穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ゴシック小説かな

2012-10-06 07:43:37 | 本と雑誌

このブログ、気が付いたらひと月以上ご無沙汰でした。怠けちゃいけません。いやいや二月以上だ。困ったものだ。

角川文庫、ダークブルーの背表紙が印象的な角川海外文庫。ルース・レンデル「ロウフィールド館の惨劇」
題だけ読むと、ゴシック小説みたいなんですが、推理小説なのかな。最初から犯人が分かっていてどう事件にいたるかという話。こういうのが好きなんですね。ドストエフスキー罪と罰系列。

昭和59年初版平成20年第20版、結構読まれている。地味な文庫だがそこそこ売れている。面白いですよ。主人公(殺人者は二人いる)。両方とも中年女(中年女という表現はプレスコードのひっかかるのかな)。

主役は今時珍しい文盲(これは明らかにプレスコードに引っかかるが書けば書けるものだ。憶えておいてオイラも使おう)、このキャラ設定を中心に話を組み立てる。うまくやっている。ドストエフスキーの白痴(これもプレスコードには引っかかる筈だが、岩波も新潮もそのまま)も仮説的人造典型を中心に据えているが、比較するのも妙だが、この小説の主人公の文盲も同様の役割で成功している。

彼女は文盲という以外は正常な機能を持っている。精神は邪悪、硬直的でも。そこがミソ、映像的記憶力はそれを補って人より優れている。この設定も可。

準主役はよくある新興宗教狂い、このコンビが大量殺人に至る。

準主役は交通事故で意識不明、主役は知恵を働かせて現場を糊塗し嫌疑がかからない。

最後に警察側の謎解きが入るがこれが退屈。推理小説の欠陥は謎解きである。小説としてはということだが。拙劣、退屈、説明ごたごた。

この欠陥を免れているミステリーは一万冊のうちよくて一冊だろう。

最後の最後はいい。ドラマチックな効果を出している。

つまらないことを書きました。このブログは個人的な備忘録を兼ねているのでお許しを。

申し遅れましたが、姉妹ブログに掲載途中の「指バラ色に」は大幅加筆中、最終章を追加して発表する予定です。

&

現題はjudgement in stone,

stoneというのは文盲の中年女の内面をいうようだが、たしかに訳しにくい。しかしこの日本名は再考したほうがいい。

犬の動物検疫の話がある。ロンドンから70マイル(現場は)、そこから車で行けるところというとイングランドでなければウェールズかな。イギリスの地理はしらないが。しかし、そんなにロンドンの近くに動物検疫を必要とするところがあるのか。

この辺はあとがきで触れたほうがいい。あとがきはそういうことのためにあるのだろう。