政府は、学生の学費や生活費などを支援する日本学生支援機構の貸与型奨学金について、保証人制度(人的保証)を廃止し、学生が保証機関に保証料を支払う制度(機関保証)に一本化することを検討している。保証人の負担をなくすとともに、奨学金制度の財政安定化を図るのが狙い。だが、全ての学生に保証料負担が生じるため政府内で慎重論も根強く、調整が難航する可能性もある。【大久保渉】
「(奨学金利用者の)自己破産が急増している。救済策が不十分なのは明らかだ」
6日の参院予算委員会で、共産党の吉良佳子参院議員が学生の救済措置拡充を求めたのに対し、柴山昌彦文部科学相は「慎重な検討が必要」と説明。返済の免除などを行えば奨学金制度の財政運営に悪影響を及ぼす恐れがあるためで、奨学金のあり方を巡って激しい論戦が交わされた。
大学や短大、専門学校などの学生で奨学金の利用者は2004年度で約83万人だったが、利用条件の緩和や貸出枠の拡大に伴って増加し、ここ数年は130万人前後で推移。17年度は学生全体の37・2%を占めた。2・7人に1人が奨学金を受け取り、学生生活を送っている計算だ。
一方、卒業後に安定した職に就けないなど経済的な理由で返済が滞るケースも増えている。返済が遅れたり、毎月の返済額圧縮など条件変更をしたりした「リスク管理債権」は17年度で5940億円に上り、08年度の1・8倍に膨らんだ。返済できずに本人が自己破産に追い込まれた件数は17年度で2447件となり、2年連続で2000件を超えた。
奨学金の原資には国のお金が入っており、返済不能額が積み上がって国が穴埋めすれば国民負担が生じる。こうした事態を避けるため政府内で検討されているのが、保証人制度の廃止と機関保証への一本化だ。
現行制度では貸与型奨学金を利用する際、学生は保証人を立てるか、保証機関に加入するかを選択できる。しかし、晩婚化で収入の少ない高齢の保証人が増え、肩代わりで返済に窮した保証人が自己破産に追い込まれることなどが社会問題化。機関保証なら保証人が不要なほか、保証機関が確実に返済するため、国にとって奨学金制度の財政を安定化させるメリットがある。
財務省は機関保証への一本化を文科省に提案し、昨年末に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では「一本化も視野に検討を行う」との方針を明記。財務省幹部は「大学を卒業すれば高収入の仕事に就け確実に奨学金を返せる時代ではなくなった」と指摘する。20年度をめどに制度を一本化したい考えだ。
だが、機関保証に一本化した場合、将来完済できる見込みの学生も含めて全ての利用者が保証料を納めなければならなくなる。現行制度では奨学金が月5万円の場合、保証料は月約2000円。大学在学の4年間で保証料の負担総額は計約10万円になる。また、保証協会が肩代わり返済しても学生は協会に対して返済義務を負うため、返済困難に陥った学生の状況が改善するわけでもない。
文科省は3月中にも有識者会議を設置して機関保証への一本化に関する議論を開始する方針だ。しかし、文科省内では「学生の負担が重くなるのは問題で、一本化ありきではない」(高等教育局幹部)との声が根強く、議論は曲折も予想される。
◇奨学金の保証制度
日本学生支援機構の貸与型奨学金は、保証人を選任する人的保証と、学生自身が毎月一定の保証料を保証機関である「日本国際教育支援協会」に支払う機関保証のどちらかを選択する。人的保証では、学生とともに返済義務を負う連帯保証人(父母)と、学生や連帯保証人が返還できなくなった際に代わって返済する保証人(親族)を1人ずつ選任する必要がある。機関保証は、意欲があっても親族がいない学生らを支援するため2004年度に創設された。18年度は約51%が人的保証で約49%が機関保証。
貸与型奨学金には1種(無利子)と、2種(有利子)があり、平均貸与総額は1種が241万円、2種は343万円。学生は卒業後に返済する必要があり、重い負担になっている。』
今のような時代保証人になって貰うのが大変です。
私の時は、保証人は60歳迄で無いと認めて貰えなかったと思います。
奨学金を払わずに上手く逃げた人物もいました。