悲しい出来事

繁殖用の肉牛を二頭飼っていて、生まれた小牛を半年ほど育ててから競りに出している。
その内の一頭が出産予定日を過ぎても出産できず苦しんでいる様子なので、心配したジイチャンが獣医に連絡して診に来て貰った。
しかし、獣医が帰った僅か二時間後にその親牛は急死してしまった。
500kgはあると思われる巨体の親牛が、こんなに簡単に死ぬなどということは俄かには信じられず家族皆が大きな衝撃を受けた。

死因は「子宮の捻じれによるもの」だという。
小牛は止むを得ないとしても、せめて親牛だけは何とか助けて欲しかったものと悔やまれてならない。
これまで六頭の小牛を産んでいた親牛だったが、七頭目に不幸が待っていた。
本当に可哀想なことをしてしまった。

そんな悲しい出来事があっのは一昨日のことだった。



残された牛の親子。
獣医が牛の体をロープで縛り、横倒しにしたり仰向けにしたりして診察している間、隣に居るこの牛の親子が心配そうに見守っていた。
更に、診察を終えて解放された時に隣の親牛がまるで慰めるかのように苦しんでいる先輩親牛の首に頬擦りしたのには感動させられた。

「畜生」などと差別用語とも思える呼称を使うことは今後慎もうと思った。