
楽の音の精霊、笛吹き童子の姿を見る
吹いていた横笛が壊れていたため、その修理が自分のつとめと思い
観音堂の完成とともにようやく出来上がり
試しに吹こうにも自信がなく吹けない
そこに童子が現れ、口づけをすると
尋常ではない笛の音を奏でるようになる
それを聞いた大臣さまが調べさせる
童子は観音さまに仕える伎芸天で
直行は元は笛の名手として生まれたが
才能に増長して大成しない運命を変えてくれたと明かす
■海底(おぞこ)より
アイドル歌手でスターだった翼マミは
目が見えなくなって引退し、マネージャーをしていた姉は結婚するため
登(みのる)の実家に世話になる
近所に耳なし芳一が平家の亡霊に出会った七盛塚があると知り行くと
芳一が歌う平曲を聞く
雨の中で泣いている子どもは、平清盛の妻とともに海に身を投げる
♪波の下にも都のさぶらうぞ
なぐさめたてまいて ちひろの底へぞいり給ふ
海岸でも無念の者たちに引かれて行くのを見て助ける登
海の中で脚をつかまれ、なんとか助かるが、マミは完全に失明して絶望する
その背後にも平家の武者の姿がある
■夜叉御前(前出のため省略
■解説 愛天使のひと 夢枕獏
(先日、萩尾望都さんの番組でも熱く語っていたけど、山岸凉子さんのファンでもあるんだな
『ひいなの埋葬』『愛天使』の作品からハマった
品のある色調、線がまるで日本画のような完成度の高さ
少女マンガの作家の中でも色彩感覚がとくに抜きんでていた
それを読んだ1977年の少女マンガは
SF、ファンタジー、学園ものなどなど
少年マンガをしのぐ幅の広さを支える作家がいた
掲載されていた『ララ』昭和52年のラインナップは
表紙が大島弓子
木原としえ『摩利と新吾』
和田慎二『試衛館の鷹』
山田ミネコ、水野英子、森川久美、三原順、倉多江美、泉左京、坂田靖子という顔ぶれ
大人の男が読むと気恥ずかしくなる作品が多い中
それとは無縁の作家がいた
萩尾望都、倉多江美、ささやななえ、山岸凉子
山岸凉子の描く短編は怖い
「海底より」の平氏の亡霊は、マミの暗い想念に呼応してやって来る
「鬼来迎」の津波シーンは、『童夢』の超能力の戦闘シーンにおける
壁面が陥没する絵とともに漫画史に残るだろう
これは技術の問題ではなく、描き手が生まれ持つ
才能、美意識、感覚、資質の問題であろう