
◾️「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(2020年・日本)
監督=石立太一
声の出演=石川由依 浪川大輔
2019年のあの事件後に製作続行された京都アニメーション作品。昨年の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」も素晴らしい作品だったが、今回はテレビシリーズのその後を描く完結篇。
映画冒頭、亡くなった祖母が大事にしていた手紙を孫娘が目にするエピソードが語られる。ヴァイオレットが生きた時代よりも後であるそのパートが、テレビシリーズ屈指の名エピソードの続きであることに気付かされる。マスクしてなかったら口を押さえて「あっ」と小さなさけび声をあげちゃうところだ。京アニのロゴを見るだけでも感慨深くなるのに、この数分でもう心を掴まれてしまう。テレビシリーズ本編の重要な話の部分や登場人物の過去は巧みに織り込まれていて、本作で初めてヴァイオレットの物語に触れる人でも筋の基本は理解でき、そうでない人はより深く物語を反芻できるシナリオになっている。
ストーリーは大きく二つ。入院中の死期が迫っている少年の手紙代筆のエピソードと、物語の最後を飾る「会いたい人」をめぐるエピソードだ。少年の依頼を受ける話でヴァイオレットが物事に真摯に向き合う姿を描いて、それが後半の展開に大きく絡んでくる。少年の臨終場面は思いの外長く痛々しい。会いたい人に会えなくなる辛さをこれでもか見せつける。ギルベルト少佐の母の墓参りをする場面にしても、劇中登場する戦争で若者が帰って来なかった島にしても、あの事件の後だけに、死をめぐる台詞や場面が余計に胸に突き刺さる。臨終場面が長いのは、受け止めきれない程の多くの死というスクリーンの外側の現実があるだけに、自然とこういう演出になったのではないか、と勝手に考えてしまう。
そして物語後半「会いたい人」をめぐるエピソードで、ヴァイオレットがみせる表情が心に残る。寡黙で感情を表に出さなかったヴァイオレットの違った表情、そして感情を爆発させるクライマックス。こんなヴァイオレット見たことない。
外伝やテレビシリーズでは建設中だった電波塔、電話の普及、電信技術が登場し、ヴァイオレットたちがやってきた手紙の代書という役割や郵便会社の役割が変わっていく時代の流れも効果的に描かれており、まさにラストにふさわしい。されど手紙がいかに心を伝えられるものなのかを、映画は最後に静かに語りかける。白い文字でスクリーンに映し出された短くて大切な言葉、そしてラストに映し出された切手の図案。涙が止まらなかった。マスクと涙で視界がくもって、スタッフへの思いも絡んでエンドクレジットがかすんで見えた。
最後に。決して最後まで席を立たないで。
映画冒頭、亡くなった祖母が大事にしていた手紙を孫娘が目にするエピソードが語られる。ヴァイオレットが生きた時代よりも後であるそのパートが、テレビシリーズ屈指の名エピソードの続きであることに気付かされる。マスクしてなかったら口を押さえて「あっ」と小さなさけび声をあげちゃうところだ。京アニのロゴを見るだけでも感慨深くなるのに、この数分でもう心を掴まれてしまう。テレビシリーズ本編の重要な話の部分や登場人物の過去は巧みに織り込まれていて、本作で初めてヴァイオレットの物語に触れる人でも筋の基本は理解でき、そうでない人はより深く物語を反芻できるシナリオになっている。
ストーリーは大きく二つ。入院中の死期が迫っている少年の手紙代筆のエピソードと、物語の最後を飾る「会いたい人」をめぐるエピソードだ。少年の依頼を受ける話でヴァイオレットが物事に真摯に向き合う姿を描いて、それが後半の展開に大きく絡んでくる。少年の臨終場面は思いの外長く痛々しい。会いたい人に会えなくなる辛さをこれでもか見せつける。ギルベルト少佐の母の墓参りをする場面にしても、劇中登場する戦争で若者が帰って来なかった島にしても、あの事件の後だけに、死をめぐる台詞や場面が余計に胸に突き刺さる。臨終場面が長いのは、受け止めきれない程の多くの死というスクリーンの外側の現実があるだけに、自然とこういう演出になったのではないか、と勝手に考えてしまう。
そして物語後半「会いたい人」をめぐるエピソードで、ヴァイオレットがみせる表情が心に残る。寡黙で感情を表に出さなかったヴァイオレットの違った表情、そして感情を爆発させるクライマックス。こんなヴァイオレット見たことない。
外伝やテレビシリーズでは建設中だった電波塔、電話の普及、電信技術が登場し、ヴァイオレットたちがやってきた手紙の代書という役割や郵便会社の役割が変わっていく時代の流れも効果的に描かれており、まさにラストにふさわしい。されど手紙がいかに心を伝えられるものなのかを、映画は最後に静かに語りかける。白い文字でスクリーンに映し出された短くて大切な言葉、そしてラストに映し出された切手の図案。涙が止まらなかった。マスクと涙で視界がくもって、スタッフへの思いも絡んでエンドクレジットがかすんで見えた。
最後に。決して最後まで席を立たないで。