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山内 康一
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山内康一ブログ 『 蟷螂の斧 』
政治の動きと分析
枝野代表の代表質問ポイント2020年 01月22日
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本日(1月22日)の衆議院本会議は、政府四演説に対する枝野幸男代表の代表質問でした。とても良い代表質問だったと思います。しかし、おそらくテレビのニュースでは「桜を見る会」とか「カジノ汚職」とかの部分が抜粋されて放送されるだけだと思います。
しかし、本当に重要なポイントは、立憲民主党がめざす社会像やビジョンをこれまで以上に踏み込んで発言した点にあります。私が重要だと思う部分を抜粋しながら、「なぜ重要か?」も含めて解説させていただきます。
枝野代表は「安倍政権に代わるもう一つの政権の選択肢を示します」といって、最初に出てきた第1のキーワードは「支え合う安心」でした。
新自由主義が席巻した後の自民党政権の社会保障政策は、「自助努力」や「自己責任」という発想が強く打ち出されてきました。それに対するオルタナティブは「支え合い」です。代表質問では次のように言います。
老後も、子育てや教育も、かつては個人や家庭に委ねられていました。しかし、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任に帰すのでは不安が広がるばかり。今こそ、自己責任論から脱却し、社会全体で「支え合う安心」の仕組みを構築しましょう。私は、これこそが、政治の最大の役割であると明確に位置づけ、その役割を担う政権を作ります。
第2のキーワードは「豊かさの分かち合い」です。むかしからの言い方だと「再分配」です。代表質問で次のように言います。
昭和の高度成長期は、「成長するから分配できる」時代でした。しかし、バブル崩壊後の平成期は、大企業が成長して大きな利益をあげても、賃金や下請などに分配される部分や国内投資に回る部分が限定され、内部留保が積み重なるばかり。適正な分配がなされないために可処分所得が伸びず、経済の過半を占める内需が成長しないことで、全体として経済成長の足を引っ張っています。この実態から目を背けても経済の安定的な発展はありません。「分配なくして成長なし。」私は、社会状況の変化を踏まえて経済政策の根本を転換し、「豊かさの分かち合い」を進めることで、一人ひとりが豊かさを実感できる社会と、内需が着実に成長する経済を実現します。
かなり思い切ったことをいいました。アベノミクスと対照的な経済政策を象徴するのが「分配なくして成長なし」というフレーズです。これは安倍政権の「成長してから分配」という発想からの大転換を示します。
アベノミクスのトリクルダウン(したたり落ちる経済効果)は、「まず成長、その後で分配」という発想でした。しかし、実際には一般の労働者には分配されませんでした(労働分配率は低下しました)。
アベノミクスとは真逆の方向性を示すのが、「分配なくして成長なし」という方向性です。おそらく経団連や日本経済新聞社は反対でしょう。しかし、経団連や経産省の主張をそのまま採用したアベノミクスでは、経済はあまり成長しなかったし、実質賃金は低下し、非正規雇用ばかりが増え、最低賃金は先進国最低という状況に陥りました。
第3のキーワードは「責任ある充実した政府」です。これは「小さな政府」へのオルタナティブです。中曽根行革以来、新自由主義的な行政改革が続き、「小さな政府」が美徳とされ、行政サービスの民営化・市場化・外注化が進んできました。
もともと日本は先進国でいちばん公務員の数が少ない国でしたが、新自由主義的な「小さな政府」改革により、さらに政府が小さくなりました。今では行き過ぎたスリム化により「小さすぎる政府」になっています。「小さすぎる政府」のもとで公共サービスの質の低下、セーフティネットの弱体化といった弊害が目立つようになりました。代表質問で枝野さんは次のように述べます。
昭和の終わりごろから、多くの先進国で、「競争を加速することが正義、政府は小さいほど良い」という方向に大きく傾きました。日本では、「民間でできることは民間で」「小さな政府」などという言葉が、絶対的な正義として語られました。しかし、現状は、「民間でできないことまで民間へ」。背負うべき役割まで放棄した「小さすぎて無責任な政府」になっています。民営化の先で生じた、かんぽ生命の問題。大学入学共通テストの民間丸投げ。公営に限定されてきたギャンブルを民間開放しようとしたカジノ。さらには非正規化と定員抑制を進めすぎた挙句、長時間労働が常態化して正規でも希望者が激減し、非正規が集まらなくなっている教職員の世界。常勤職員が不足して大規模災害対応がパンクしている地方自治体。介護サービスの不足や待機児童の問題も、民間では対応できない広い意味での政府の仕事です。今こそ、「小さな政府」幻想から脱却し、必要なことには「責任ある充実した政府」を、そして「民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ」「まっとうな政治」を取り戻します。
これは30年以上も続いてきた新自由主義的な「小さな政府」路線からの脱却宣言です。「責任ある充実した政府」の再構築が、公共セクターを再生し、社会の分断を修復し、支え合う社会を築きます。
さらに金融所得課税の累進化、社会保険料の負担のあり方を見直して再分配機能を強化することも重視しています。富裕層や高所得の人たちの負担は増えますが、その代わりに誰でも安心できる社会保障制度を整備することにつながります。いま高所得の人でも、いつなんどき事故や病気、災害で収入を失い、弱い立場になるかわかりません。すべての人にとって有効なセーフティネットを強化することは、所得レベルに関係なくすべての人の安心につながります。
今まで枝野代表の演説は数え切れないくらい聴いてきましたが、今日の代表質問で示されたキーワードほど明確に将来のビジョンを語ったものは少ないと思います。枝野幸男代表を先頭に野党で連携して政権交代しなくてはいけないと強く思います。