初めての登山での道迷い体験は不可解でもあった。戒めとして、いつまでも思い出し、「いつかきちんと登ろうね。リベンジ鞍掛山」と、言っていたわたし達であった。
あの時は、塔尾新道から登った。塔尾新道は、滝ケ原の駐車場の賑わいと比べると静かである。きっと、滝ケ原を熟知し、少しずつ経験を積んだ後で挑戦するのだと思う。なぜなら、昔からある登山道は、初心者に相応しく、新道と名が付くという事は、いろいろ経験した後に変化に富んだ道を開拓してできたような気がする。
さて、山頂から後山へ向かうには、避難小屋のところから「後山・三童子山」と、いう標識通りに向かう。
さて、問題はここからである。「加賀とのお新道」の標識通りに下ると、当然「とのお新道」に、行くのだと思う。
わたし達は獅子岩で眺望を楽しんだ。あの日もそうだった。下を覗くと足がすくみそうな岩の先端へでる。Iさんがkenのリックをつかんでいてくれたが、わたしは遠慮。
その後、「加賀とのお新道」の道しるべに従って行く。
さて、この標識が新しい。「8年前にはこの標識はありましたか?」と、訊くと「最近つけたんや。迷う人がいて、電話がかかってきたりすることもあった・・。」と、いうことだった。鞍掛山は山頂でも電話は通じる。さらに、矢印があるのを見落としてはいけない。
ここで二股に分かれていて、右の方は木に紐がぶら下がっている。左へいくと塔尾で、右の方が滝ケ原に続くのである。しかし、その前に「加賀とのお新道」の標識を見て下りてきているので、うっかり見落とすと道迷いになる。何で鉄塔の所に出て滝ケ原に下りてしまうのか・・と。
ここから滝ケ原へ行ってしまうとは、これは厄介な非公式の登山道である。
今日は、滝ケ原へ下りるべく右の道をいく。尾根を歩いて鉄塔にとりつき下っていく。最後にひとりだったら下りないだろう急坂を下りる。お兄ちゃんは慎重だが、弟は急な坂を走り出し止まらずにひっくり返っていた。「走らない!!」と、注意したが、つつっと足が出てしまうらしい。
わたし達家族がおとぼけ家族で、いつまでもプチ遭難を恥ずかしいと思っていたが、この謎が解けて改めて山を安易に登ってはいけないのだと思った。
ただ、完全に謎が解けたわけではない。あの時、尾根伝いに歩いた道は、なだらかだったはずだ。鉄塔を横切って見晴らしのよい尾根を歩いていたように思う。今日の道も、ひとりで行ったら同じところへ行けるだろうか。