穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

Seven私小説?

2011-02-18 20:20:24 | 芥川賞および直木賞

芥川賞選評への講評を続ける。

苦役列車に何かが足りないという選評をつけているのは次の各人;

島田雅彦;高樹のぶ子;村上龍;

小説はクイズではない。ミステリーはクイズかな。純文学はクイズではないと思った。

もちろん、何らかの主張を打ち出したり、社会へのコミットメントを含んでいたり、試練を通して主人公が成長していく過程を描いてもいい。だけどそれがないから駄目なんてどこを叩いたらでてくるのか。

これは何もカッコ私小説カッコトジに限らないが、それよりも大切なのは登場人物の典型像を造形出来るかどうかだろう。

あるいは登場人物の布置に永遠の、あるいは同時代的な問題意識を浮き上がらせることだろう。

西村賢太氏の作品はばらつきはあるが、それに成功している。もっとも本人はそれを意識していないだろう。あの年で自覚しながらやっていたとしたら一寸いやらしい。

典型と言うのは平均値ではない。シグマをプロットした広大な人間世界の荒れ地のなかにある。それを提示できるのが作者の質である。それを読んで摘出出来るのが評論家や読者の質の高さである。