新刊発売のお知らせ
2013年1月19日発売KKベストセラーズから、
田母神元航空幕僚長との共著を発売します。
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天木直人
安倍首相がTPP交渉参加表明を興奮気味に語った翌日16日のメルマガ第187号で、私はすかさず書いた。
安倍自民党政権も官僚たちも、これから始まる米国の日本に対する市場開放要求の対応に追われ、消耗させられていくだろう、と。 その私の予測を見事に裏付けてくれる記事を見つけた。 きょう3月18日の日経新聞に掲載されているカーラ・ヒルズ元米通商代表の「私の履歴書」連載18回の記事がそれだ。 そこには、カーラ・ヒルズ米通商代表が、代表承認の公聴会で発言したという「カナテコ宣言」と、それを実施するためにジュリアス・カッツやウィリアム・リンという二人の副官の人事を固めた経緯が詳しく書かれている。 当時の官僚たちにとっては懐かしい名前だ。懐かしいけれどいまいましい名前だ。
カナテコ宣言とは、カナテコを使ってまでも日本の市場をこじ開けてみせるという宣言であり、それは悪名高いスーパー301条制裁条項を振りかざして日本に迫ることである。
そしてその忠実な執行役として、ヒルズ代表は、国務省の官僚と訴訟に強い弁護士を任命した経緯を誇らしげに語っている。
もう二十年以上も前の話になるが、あの時外務省はどれほど消耗させられた事か。
関係各省の官僚たちはどれほど米国の理不尽な要求に対応させられたことか。
対米従属の外務省でさえ、当時の担当局長が、「今の米国をまともな国と思っている者は外務省の中では誰もいない」と発言して我々を驚かせた事があったほどだ。
それほど米国の要求は理不尽で、執拗であったのだ。
あれから20年余たち、日本は米国の要求に従って譲歩に譲歩を重ねてきた。
それによって日本は大きく変えられて行った。
それでも足らないとばかり、いま米国はTPPという名の市場開放要求の最後版をつきつけてきた。
そしてそんなTPP交渉に応じる事を安倍首相が表明したのである。
安倍首相や官僚たちが消耗させられるのは自業自得だ。
しかし今度こそ日本という国が米国によって消耗させられていくのである。
そんなTPP交渉の受け入れについて、きょう16日の各紙は大多数の日本国民がその決断を評価するという世論調査結果を一斉に掲げている。
驚くべき提灯世論調査だ。
もしそれが正しい調査結果であるのなら、国民はあまりにも無知、無自覚だ。
さすがの私も、もはや日本は行き着くところまで行くしかないというあきらめの気持ちにさせられる。
それにしてもこのタイミングでカーラ・ヒルズ元米通商代表の「私の履歴書」が日経新聞に連載されているのは、大いなる皮肉である(了)。