Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

TENET テネット

2020-09-23 | 映画(た行)


◾️「TENET テネット/Tenet」(2020年・アメリカ=イギリス)

監督=クリストファー・ノーラン
主演=ジョン・デヴィッド・ワシントン ロバート・パディンソン エリザベス・デビッキ ケネス・ブラナー

あー、もう。また厄介な映画撮りやがって。

クリストファー・ノーラン監督がまた時間軸をぶっ壊したから、世間では難解、分からんと「去年マリエンバートで」を観た後のような感想や、「考えるな、感じろ」とブルース・リーのような感想が飛び交っている。大絶賛の声もあれば、拒絶反応もある。インテリ好みの理屈をこねたり、従来の娯楽映画のフォーマット破壊を繰り返してきたノーラン監督。それらは本作「TENET」でも然り。今回はエントロピーやら反粒子やら物理学の概念を持ってきたり、回文(上から読んでも下から読んでも同じってヤツね)をタイトルやキャラクター名に謎めいてチラつかせている。いち早く観て知識をかじった人々や情報サイトのライターさんの中には、お節介なコメンテイターと化している方もちらほら。観終わって語り合いたい映画で、確かに面白いんだけど、変に自分の解釈を述べたら、リピーターと化したコアなファンに袋叩きに合いそうな恐怖すら感じる。

世間が分からんとは言うけれど、決して不親切な映画ではない。導入も謎解きもきちんとしてる。そこは重要。「感じることを求める映画」とか世間は言うから、「マルホランドドライブ」並みに感じることに専念しようと覚悟して劇場に向かったんだけどなw。

予告編で観てビビッときたのは、車が横転する様子を逆回転にした映像。ほほー、今度は視覚で時間をひっくり返してくれるのか。ところがいざ本編観たら、逆向きに動く人々の中を前向きに進む人がいる。順行と逆行が映像として共存している。銃弾は銃に戻って弾痕が消え、爆発は何もなかったように収束する。クライマックスの建物破壊シーンを含む大銃撃戦まで、驚きの連続。お腹いっぱい。

もちろん予想をはるかに超えたストーリーも驚きしかない。過去と現在を行き来する回転ドア、同じ時間を前から後ろからの挟み撃ち攻撃、タイムパラドックス…。とにかく情報量が多いくせに、展開が早く、理解させてくれる時間を与えてくれない。でも、ストーリーが進むにつれて疑問だったところが鮮やかに謎解きされるのが心地よい。戦ってたあの相手って✖️✖️だったの!?逆走してきたあの車って✖️✖️が運転してたの!?テレビでメイキング映像をチラッと見たけど、あの格闘シーンは逆回しじゃなくて、逆回しに見えるように振り付けられてるんですと。

正直言うと「インセプション」の方が好きかな。あれはひねくれた話ではあるけれど、結局は愛の物語だもの。「TENET」は緻密に計算されたお膳立てが魅力の映画。その行間に人間ドラマの深さを織り込める余裕はなさそうだ。

「インセプション」は「女王陛下の007」のオマージュが露骨だったけど、今回もノーラン監督の映画好きがいろいろ散りばめられているように思える。ラストの主人公とニールの会話は「カサブランカ」のオマージュだよね!…あ、これこそお節介?


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする