■「二人で歩いた幾春秋」(1962年・日本)
監督=木下恵介
主演=高峰秀子 佐田啓二 久我美子 山本豊三 倍賞千恵子
「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」で、主人公の母親を演じる樹木希林が「あんたの卒業証書は私の財産」と言う。確かに子供によい教育を受けさせることは何かとお金がかかるもの。二児の父になった今、それを身をもって実感している(泣)。「東京タワー」を観たときは、樹木希林の言葉ひとことだけだったのもあり、「大変だったんだろうな。」くらいしか思えなかった。しかし、この「二人で歩いた幾春秋」で夫婦が貧しいながらも京都大学に子供をやる姿を見て感じたのは、紛れもなく”親のありがたみ”。そして今頑張っている自分が励まされたような気持ちになった。卒業式で手を取り合って涙する夫婦に、思わずジーンとしてしまった。正直なところ観る前は、自分はこの映画に共感できる部分があるんだろうかと不安だったのだが。
戦争が終わって道路工夫として働くことは楽な生活でないことは想像できる。それに映画で観る限りは決して敬われる仕事でないことがわかる。映画の端々に懸命に生きる庶民が耐えながら歯を食いしばる姿が描かれる。一昨年、木下恵介監督作「この天の虹」を観た。八幡製鉄所を舞台にしたこの映画で、木下恵介監督は「働く人々の健康と幸福を祈ります」とのナレーションでこの映画を終わる。悩みや苦労を抱えても地道に頑張る庶民をねぎらってくれる映画。「二人で歩いた幾春秋」も共に歩く夫婦へのねぎらいの物語でもある。監督の視線はいつも優しい。
夫婦を物語の中心にでんと据えていることと、長い期間が描かれていることで、細部が語り尽くせていない部分がある。それゆえにやや物足りない。どうして息子は嘘をついてまで京都に行く必要があったのだろう。倍賞千恵子(初々しい!)演ずる恋人とのエピソードももっと見たかった。佐田啓二が突然家を飛び出して、初恋の人久我美子と旅館で会う場面。これもちょっと解せないよなぁ。だが、この映画で日々頑張ってる自分を勇気づけられたのは確か。それは他の映画では得られない収穫だった気がする。
監督=木下恵介
主演=高峰秀子 佐田啓二 久我美子 山本豊三 倍賞千恵子
「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」で、主人公の母親を演じる樹木希林が「あんたの卒業証書は私の財産」と言う。確かに子供によい教育を受けさせることは何かとお金がかかるもの。二児の父になった今、それを身をもって実感している(泣)。「東京タワー」を観たときは、樹木希林の言葉ひとことだけだったのもあり、「大変だったんだろうな。」くらいしか思えなかった。しかし、この「二人で歩いた幾春秋」で夫婦が貧しいながらも京都大学に子供をやる姿を見て感じたのは、紛れもなく”親のありがたみ”。そして今頑張っている自分が励まされたような気持ちになった。卒業式で手を取り合って涙する夫婦に、思わずジーンとしてしまった。正直なところ観る前は、自分はこの映画に共感できる部分があるんだろうかと不安だったのだが。
戦争が終わって道路工夫として働くことは楽な生活でないことは想像できる。それに映画で観る限りは決して敬われる仕事でないことがわかる。映画の端々に懸命に生きる庶民が耐えながら歯を食いしばる姿が描かれる。一昨年、木下恵介監督作「この天の虹」を観た。八幡製鉄所を舞台にしたこの映画で、木下恵介監督は「働く人々の健康と幸福を祈ります」とのナレーションでこの映画を終わる。悩みや苦労を抱えても地道に頑張る庶民をねぎらってくれる映画。「二人で歩いた幾春秋」も共に歩く夫婦へのねぎらいの物語でもある。監督の視線はいつも優しい。
夫婦を物語の中心にでんと据えていることと、長い期間が描かれていることで、細部が語り尽くせていない部分がある。それゆえにやや物足りない。どうして息子は嘘をついてまで京都に行く必要があったのだろう。倍賞千恵子(初々しい!)演ずる恋人とのエピソードももっと見たかった。佐田啓二が突然家を飛び出して、初恋の人久我美子と旅館で会う場面。これもちょっと解せないよなぁ。だが、この映画で日々頑張ってる自分を勇気づけられたのは確か。それは他の映画では得られない収穫だった気がする。