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◼︎「殺しのドレス/Dressed To Kill」(1980年・アメリカ)
監督=ブライアン・デ・パルマ
主演=マイケル・ケイン アンジー・ディッキンソン ナンシー・アレン
ごめんよ、ネタバレ覚悟で書く。ブライアン・デ・パルマ監督作品にたまに出てくる夢オチ場面。「キャリー」とか、「ファム・ファタール」とか、本作「殺しのドレス」にもショッキングで意味深な夢オチ場面が出てくる。僕らは普段嫌な夢をみても現実に戻ってこられる。しかし。デ・パルマが描く夢オチの恐怖感は、その後もずっと引きずりそうなものばかり。「キャリー」のラスト、ベッドで泣き叫ぶエイミー・アービングは、あの後同じ夢を繰り返しみたかもしれない。それはスクリーンのこっち側にいる僕らも同じこと。デ・パルマ映画で感じた恐怖感や戦慄や映画的興奮は、しばらく、いや度々思い出して引きずることになる。デ・パルマが描く夢は映画の中でも外でも冷めないのだ。
その冷めない恐怖を感じる映画って、そもそもヒッチコックがその最たるもの。ヒッチ映画を観た僕らは、現実世界でカラスが群れているのを見るのが怖くなったり、静まり返った夜中にシャワーを浴びるのがなんか落ち着かなかったり、窓から見える他の家の様子が変に気になったり。デ・パルマが受け継いでいるのはテクニックや作風だけじゃないのだ。
「殺しのドレス」は、ブライアン・デ・パルマ監督がヒッチコックの「サイコ」へのオマージュを込めたサスペンス。冒頭の刺激的なシャワーシーン、台詞なしにグイグイ引っ張る美術館の謎の追っかけ、行きずりの男性との情事、殺人、それを目撃したコールガール、事件の真相を探ろうとする彼女と少年、そして真相へ。犯人探しの謎解きだけを考えれば「先が読めた」という方もあるだろう。でもデ・パルマ映画の楽しみは次の展開がどう描かれるのかワクワクしたり、ドキドキすること。撮影テクニックでキャアキャア言うのは、玄人映画ファンに任せとけばいい。「殺しのドレス」は予想を超える展開こそを楽しむ映画だ。ナンシー・アレンが真相に迫るクライマックス。あのお姿はずっと観ていたくなる。大人こそ楽しめる傑作サスペンス。