彼の作品は上記のほかに「クライマーズハイ」と二つ読んだ。小川榮太郎氏の採点はクライマーズが87点ともっと高く半落ちは81点だが、私は半落ちのほうを上に評価する。
クライマーズは地方新聞社内の二世代のグループダイナミックスと言っていいのかどうか。叙述は半落ちに比べて迫力がない。新聞記者と言うのは自分の記者生活のハイライトを遭遇した大事件に置くものらしい。古い世代は前世紀も大分昔の連合赤軍の浅間山荘立てこもり事件だ。一方若い世代は日航ジャンボ機のゴスタカ山墜落事件だ。いずれも群馬県で起きた地方紙地元の「大事件」で日航ジャンボ墜落事件(これも前世紀の話だが)を取材する若い記者は、年寄りが連合赤軍取材が最高の事件、最高の事件と言うのはおかしいが、だと思って若い記者に教訓をたれて反発を買うという次第である。要するに地方新聞社内の世代間グループダイナミックスで平板である。
半落ちは地方都市での警察幹部による嘱託殺人の経緯である。つまり警察の取り調べ、検察の取り調べ、法廷での取り扱い、収監された刑務所と時系列に追っている。私は法曹界には詳しくない。昔法廷に一度だけチョコっといったことがあるだけだ。それだから、大分詳しく書かれている本書の内容が実態をどの程度反映しているか分からない
この作品は直木賞候補になったが、事実と違うと一部の選考委員がいちゃもんを付けた事件で知られている。しかし、どういうことだったのか、曖昧な記事しかインターネットには出ていないようだ。その点も興味をひかれたところである。
最初はこのくらいにしておこう。