国会に「党議拘束」という慣行があります。
各議員が党の方針に従って投票することを、
義務付けられることを意味します。
日本ほど党議拘束がガチガチに厳しい国は、
先進国では珍しいと聞いています。
あまりに厳しい党議拘束が自由な議論を妨げ、
柔軟な国会対応の阻害要因になっています。
例えば、党内で議論がまとまらない法案は、
国会提出が先送りされてしまいます。
臓器移植法も党内で意見が一致しないために、
なかなか法案化できず、最後は党議拘束を外し、
何とか法案化に持ち込んだ経緯があります。
最初から党議拘束を外すことを前提にすれば、
党内で議論の分かれるテーマを扱った法案も
もっと柔軟に国会に提出できます。
民間の有識者から成る21世紀臨調においても、
国会改革として以下の趣旨を提案しています。
--------------------------------------------
党派よりも個人の信条や良心に関わるものは、
党議拘束の対象外とすることも検討すべき。
--------------------------------------------
みんなの党のアジェンダにも次の文言があります。
--------------------------------------------
個人の倫理観、宗教観が問われる法案には、
党議拘束を緩和し、各議員の良心と信条に従い
自由な投票を許す。
--------------------------------------------
もちろん党議拘束をかけるべき法案もあります。
次のケースでは、党議拘束をかけるべきです。
(1)選挙時の公約に掲げた法案
(2)党の基本政策や理念に関わる法案
他方、それ以外の一般的な法案すべてに、
党議拘束をかける必要はありません。
私は自民党議員時代から党議拘束の緩和を訴え、
超党派のグループ等でも提案してきました。
*ご参考:「中央公論」2008年3月号掲載
「機能不全の国会を改革する八つの方策」
(共著)馬淵澄夫、河野太郎、細野豪志、泉健太
柴山昌彦、水野賢一、山内康一
昨日国会で採決された「スポーツ振興投票の実施等
に関する法律及び独立行政法人日本スポーツ振興
センター法の一部を改正する法律案」という法案は、
みんなの党として初めて党議拘束を外しました。
この法案はいわゆる「toto」というサッカーくじの
適用範囲を拡大して売上げ増加を狙うものです。
公営ギャンブルの拡大の法改正ということです。
こんな法改正は、選挙の時の公約とは当然無関係です。
みんなの党の基本政策や理念ともやはり無関係です。
そもそも党議拘束をかけることにムリがあります。
公営ギャンブルを是とするか非とするかというのは、
個人の良心や倫理観に関わる問題だと思います。
党の方針を決める必要はないと思います。
みんなの党以外の全政党が党議拘束をかけるなかで、
みんなの党は党議拘束を外し、自由投票にしました。
私としては公営ギャンブルを拡大することが、
社会的に望ましいこととは思えなかったため、
採決のときには反対させてもらいました。
この手の公営ギャンブルは、概ね天下りとセットです。
変な利権が増えることにつながる恐れだってあります。
党として賛成に回らなくて良かったと思っています。
「党議拘束を緩和する」というのは小さな改革です。
国会の外部の人にとっては、重要性もわかりにくく、
あまり人気はないでしょう。
しかし、国会のおかしな慣行のひとつではあります。
弊害を生んでいる側面も、有識者が指摘しています。
小さな一歩ですが、前進だと信じたいと思います。