2015年4月 1日 (水)
年度が改まり、スタートの時期です。
昨年度は私には最悪の一年でしたが、
そろそろ気分転換したい時期です。
そんな時に最良の本に出会いました。
これまでに読んだ政治関係の本の中で、
ベスト3に入るおもしろさです。
書名は「火と灰:アマチュア政治家の
成功と失敗」という地味な本です。
大型書店でもあまり見かけない本です。
知り合いの大学の先生からいただいて、
おもしろかったので一気に読みました。
著者は政治学者にして元政治家である、
マイケル・イグナティエフという人物。
カナダで長く政権にあった自由党に属し、
自由党が野党時代に党首を務めました。
ハーバード大学の政治学の教授でしたが、
自由党関係者に口説かれて出馬を決めて、
連邦議会議員を2期(5年)務めました。
議員歴は短いですが、党首選に勝利し、
解散・総選挙に党首として臨みました。
しかし、自由党は大敗。自分は落選。
政治学者としては成功を収めましたが、
党首としては結果を残せませんでした。
その経験を踏まえて書かれた本です。
落選したばかりの私には親近感が持て、
うなずける点がとても多かったです。
著者の問題意識に共感できる点が多く、
国はちがっても考えることは一緒です。
選挙にしても、議会での議論にしても、
驚くほどカナダと日本は似ています。
日本政治が特殊ではないとわかります。
もっともカナダの自由党は、選挙の後、
支持率がだいぶ回復しつつあります。
日本の民主党とちょっとちがいます。
落選後の環境の変化や落胆の度合い等、
共感できるところがたくさんあります。
落選した人には必読の本です。
落選してない人にも読んでほしいです。
政治や選挙、マスコミ報道のあり方等、
いろいろと参考になります。
とても良い本で翻訳も読みやすいのに、
出版社が地味なので書店で見ません。
もっと読まれるべき本だと思います。
おもしろかった箇所を抜き出します。
政治に関心のある方はぜひご一読を!
*ご参考:マイケル・イグナティエフ著
「火と灰:アマチュア政治家の成功と失敗」
風行社、2015年
【以下、同書から抜粋】
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近頃はデモクラシー諸国において、ほとんどの政治家が不評をかっている。この事態を改善するためになしうることはあまりないように思われる。政治は紛れもなく汚くて、情け容赦のない、好戦的な仕事であり、臆病者には向いていないのである。
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→著者はそれでも政治は必要だと言います。
政治の不在はさらに悪い状態だからです。
あきらめない、失敗を恐れない、ことを、
著者は強く訴えます。
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わかったことは、元政治家ほどみじめな元はないということである。特に落選した政治家ほど。電話はぴたりと鳴らなくなった。(中略)
私の運命を決めたのは有権者である。彼らが下した評決を受け入れ、次の仕事に取りかかるのが、私の役目なのだ。
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→まったく同感です。わかります。
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敗北は明晰さをもたらすとともに解放をももたらす。予想もしなかったときに、自由を取り戻すのである。失敗に対するもっとも驚くべき反応は、ほっとしたことである。
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→これも何となくわかります。
将来の見通しがまったくないのは、
自由ということでもあります。
これからの人生で失敗する可能性も、
成功する可能性もあることでしょう。
しかし、大きな失敗を何度も経験し、
だんだんと耐性が強くなってきます。
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あらかじめどんなことが待ち受けているかを知ることはできない。だ が現実には、人生において予見能力が欠けているのは天恵なのだ。思い切ってやることを恐れてはならない。失敗することを恐れてはならない。失敗は不名誉だ という考えから解放されるのなら、失敗してもくじけないだろうし、成功しても増長することはないだろう。成功のために努力をしようというのなら、失敗して もどんな言い訳もせず、なによりも運命を平静に受け入れること。自分自身でどうにかすることができる要素―勇気、意志、決断、ユーモア―はつねにコント ロールできるが、公共的な競技場に足を踏み入れると自分ではコントロールできない諸力が働く。政治的キャリアは運命の女神フォルツゥーナによって決められ ているので、彼女が背を向けたとしても運命を呪っても仕方がない。運命をコントロールできると勘違いしてはならない。それこそ傲慢というものなのだ。
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→そうはいっても失敗は怖いですが。
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政治はまた着実なキャリアという意味での専門職でもない。政治生活 はあっという間に覆されるので、前もって生活の基礎を築いておいて、政治を離れた後に新しい生活を始められるようにしておく必要がある。負ける時の心構え ができていることが、誠実であり続けるための最善の保証なのである。
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→食べていける資格や経験のない私など、
この点で困っている真っ最中です。
最後に著者は、マックス・ヴェーバーの
「職業としての政治」の引用をもって、
締めくくります。
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政治とは情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじ わっじわっと穴をくり貫いていく作業である。不可能事を目指して粘り強くアタックしないと成功は覚束ない。自分の理想に比べて現実の世の中が---自分の 立場から見て---どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず」と言い切る自信のある人間。そ ういう人間だけが政治への天職を持つ。
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さあ、今日からがんばろう。