十数年ぶりに途上国援助に関する本を手に取り、
ラインマーカーで線を引きながら読んだ部分を
飛ばし読みしていて再発見がありました。
そこに「すべてを知らなくてもよい」という題で
開発分野で使われる次の言葉が出てきます。
・optimum ignorance=適度の無視
・adequate imprecision=適切な不適切さ
*ご参考:野田直人「開発フィールドワーカー」
築地書館、2000年
*著者の日本語訳をそのまま記載しました。
著者は途上国の住民参加型の植林の専門家で、
ネパール、タンザニア、ケニア等に駐在して、
現場で働いてきた方で、業界では有名です。
「適度の無視」や「適切な不適切さ」というのは、
次のようなケースを指しています。
1)途上国ではデータ収集に時間と手間がかかる。
予算も人員も時間も制約がある。
2)そのため完璧なデータがそろうことはない。
逆に完璧なデータを待つと手遅れになる。
3)それでも日々の現場で結果を出すためには、
不十分な情報でも、一定の信頼性があれば、
それに基づいて前に進まなくてはいけない。
ほどほどの情報で仕事をする必要がある。
といった状況のことを指しています。
こういう考え方は、途上国で仕事をした人なら、
何となく理解できると思います。
こういう「ほどほど」発想は私の肌になじみ、
行動パターンに染み込んでいます。
特に国会議員の仕事というのは、ほとんどの場合、
不十分な情報や知識に基づいて判断せざるを得ず、
「適度の無視」や「適切な不適切さ」の感覚は、
必須のものだと思います。
昨日の衆議院本会議にかかった法案だけでも、
再生医療、薬事法改正、自動車事故に関わる刑法、
武装警備員の乗船に関する法律など多岐にわたり、
すべての法律を詳しく理解するのはムリです。
昨日の4本の法律もだいたい理解できる程度です。
自分の専門外の法案を詳しく勉強しようとしたら、
時間がいくらあっても足りません。
私にとっては、まず国対委員長の仕事が最重要で、
議院運営委員の仕事も同じくらいに重要です。
次に幹事長代理としての党務も優先事項です。
さらに政策の勉強もしなくてはいけないですし、
昨日は都内某区の区議選挙の応援に行ったり、
党本部の選対委員としての業務もあります。
いろんな仕事にたずさわり、多様な情報が必要で、
仕事に関するすべての情報を得るのは不可能です。
ある程度は「ほどほど」で済ますしかありません。
国会内で各種市民団体が「院内集会」を開きます。
原発問題から、秘密保全法まで、多種多様な会合に
ぜんぶ出席していたら体がもちません。
それから業界団体やNPO、学術団体等が主催する
シンポジウムや講演会も興味深いものがありますが、
ぜんぶ出るわけには行きません。
各国の大使館から独立記念日等のお誘いが来ますが、
全部出ていたらそれだけで1年の半分は埋まります。
各種の面会依頼に全部対応することなど不可能です。
そこで大事なのは、会う相手も、出席する会合も
「ほどほど」に絞って数を減らすことです。
議員連盟の加入数もそうとうセーブしています。
情報や知識も必要以上に詰め込むことはせずに、
自分にとって本当に必要だと思うことに絞り、
いわば「ほどほど」の知識を身に着けようと、
日々心がけています。
若い頃に途上国の開発フィールドワーカーとして、
基礎的なトレーニングを受けた経験やノウハウが、
意外に今の仕事に役立っているのかもしれません。
引用元http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog