シンクタンクの悲劇
何十年も前から「日本にもシンクタンクが必要だ」と
政策シンクタンクの重要性が訴えられて来ました。
しかし、改善してないどころか、悪化しつつあります。
外務省の「外交・安全保障関係シンクタンクのあり方に
関する有識者懇談会」報告書(平成24年8月)によると
10年間でシンクタンクの予算は4割減だそうです。
ペンシルバニア大学の調査によると、シンクタンク数は、
以下のようになるそうです。日本は9位です。
1)アメリカ:1815
2)中国: 425
3)インド: 292
4)イギリス: 286
5)ドイツ: 194
・・・・・・
9)日本: 103
シンクタンク大国のアメリカはもちろんのこととして、
中国でもシンクタンクは重要な役割を果たしています。
中国の国家首脳は、シンクタンクの意見をよく聴きます。
中国の官僚機構は、シンクタンクの政策をよく採り入れ、
官僚主導ではない政策形成が実現されています。
政治主導のための重要なインフラが、シンクタンクです。
日本で官僚主導が続くのは、シンクタンクが弱いことも、
背景にあると考えてまちがいないでしょう。
ご覧のとおり、日本のシンクタンクは、残念な状況です。
バブル期等に多少改善の見られた時期もありましたが、
その後厳しく「事業仕分け」でも目の敵にされました。
すぐに目に見える成果が出ないものを大事にしないのは、
長期的には大きく国益を損なうケースが多々あります。
財政が厳しくなると最初の削られるのが、ODAであり、
文化交流・知的交流であり、シンクタンクの予算です。
尖閣や竹島をめぐる問題で国際世論に訴える場面において、
一番効果的なのは、日本の対外的イメージであり、人脈です。
いまはいわゆる「パブリック・ディプロマシー」の時代です。
そのために好意的な対日世論を形成しておくことが大事です。
その武器は外務省の広報予算や国際交流基金の文化交流事業、
シンクタンクの知的交流事業や調査研究事業、ODAです。
韓国が、従軍慰安婦問題をナチスの蛮行と同列に論じて、
国際世論を反日に向かわせようとしている状況下では、
内弁慶の感情的な反論では無意味です。
きちんと調査研究に基づき、反論すべきは反論すると同時に、
問題のある部分は誠実に謝罪し、誠意を示すことも大事です。
特に誤解に基づく批判を止めるには、組織的な対応が必要です。
外務省として正式に反論したり、説明したりするのと同時に
セカンドトラックと呼ばれるシンクタンク等のルートでも、
国際世論に対してきちんと主張していくことが大事です。
重要な機能を果たすべきシンクタンクや国際交流基金の予算を
バサバサ切ってきたのが、民主党政権の事業仕分けでした。
シンクタンクに元官僚や出向中の外務官僚が数名いたとしても
それだけでそのシンクタンクを全否定すべきではありません。
補助金と引き換えに無能なOBを天下りさせるのは問題ですが、
当該分野の専門性の高い元官僚を活用することは重要です。
特にパブリックセクターの仕事の場合、民間の人材だけでは、
実務的な政策提言ができない可能性もあります。
外交実務は、民間では経験できない仕事が多いです。
補助金とセットになって既得権化した天下りは問題ですが、
能力ベースで採用される元官僚が「リボルビングドア」で
民間に行って活躍するのは、社会的に有益なことです。
元外交官、大学教授、元商社員、シンクタンク生え抜き研究員
ジャーナリスト出身者等、官民を問わず優秀な人材を集めて、
政策提言や知的交流を行うことは、国益を守るために必要です。
日本の外交・安全保障関係のシンクタンクを強化すべきです。
民主党政権を早く終わらせて、そういう仕事をしたいものです。
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