Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ゴールデンスランバー

2012-03-25 | 映画(か行)

■「ゴールデンスランバー」(2009年・日本)

監督=中村義洋
主演=堺雅人 竹内結子 吉岡秀隆 柄本明 劇団ひとり

公開当時に興味はあった。原作は読んでないけど面白そうなストーリー。他の映画を観に行った映画館で流れてた斉藤和義の「幸福な朝食、退屈な夕食」を聴いてグッときて歌詞をメモして帰った。タイトルになっているビートルズの曲は大好き。観るべき要素はあまたあったのだ。しかし、信頼できる映画仲間の「今ひとつ」のひとことで、一気に気持ちが萎えてしまってた。今頃やっと観る気になって鑑賞。うーん、なかなか面白いやん。問答無用で首相暗殺事件に巻き込まれる冒頭。いかにも人の良さそうな堺雅人のキャラが見事に生きているし、物語の重い部分を担ってくれる吉岡秀隆も存在感。キャスティングは(原作読んでる人には異論があるだろうけど)適材適所と思われる。謎の通り魔少年濱田岳、無言でショットガンをブッ放つ永島敏之、柄本明の凄み・・・役者の使い方上手いなぁ。脇役一人一人がきちんとストーリー上で見事に絡んでくる。

日本の娯楽映画は、森村誠一原作の角川映画の時代から(?)巨大な権力に立ち向かうストーリーが好きだ。しかしそうした物語は今どきの日本映画では見られなかった。「ゴールデンスランバー」では、突然首相暗殺犯に仕立て上げられてしまう主人公と同じように観客にも情報は与えられない。主人公が知らなくて観客が知ることができるのは、元恋人の竹内結子の行動くらい。だから主人公と同じように不安な状況に置かれることになる。権力に立ち向かう映画なら最近「ワイルド7」があったけど、それは立ち向かうべき相手は明確で、それをいかに攻めるのかが主眼点。「ゴールデンスランバー」は陰謀を巡らせた権力の存在は匂わせるけど姿を現すことはない。その分だけハラハラするし、ドキドキさせられる。これは原作の上手さなんだろうし、並行する二人の姿と、学生時代の思い出をうまく配置した脚本の上手さかもしれない。斉藤和義の音楽はクールでかっこいいし、映画の前半は僕はかなり満足できていた。

映画後半になって、白黒つかない結末とやや都合のいい展開に次第に気持ちが冷めてきたのも事実。学生時代からかなり経っているのに河原に長いこと放置されたカローラが動くこと、街中のマンホールに花火を仕込むクライマックスはそれはちょっとどうなの?と冷静になってしまった。多分、映画仲間が今ひとつ納得できなかったのはこれが理由だ。しかし、この物語は青春時代のノスタルジーを背景に持つファンタジーだ。この映画が求めたのは陰謀の裏側を突き止める明快な結末よりも、あの頃の思いを今に重ねる大人の懐古なんだろう。僕が残念だったのは、ビートルズの楽曲が謎解きに生かされなかったこと。それを物語上期待していたんだよね。”かつて帰るべき場所があった”という歌詞を、後戻りできない吉岡秀隆の姿と、学生時代ではない今の自分たちに重ねているのは上手いと思うけど。いちばんグッときたのは、実家に押しかけたマスコミを伊東四朗演ずる父親が声高にあしらう場面。「オレは生まれたときからあいつを知ってるんだ。あいつは犯人じゃない。」・・・これぞ愛です。



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