4-1で勝利!
J2からの降格初年度となる金沢に、J3の怖さを教えてやれーーープレビューにおいても、そんな煽りを書き連ねたりもしましたが。
有言実行とでも言うのか。まさに、そんな試合となりました。
攻守ともども金沢を圧倒したカターレの完勝とも言える内容で、金沢ゴーゴーカレースタジアムのこけら落とし試合に勝利。1週間後に迫るJ3リーグ2024シーズンの開幕に向けて、自信と手応えを掴む幸先の良いスタートを切ることが出来たのでした。
2月中旬の北陸地方と言えば、本来であれば、寒さ厳しい冬の真っ只中であったはず。
今回の金沢ゴーゴーカレースタジアムオープニングマッチの開催が発表されたのは、昨年末・12月16日のこと。
そのときには、あるいは雪の中、はたまた冷たい雨が降る中で、寒さに凍えながらの試合になってしまうのでは?などと危惧したものでしたが。
しかし。蓋を開けてみれば、とても2月とは思えないような温暖な気温に快晴の青空。リーグ開催中の期間にあっても、ここまで好条件下での試合は、なかなか無いぞ?というくらいの。まさに絶好のコンディションでの試合となったのでした。
お隣・石川県での開催試合。地理的な近さもあって、普段であればアウェイ遠征まではしないファン・サポーターにしても、「ならば」と参戦を決めた人も多かったということでしょう。早々に完売したビジターゴール裏立ち見エリアをはじめ、富山からも数多く来場。赤と青に彩られたスタジアムには、8566人の観衆を集めたのでした。
完成したばかりの、北陸初のJ規格サッカー専用スタジアム。陸上トラック越しのピッチでは感じられない至近距離の迫力に、この日を待ちわびた多くのファン・サポーターも、感慨とともに新スタジアムの魅力を満喫したのではないかと。
・・・ただ、その満足感も、全ての人にとってというわけではなかったのですが。
スタジアムの全容が公開されたときから感じていたことではありましたが。実際に現地まで行って確認してみれば・・・ビジター側ゴール裏立ち見エリアが、ね。
着席して観戦する椅子が無い、立ったままの応援というそれ自体は、織り込み済みとして。ゴール裏では普段から着席しての応援ではないことを思えば、それは苦でもなんでもないのですが。
問題は・・・とにかく、狭い。ただの通路じゃん!と。
メイン、バック、ホーム側スタンドと、それぞれに立派な屋根を備えているがゆえに、余計にビジター側のショボさが際立つというか。
これが、本来の2月らしい天候であったら、いったいどうなっていたことか。
冷たい雨が降ってきたとして、ほとんどのスタンドでは屋根のおかげである程度はしのげたことでしょうが・・・ビジター側は、雨ざらしの吹きっさらし。さらに、狭い。いったいなんの晒し者なのかと。
さらに。ピッチまで至近距離、それ自体は良しとするのですが。
いかんせん、その通路・・・もといビジター側エリアのピッチに対しての高さが微妙に足りない。ピッチレベルに近いと言っても、もう数センチでも高く設定していれば、それだけで見やすさも段違いだろうに。
これが完成形ではなく、将来的な拡張を見据えた上での現段階でのエリア指定。その前提は理解しているのですが・・・それでも。現段階にあっても、もっとやりようがあったのでは?と。
とはいえ。
やはり、うらやましくないと言えばウソになります。
どうしたって、ピッチに近い臨場感というものは正義。国内の数あるスタジアムのなかでもワースト級認定されようかというほどにピッチとスタンドが離れている、ホームスタジアム・県総のことを思えば・・・せつない気分にもなってしまうので。
未だ構想段階で、具体的な建設プランが動いているわけではない富山におけるサッカー専用スタジアム。その必要性に対する後押しのひとつとして、この金沢ゴーゴーカレースタジアムの存在が取り沙汰されると良いのですが。
試合会場まで駆け付けたカターレファン・サポーターの最大の関心事は、新シーズンに臨むチームのメンバー編成にあったかと。スタメンに目を向けると、やはりと言うべきか。フレッシュな顔ぶれが並ぶこととなりました。
GKに、期限付き移籍を延長した田川。今年も正GKという立ち位置でしょう。
CBに下堂と新加入の川上。昨年は不動のレギュラーとして活躍していた大畑が、群馬に移籍。その群馬から入れ替わるようにやって来たのが川上。走力と高さが持ち味という補強ポイントにマッチした選手だけに、期待したいところ。そして、昨シーズンは怪我に泣かされ12試合の出場にとどまった下堂。巻き返しの思いは強いはず。
右SBには、昨シーズンブレイクした安光。左SBでの起用が多かったものの、右もこなせることは証明済み。遜色なく持ち味を発揮してくれるだろうと。
左SBには、沼津から新加入の大迫。守備だけでなくロングスローを武器としているらしいので、活躍が楽しみ。
ボランチには末木と新加入の河井。クラブ生え抜き5年目、副キャプテンのひとりでもある末木に対する信頼は揺るがないとして。大きく若返ったチームにあって、最年長のベテランとして加入してきた河井。かつての西部同様に、清水で長く活躍していた選手であり、人となりを知り尽くす左伴社長の要請に応えての移籍となったようで。
右SHには、いまやチームの顔でもある松岡。3ゴール6アシストを記録した昨シーズン成績の更新は、もはやノルマでしょう。
左SHに抜擢されたのは、昨シーズンの特別指定を経て本契約となったヨシキ。既にJの舞台を経験し、ゴールも挙げている彼だけに。さらなる飛躍を期待したいです。
2トップのひとりには、やはり特別指定を経ての加入である地元富山出身のショウセイ。背番号を41から9に改め、新体制発表会では得点王を狙うとの力強い宣言が。
2トップのもうひとりが、甲府から期限付き移籍の松本。恵まれた体躯、機動力とパワーを兼ね備えるというFWらしいFWとして、かかる期待は大きいかと。
能登半島地震の追悼、復旧・復興を祈念した試合ともなった、このオープニングマッチ。両チームの選手たちが揃いのTシャツを着て入場。両キャプテンによる宣言、黙とうを経て、いよいよキックオフのときを迎えました。
新シーズンの開幕を翌週に控えた実戦の場。調整も大詰めといったなかで。
見ていて率直に思ったのが、「想像以上に仕上がっているな」ということ。
攻守の素早い切り替え、前線からプレスをかけつつアグレッシブにプレーするという、小田切監督のスタイル。今年も健在のようで。
いや待て、去年とまったく同じメンバーであればいざ知らず・・・継続レギュラーと言えば、田川、安光、末木、松岡くらいだろう?それが、新加入選手を含めてきちんとそれぞれが連動して機能しているじゃないかと。
大畑が抜けて、どうなる?と思っていたCBも、川上が機動力を活かしてしっかりとしたカバーリング。
シルバが抜けて、どうなる?と思っていたボランチは、さすがに経験豊富な最年長・河井が味のあるパスの散らしを見せると。
安藤が抜けた左サイドは、逆サイドの松岡にも劣らないアグレッシブさでヨシキが魅せました。ドリブル、スピード、仕掛け、あらゆる分野で昨シーズンより進化している。
そして、大野や駿太が抜けた2トップがどうなったかと言えば。
ショウセイと松本の長身FWコンビが躍動。
ハイボールの競り合いを制する身体能力の高さはもとより、前線でボールを集めてタメをつくることができる。そして、チャンスとあらば積極的にシュートを狙っていく。なんというか、ふたりとも「これぞFW」という、なんとも頼もしいプレーぶり。
各々のプレーぶりを見ていたカターレファン・サポーターたちも、その充実度を見てとったのではないかと。
そんな手応えがカタチとなったのが、21分でした。
新スタジアムのこけら落とし、金沢ゴーゴーカレースタジアムのファーストゴールを決めたのは、カターレ富山背番号9・碓井 聖生でした。
さらに、それだけにとどまらず。41分には再びショウセイ!チャンスを逃さぬ果敢なシュートが突き刺さり、この日2点目!勝利を大きく引き寄せることに。
新体制発表会で得点王を目指すと宣言ーーーそれが大言壮語やブラフではないと、現実的な目標であると見せつけるかのような、素晴らしいゴールでした。
期待通り・・・いや、それ以上の手応えが見てとれた前半。
さりとて、ここで油断するわけにはいかない。ハーフタイムを挟んでは、相手の金沢も対策を講じてくるはず。それを踏まえてもなお勝ちきる強さを見せねば。
そうして迎えた後半、その開始直後でした。
47分、ショウセイに負けじと、もうひとりのFW・松本がカターレ初ゴール!金沢の出端をくじく3得点目を挙げて、俄然優位に立ったのでした。
エンドが変わった後半のゴール。狭い通路・・・立ち見エリアに並んだカターレファン・サポーターたちと次々とハイタッチを交わして喜びを爆発させる松本。
およそ県総では成し得ない、サッカー専用スタジアムならではの光景。その醍醐味というものを堪能することが出来たのでした。
ただ、それから間もない51分にペナルティエリア内でのファウルからPK、それを決められて失点してしまうことに。ゴールに歓声が上がる対面のスタンド。
ただ、それでも。
昨シーズン、失点を機にペースが乱れ、踏ん張りどころでこらえきれず更なる失点というパターンも見受けられたカターレでしたが。
この試合では、その傾向は見られませんでした。
むしろ、その逆。
奮起したカターレに失点からの陰りは無く、55分には安光がゴール!ダメ押し点とも言える4得点目。再び3点差に広げると。
マテウスや吉平、そして新加入の井上などを続々と投入。5点目こそならなかったものの、相手の反撃をしっかりと封じきり、得点を許さず。
そのままスコアは動かず、4-1で試合終了。2024年カターレ富山初勝利を手にしたのでした。
シーズン開幕前ということで、金沢にとっては仕上がり切れていない状態での試合であったのかもしれません。それでなくとも新体制となった伊藤監督の下、就任初年度でこの時期にいきなり結果を出すには、3シーズン目の小田切監督体制のそれと比べては、差があったということもあったかも。
手探りのなかで、この試合で最適解を導くには至らなかった、と。
およそ1か月後、3月20日にはカターレのホーム・県総で、リーグ戦における初対決・北陸ダービーとして再戦することとなりますが。
こけら落としのメモリアルゲームで、よもやの大敗。手痛いJ3の洗礼を浴びせられた金沢としては、今に見ていろとばかりに、リベンジを誓っていることかと。
ただ。
その再戦を前に、シーズン開幕戦では沼津と、ホーム開幕戦では今治と対戦するようですが。
カターレファン・サポーターとしては、「ああ、あのクラブね・・・」などと、ちと険しい顔をしてしまいたくもなるところ。
そう、「今回は本番前のフレンドリーマッチでたまたま負けてしまっただけ、本調子となれば!」と軽んじてしまうことがあったとしたら・・・時を待たずに、もっと酷い、手厳しい現実を突きつけられることになってしまいますよ?と、自戒を込めて忠告させていただこうかと。
新スタジアムこけら落としの空気を読まないどころじゃねえ!というような大勝でもって、シーズン開幕に弾みをつけたカターレですが。
それでも。
昨シーズン、勝ち点差ゼロながらも得失点差で昇格を逃すという悔しい思いをしただけに。
ゴールラッシュも、そこで満足することなく貪欲に狙っていかねば。
自信をつけることは大いに結構。さりとて、そこで慢心してはいけない。
勝ったからこそ、次につなげる。
目標は、あくまで優勝。
今回の試合で得られた経験を、まずはシーズン開幕戦・YS横浜との対戦での勝利にフィードバックするためにも。
勝って兜の緒を締めよ。謙虚さを、奥ゆかしさを忘れてはなりません。