メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

岩波少年文庫 3116 フランバーズ屋敷の人びと 1 愛の旅だち K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-18 17:35:53 | 
1981年初版 1988年 第8刷 掛川恭子/訳 ビクター・G・アンブラス/挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


期待通りの良書で一気読み
全部で三部作あるそう

これだけの長編小説を書く作家さんって、本当にスゴいなって思う
映画を観ているように物語が進んでいく


【内容抜粋メモ】

登場人物
クリスチナ・パーソンズ 12歳

フランバーズ屋敷
ラッセル 父 亡妻イザベル
マーク 長男
ウィリアム 次男 13歳
メアリー 女中頭
バイオレット 通いの召使い ディックの妹 病気の母がいる
ディック 馬の世話をする使用人
グレイスおば
ポーター 医師
ダーモット
ジョー 整備士



■第1章 1908年
ウィリアムはラッセル家恒例の狩猟中に落馬して脚を複雑骨折してしまう







クリスチナ・パーソンズは5歳の時に両親を亡くしてから以後
親戚の家をたらい回しにされてきた

莫大な財産が残されたが、21歳になるまでは手に入れることができない
フランバーズ屋敷のラッセル叔父は亡き母の腹違いの兄で“狩猟きちがい”

妻イザベルが亡くなり、落馬により脚が不自由になってからは
ひどく気難しくなってしまった

クリスチナはグレイスおばの手紙を盗み読み、長男マークと結婚すれば
フランバーズ屋敷は当分やっていけるだろうと書いてあった

屋敷に着くと、ウィリアムが運ばれて来て
ポーター医師が診ているところで出迎えどころではない騒ぎ
ラッセルは息子より馬の心配をしている

お金を全部馬につぎ込んでしまうため、召使いは女中頭のメアリーと通いのバイオレットだけ
メアリーはウィリアムに付き添い、夕食はクリスチナとマークが用意する
ラッセルはウィリアムに対して同情より怒りと軽蔑しかない

クリスチナが馬に乗ったことはないと答えると
明日からディックに教わるよう命令される

ウィリアムを見舞うと、部屋中に模型飛行機が吊るしてある
ラッセル一族はみな狩猟好きだが、ウィリアムだけは違った
ウィリアム:人間は飛べるんだ







翌日から毎朝、ディックから乗馬について教わる
スイートブライアーは穏やかな馬で、クリスチナはすっかり好きになる
ウィリアム:乗馬でディックの右に出る者はいないな

ラッセル:正月までには血を味わわせてやれ

3年前、ラッセルは馬の下敷きになり、九死に一生を得たが脚が不自由になった

ディック:
ラッセルさんは6人分の精力をお持ちでした
馬車に乗ろうとしたが、じゃり道に落ちて、顔を切り
その場で泣きわめきながら松葉づえで自分を打ちまくりました
それから二度とやってみようとしない



ダーモットから本が届き、クリスチナはラッセルに持っていくが
飛行機の本でウィリアム宛てだったため、ラッセルは激怒し
狩猟の本を何冊も読み、その後のテストに答えられなかったらムチ打ちの罰だと言い渡す

夜、ウィリアムがすすり泣く声が聞こえ、クリスチナは自責する



マークは自分の乗る荒れ馬トレジャーに乗るようクリスチナに強制する
銃声に驚いてトレジャーが走り、高い生垣にぶつかる直前にディックが助ける



夜中に大きな音がして、ウィリアムの部屋に見に行くと
二度と狩猟に行かなくても済むように脚をさらに痛めつけている

ウィリアム:
父さんは怖いものなしの人生だったから、怖いというのが分からないんだ
馬に乗れなくなれば、僕に干渉しなくなるだろう

ウィリアムはクリスチナに黙っているよう言い
もし父に話したら、ディックが狩猟林で密猟していることをバラすと脅す







クリスチナは狩猟が好きになる
狩猟後はラッセルに一部始終を報告しなければならない
ラッセルはその時だけは生き生きとしている

ウィリアムのヒザは曲がらなくなるが
ラッセルのテストに全部答える

マークは怠惰で、無礼で、時に魅力的だが、怒るとラッセルにそっくりだった



■第2章 1910年
クリスチナの15歳の誕生日に、体にピッタリな乗馬服を作ってもらった
狩猟でマークはウッドピジョンがびっこだと分かると
クリスチナのスイートブライアーに乗ってしまい
生垣をムリに飛び越えようとして落ちる











マーク:あの馬はもう年だ 手元に置く価値はない

マークを世話するバイオレットの様子を見て、好きなのだと分かるとショックを受け
嫉妬心がわくが、どうしてかは分からず混乱する

ラッセル:犬舎行きだ
ウィリアム:犬に食わせる これが年とった狩猟馬に対するお決まりの感謝方法ってわけさ

クリスチナはディックの胸を借りて泣く
ディック:お願いですから帰ってください

ディックはクリスチナの頬にキスする

なんとかスイートブライアーを助ける方法はないかとウィリアムに相談すると
犬舎に連れていくディックさえ協力してくれれば
ダーモット氏の家で引き取ってくれるだろうと約束する

ウィリアムは散歩に出かけるフリをして、週に何度もダーモット邸を訪ね
飛行機を制作して飛ぶ試験を繰り返していると打ち明ける
あと数年もすれば、1人で働いて、屋敷を出る計画

ディックも協力して、ダーモットはスイートブライアーを快く受け入れる
ウィリアムは生き生きと飛行機の話をするのを見て驚く







エマ号を見て、彼らこそ次の世代を背負うのだと思い
未来を垣間見た気がする

洗練され、優しさに満ちたダーモット家と対照的に
フランバーズ屋敷が闇と暴力と無知の世界に思える

自動車が発明されて15年 ウィリアムも運転できる



ルーカスがスイートブライアーを見ていないことがバレ
怒り絶頂のラッセルはディックをクビにし、クリスチナは松葉づえで
ウィリアムはムチで何度も打たれる







ディックは以前、貧しさからルーカスの馬肉をとったという噂もあり
ラッセルの紹介状もないと次に雇われる先もない

クリスチナは責任を感じて、初めてディックの家を訪ね、あまりの貧しさにショックを受ける
寝たきりのディックの母の状態はフランバーズ屋敷の馬以下
クリスチナが来て喜ぶが、ディックは恥ずかしさで顔をふせる

なんとか助けられないかマークに相談するも

マーク:
ああいう人のために貧民院があるだろう
それが僕とどういう関係があるんだい?

ウィリアム:
ディックは君に恋してる
気づかないなんて、ぼけなすかい?

クリスチナもディックを愛していると気づく
屋敷の食糧から卵をあげようにも、ラッセルはかつかつの食費しかくれないから困るとメアリーに言われる



ある日、バイオレットが激しく泣いている
メアリー:辞めさせました みだらな子はここに置いておくわけにいきません

ウィリアム:子どもが生まれるんだ
クリスチナ:結婚してないのに不可能だわ

おばから金を借りて、家に郵送したがあて先不明で返ってきた
ディックは軍隊に入ったという噂

軍服を着たディックがマークをめちゃくちゃに殴る
ファウラー:男と男の問題です と笑う
ラッセルも大笑いするだけ
クリスチナは世界中に誰も頼る人がいない暗黒の檻にいる気持ちになる








■第3章 1912年
マークがトレジャーに乗ってクロスカントリー・レースに出場する
マークもラッセルも勝利に大金を賭けている

今ではマークが実質フランバーズ屋敷を取り仕切っている
ディックは輸送部隊に入り、馬の世話のためインドに行ってしまった

ディックの母は、バイオレットが辞めて1年後に貧民院で亡くなった
バイオレットは生まれた子とロンドンに行ったまま

熾烈なレースはファイアーダンスとトレジャーだけになり
あとは登りの直線コースでゴール目前という時
ウィリアムが乗ったエマ4世号がコントロール不能で飛んできて大混乱となる










馬は逃げ、飛行機は落ち、ウィリアムはさかさまになって着地する
ラッセルは初めてウィリアムのしていたことに気づき、勘当を言い渡す

ウィリアム:
父さんの弟がブリティッシュコロンビアにいるからそこで森林学を勉強しろだってさ
ダーモットさんが金を貸してくれるから、僕は仕事を探しに行く ここには帰らない

おばから贈られた舞踏会用のドレスがとても見事で驚く
そのドレスを着るはずだった女性が駆け落ちしてしまったため、クリスチナに回って来た

ウィリアムから「土曜8時に迎えに来る」とメモがある
クリスチナはウィリアムに恋していると気づく

ドレスを着たクリスチナはとても美しかった
ウィリアムはダーモットのロールスロイスで迎えに来る
ウィリアム:クリスチナ、きれいだよ

ウィリアムはダンスも上手かった
クリスチナは男性たちに次々とダンスを申し込まれる

マーク:
じきに戦争が起きるだろう
ここにあるすべてのものが、けして変わることがないと分かったらボクは喜んで殺されに行くよ
進歩したい奴はすればいい
機械が粉々になった後でも、善なるもの、真なるものはずっと続くだろう
もし君がフランバーズ屋敷を欲しいなら、僕たち、なるべく早く結婚したほうがいいだろう

クリスチナ:
私たちは考え方が違う
私たちはあなたの召使いじゃない!

ウィリアムにマークから乱暴にプロポーズされた話をすると

ウィリアム:
ボクは飛びながら戦うことになると思うよ
君はグレイス叔母の所に行けば、本当に何がしたいか決められるだろう
ボクに職が見つかり、将来の見通しがついたらプロポーズに行くよ
君の財産は関係ない
すぐ出発しよう

ウィリアムの愛情の大部分はエマ4世号や、飛行機にあると知っていても
クリスチナはクルマに乗る

ウィリアム:
君をとても愛している
飛行機がもとで不幸にしてしまうだろう
君に申し込むべきじゃないんだ

クリスチナ:構わない

馬で追ってくるマークを振り切って、2人はクルマで出発する




訳者あとがき
第一部では新しいものと古いものとの対立がドラマの中心になっている
クリスチナは2つの世界に引き裂かれ、選択を迫られ
ついにマークを拒否して、ウィリアムを選び、古い世界と別れる

日本の飛行機の歴史
1785年 浮田幸吉が橋の上から河原に飛ぶのに成功
1910年 日本で初めて飛行機に乗って飛んだのは、徳川大尉と日野大尉
国産第一号機は奈良原男爵がつくった奈良原一号という複葉機

1903年 ライト兄弟がアメリカで初飛行に成功したキティホークは複葉機

第一次世界大戦で世界初の空中戦が行われた
大空を飛ぶという人間の夢は、人殺しの道具になった


K.M.ペイトン
Kはキャスリーン、Mはマイケルで、かつて夫婦合作した時のペンネーム
その他の作品でも馬や漁船、ヨットなどの冒険物語が多い
イギリスの児童文学作家タウンゼンドはペイトンを“行動の人、動きを見事に表現する才能を持つ”と評した

『難破船上の戦い』
『卒業の夏』
『ベートーベンの肖像』
『ペニントンの後継ぎ』
『バラの構図』
『腹心』
『英雄であることの証』
『真夏の夜の死』
『マリオンの天使』


本書はイギリスでテレビの連続ドラマ化された








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