私が中国を訪れたのは今回で2回目である。
初めての旅は今から10数年前だった。前回は北京、洛陽、大同と西安だったので、場所も全く違ったが、今回の旅で新しく感じた事もあったし、前と比べて中国は変化したと思った点もあった。
先ず、変化したと思った点である。
第一は、生活水準である。
自転車の数は相変わらず多いが、見た所、随分車が増えた。
ガイド氏の説明では、一番売れているトヨタの○○は、去年から現地生産される様になり、関税が100%から50%に下がったのだという。人民元で20万元(330万円)もするそうだが、買える人が増えているのだ。そのため上海や成都などの大都市では、高速道路も整備されたが、一般道路では渋滞が起きている。
また、どの都市でも、近代的な高層ビルの建設があちこちで盛んに行われていた。
ところが一方では、改革開放政策が行われるようになってから、都市と農村の所得格差、都市内の所得格差が広がっているらしい。農村は農産物価格が安いので生活が苦しくなり、若者はどんどん都市に出稼ぎに出て来るのだという。
上海では2200万人の人口の内、500万人が農村からの出稼ぎ者だと説明された。農村地帯で車窓から見た家は、ほとんどが数十年前に作られた様な暗くて設備の悪そうな前近代的な家だった。
上海のガイド嬢の説明によると、1980年代に比べて給料は3倍になったが、都市の土地代が10倍になり、物価も高くなったのだという。
そのため最近の女性はマンションを持っている男性と結婚したがるが、それもなかなか難しい。また、結婚すると、働く女性の負担が大きいため、中国でも日本と同じように晩婚化が急速に進んでいるらしい。
一般道路では、自転車にリヤカーをつないだり、大きな竹製の籠をつけて物品を運んでいる人が多く見かけられたが、バイクで二人乗りをしている人達も凄く多い。車とバイクと自転車と、所得格差が一目瞭然に分かるようだった。
また、私達にお金をくれと手を出す子ども、老婦、障害者の乞食もいた。ガイド氏に「社会主義中国にも乞食がいるのですね」と言うと、「最近社会が変わってきたから」という答が返ってきた。
人々の服装も随分と良くなった。
前に行ったのは8月だったせいか、上半身が裸の男性ばかり目に付いたし、シャツを着ていても、茶色っぽい着古した物が多く見られた。
女性も25℃を越える真夏なのに、汗を吸わない合成繊維のブラウスやワンピースを着た人が多く、汗疹ができないだろうかと心配したものだ。
今回は、多くの男性や女性が私達とほとんど変わらないTシャツやYシャツの服装をしていた。成都やその郊外で裸の男性も見かけたが、極一部分の人だった。
第二は、マナーである。
一番感じたのは交通マナーである。
以前行った時は、北京の高速道路が建設中だった。それもヘルメットを被った上半身裸の男達が、砂利やコンクリートの破片をもっこに入れて肩に担いで運び上げるといった人力頼りで作っているのを見てすごく驚いたものだ。
そして、首都北京でも信号機が少なく、あっても車は無視して走るし、その前へ平気で出てくる自転車や人が大勢居た。そのため車が渋滞して身動きできなくなる光景があちこちで見受けられた。
今回行って見たら、上海ばかりでなく、内陸の成都でも高速道路が整備されていたし、町の中にも信号機が増えた。大都市では交通整理をしている人がいて、大体の人や車は信号を守って通行していた。(高速道路を平気で横断している人達がいたのが中国らしかった。)
また、公安警察の車が、ラッシュ時には見張っているのを見た。しかし、日本の様に誰もが交通ルールを守る様になるのには、まだまだ時間がかかりそうに思えた。
次は、ゴミのポイ捨てが少なくなった事である。
朝、バスから見ていると、オレンジ色の服を着た交通庁の職員らしき人が、成都でも、峨眉山に向かう山岳道路でも、竹箒とちり取りを持ってあちこちで道路掃除をしていたし、道路にはゴミが少なかった。しかし、相変わらず、所構わずつばを吐く人がいたのは不快だった。人々の意識はまだまだだろうが、確実に環境は国際水準を目指してきれいになりつつある様だった。
峨眉山に行く道路には「全国衛生山」という標識があり、国中の山を綺麗にしようというキャンペーンが掲げられていた。オリンピックを前にして、国を上げてマナーの向上に取り組んでいる事が良く分かった。因みにトイレは「衛生間」である。
第三は、見学施設とその周辺の整備状況が格段に良くなったことである。
前回行ったのは文化大革命の後で、多くの文化遺産が江衛兵によって破壊された後だった。その時色々な場所を見たが「兵馬俑博物館」以外はどこも薄汚く埃を被っていて、文化財がきちんと管理されている様には見えなかった。
しかし、今回訪れた場所の中で、世界遺産に指定されている所は、国の予算を1/3と世界○○基金からの援助1/3を受けているらしく、どこも入り口から出口まできちんと整備されていた。中国の変化を見て、世界遺産の指定は、人類の遺産を後世に残すための素晴らしい取り組みだということを強く感じた。
反対に、文化大革命と、それを支持した毛沢東の評価が、今、どうなっているのかが気になった。
第四は、反日感情をあまり表に出さなくなった様に見えた事である。
前回行った石窟寺院のある郡部の大同では、ガイドから「戦時中、日本軍がいた町なので、安全の確保のため外出を禁じます」と言われた。
今回は四川省の奥地まで行ったが、何の問題も感じなかった。多分、オリンピックの開催を契機として、中国人の意識が変わって来ているのかなと思った。しかし、内面には、きっとまだ、根強い反日感情はあるに違いない。
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