初当選したばかりの新人議員の皆さまへ【後編】
初当選したばかりの新人議員の皆さまへ【後編】
僭越ですが、前回に引き続き、統一地方選で当選したばかりの新人議員の皆さんへ贈る言葉です。
5.政治の世界は「十年多角決済」
誰から聞いた言葉なのか、どこかで読んで知った言葉なのか、忘れましたが、「政治の世界は十年多角決済」という言葉を聞き、妙に納得しました。目先の短期的な利益で動いてはいけない。陰徳を積むことが、あとあと自分の役に立つ、という意味です。逆に不必要な敵を作ってしまうと、何年後かに思わぬところで逆襲されることもある、という意味でもあります。
政治の世界で出世する人は、細かいところをよく見ています。目立たないところで地道に仕事をしていたり、組織のために尽くしていたら、意外と上司は見てくれているものです。
私も地味な国会対策畑を10年以上務めてきましたが、地道にやっていても上司は意外と見てくれているものだと思います。逆に表面的に目立つかっこいい仕事ばかりやりたがる政治家は、本人が思っているよりも周囲は評価していないことも多いです。好みの問題かもしれませんが、「人知らずしてうらみず、また君子ならずや」という心がまえが大切だと思います。
6.敬意をもって接する
誰に対しても敬意をもって接するというのは、当たり前のことですが、意外と実践するのがむずかしいことです。議員になると役所の人はとても丁寧に接してくれます。周囲の人が「〇〇先生」と呼ぶようになるでしょう。ここで調子に乗らずに、平常心を保ち、誰に対しても傲慢にならず、卑屈にならないことは難しいことです。
私自身もどこまで実践できているか自信がありません。自分では傲慢でないつもりでも、「あいつは当選したら急に態度が大きくなった」などといわれるものです。なるべく腰を低くしようと心がけていると、「もっと堂々としろ」とか、「貫禄がない」とか、「政治家オーラがまったくない」などといわれます。背筋をはって堂々としようと心がけていると、横柄だと思われることもあるかもしれません。バランスが難しいですが、意識することは大切です。
議員の中には、役所の人が下手に出るので、役人をどなりつけたり、些細なことで激高したりする人もいます。実際に自分の目で何人も見てきました。目の前の担当者の責任ではなく、トップの政治家の責任なのに、目の前の担当者をどなりつけたり非難したりする政治家もいます。
政治家と行政官の関係は、本来は上下関係ではなく、協働関係です。それを勘違いして、「政治主導だから政治家のいうことを役人は何でもきけ」みたいな態度をとる政治家もいます。そういう政治家にはならない方がよいと思います。政治家と行政官は「公益に奉仕するプロフェッショナル」としてお互いに敬意と尊敬の念をもって接するべきだと思います。立場は異なっても、公共の利益のために働いているという点は一緒です。
7.「御用聞き」に終わらず、「政策起業家」をめざす。
お世話になった政治学者の先生の受け売りです。地方議員は「御用聞き」で終わりがちですが、細かい陳情を「政策」に昇華・抽象化していくことができる政治家が求められます。
たとえば、地元の人に「家の前の道路に穴ぼこができたから補修してくれ」といわれ、穴ぼこを埋めるだけで終わったら、単なる「御用聞き」政治家です。本来は行政がやるべきことを議員が代わりにやっただけなので、やはり「御用聞き」レベルです。
しかし、穴ぼこを埋めた上で、「この道路に穴があいたということは、同じようなことが市内各所で起きているんじゃないだろうか?」「道路補修の予算が足りていないじゃないか?」「道路補修の体制はどうなっているのか?」「市道の場合、県道の場合、国道の場合と、どのように調整して補修しているんだろうか?」などと、小さな問題を抽象化して、大きな解決策を考えることができれば、立派な「政治家」です。さらに「穴があいてから補修する」よりも「穴があく前に更新してメンテナンスする」ための予防策を提案・実現できれば、「政策起業家」といってもよいでしょう。
本来は「道路の穴ぼこをなおすために市役所の窓口に申し入れる」というのは、議員じゃなくてもできる仕事です。自治会や役所の窓口に相談しても解決できるケースが多いでしょう。議員でなければできないことは、より大きな問題へと想像力を働かせ、問題発生を未然に防ぐ施策を考えることだと思います。
8.永田町の箴言「一年生議員の仕事は二年生になること」
永田町でよくいわれる言葉に「一年生議員の仕事は二年生になること」というのがあります。次の選挙に負けないように、日頃から地元活動に力を入れろ、という意味です。
運や風で1度当選する人は多いですが、2度、3度と連続して当選するのは難しいものです。今回の統一地方選では立憲民主党に少し風がふいていたと思います。正直いって「立憲民主党の公認だけで当選した」という新人議員はたくさんいると思います。
4年後の選挙は今回より厳しいという前提に立ち、次の選挙に向け、議会活動を行い、議会報告をポスティングしたり、議会報告会を定期的に開いたり、地元行事に出たりと、地道な活動を心がける必要があります。政策の勉強や議会活動と地元活動のバランスは難しいですが、すべてに力を入れなくてはいけません。
知事や市長といった地方自治体のトップであれば、1期の4年間でかなりの実績を上げることも不可能ではありません。しかし、議員というのは、唯一無二の存在ではありません。何十人もいる議員の中の一人が、1期4年間で華々しい実績をあげるというのは不可能に近いと思います。
議員は2,3期と続けて経験を積むことで知識を深めより良い仕事ができるようになると思います。永田町では衆議院1~3期までは「若手」と呼び、衆議院4期目から「中堅」と呼びます。衆議院議員の場合でいえば約10年たってやっと中堅です。
私はいま4期目でまだまだ未熟なところも多いですが、ある程度は仕事のやり方も覚えて、1期目や2期目の頃よりも影響力のある仕事ができている実感があります。そしてまだまだやりたいことがあります。議員の仕事を1期で終わるのは本当にもったいないと思います。連続当選して経験を積むことが、より良く社会に貢献する道だと思います。そのためにも「一年生議員の仕事は二年生になること」ということを肝に銘じておくことをお薦めします。
僭越ですが、前回に引き続き、統一地方選で当選したばかりの新人議員の皆さんへ贈る言葉です。
5.政治の世界は「十年多角決済」
誰から聞いた言葉なのか、どこかで読んで知った言葉なのか、忘れましたが、「政治の世界は十年多角決済」という言葉を聞き、妙に納得しました。目先の短期的な利益で動いてはいけない。陰徳を積むことが、あとあと自分の役に立つ、という意味です。逆に不必要な敵を作ってしまうと、何年後かに思わぬところで逆襲されることもある、という意味でもあります。
政治の世界で出世する人は、細かいところをよく見ています。目立たないところで地道に仕事をしていたり、組織のために尽くしていたら、意外と上司は見てくれているものです。
私も地味な国会対策畑を10年以上務めてきましたが、地道にやっていても上司は意外と見てくれているものだと思います。逆に表面的に目立つかっこいい仕事ばかりやりたがる政治家は、本人が思っているよりも周囲は評価していないことも多いです。好みの問題かもしれませんが、「人知らずしてうらみず、また君子ならずや」という心がまえが大切だと思います。
6.敬意をもって接する
誰に対しても敬意をもって接するというのは、当たり前のことですが、意外と実践するのがむずかしいことです。議員になると役所の人はとても丁寧に接してくれます。周囲の人が「〇〇先生」と呼ぶようになるでしょう。ここで調子に乗らずに、平常心を保ち、誰に対しても傲慢にならず、卑屈にならないことは難しいことです。
私自身もどこまで実践できているか自信がありません。自分では傲慢でないつもりでも、「あいつは当選したら急に態度が大きくなった」などといわれるものです。なるべく腰を低くしようと心がけていると、「もっと堂々としろ」とか、「貫禄がない」とか、「政治家オーラがまったくない」などといわれます。背筋をはって堂々としようと心がけていると、横柄だと思われることもあるかもしれません。バランスが難しいですが、意識することは大切です。
議員の中には、役所の人が下手に出るので、役人をどなりつけたり、些細なことで激高したりする人もいます。実際に自分の目で何人も見てきました。目の前の担当者の責任ではなく、トップの政治家の責任なのに、目の前の担当者をどなりつけたり非難したりする政治家もいます。
政治家と行政官の関係は、本来は上下関係ではなく、協働関係です。それを勘違いして、「政治主導だから政治家のいうことを役人は何でもきけ」みたいな態度をとる政治家もいます。そういう政治家にはならない方がよいと思います。政治家と行政官は「公益に奉仕するプロフェッショナル」としてお互いに敬意と尊敬の念をもって接するべきだと思います。立場は異なっても、公共の利益のために働いているという点は一緒です。
7.「御用聞き」に終わらず、「政策起業家」をめざす。
お世話になった政治学者の先生の受け売りです。地方議員は「御用聞き」で終わりがちですが、細かい陳情を「政策」に昇華・抽象化していくことができる政治家が求められます。
たとえば、地元の人に「家の前の道路に穴ぼこができたから補修してくれ」といわれ、穴ぼこを埋めるだけで終わったら、単なる「御用聞き」政治家です。本来は行政がやるべきことを議員が代わりにやっただけなので、やはり「御用聞き」レベルです。
しかし、穴ぼこを埋めた上で、「この道路に穴があいたということは、同じようなことが市内各所で起きているんじゃないだろうか?」「道路補修の予算が足りていないじゃないか?」「道路補修の体制はどうなっているのか?」「市道の場合、県道の場合、国道の場合と、どのように調整して補修しているんだろうか?」などと、小さな問題を抽象化して、大きな解決策を考えることができれば、立派な「政治家」です。さらに「穴があいてから補修する」よりも「穴があく前に更新してメンテナンスする」ための予防策を提案・実現できれば、「政策起業家」といってもよいでしょう。
本来は「道路の穴ぼこをなおすために市役所の窓口に申し入れる」というのは、議員じゃなくてもできる仕事です。自治会や役所の窓口に相談しても解決できるケースが多いでしょう。議員でなければできないことは、より大きな問題へと想像力を働かせ、問題発生を未然に防ぐ施策を考えることだと思います。
8.永田町の箴言「一年生議員の仕事は二年生になること」
永田町でよくいわれる言葉に「一年生議員の仕事は二年生になること」というのがあります。次の選挙に負けないように、日頃から地元活動に力を入れろ、という意味です。
運や風で1度当選する人は多いですが、2度、3度と連続して当選するのは難しいものです。今回の統一地方選では立憲民主党に少し風がふいていたと思います。正直いって「立憲民主党の公認だけで当選した」という新人議員はたくさんいると思います。
4年後の選挙は今回より厳しいという前提に立ち、次の選挙に向け、議会活動を行い、議会報告をポスティングしたり、議会報告会を定期的に開いたり、地元行事に出たりと、地道な活動を心がける必要があります。政策の勉強や議会活動と地元活動のバランスは難しいですが、すべてに力を入れなくてはいけません。
知事や市長といった地方自治体のトップであれば、1期の4年間でかなりの実績を上げることも不可能ではありません。しかし、議員というのは、唯一無二の存在ではありません。何十人もいる議員の中の一人が、1期4年間で華々しい実績をあげるというのは不可能に近いと思います。
議員は2,3期と続けて経験を積むことで知識を深めより良い仕事ができるようになると思います。永田町では衆議院1~3期までは「若手」と呼び、衆議院4期目から「中堅」と呼びます。衆議院議員の場合でいえば約10年たってやっと中堅です。
私はいま4期目でまだまだ未熟なところも多いですが、ある程度は仕事のやり方も覚えて、1期目や2期目の頃よりも影響力のある仕事ができている実感があります。そしてまだまだやりたいことがあります。議員の仕事を1期で終わるのは本当にもったいないと思います。連続当選して経験を積むことが、より良く社会に貢献する道だと思います。そのためにも「一年生議員の仕事は二年生になること」ということを肝に銘じておくことをお薦めします。