◼️「アイの歌声を聴かせて」(2021年・日本)
監督=吉浦康裕
声の出演=土屋太鳳 福原遥 工藤阿須加 小松未可子
申し訳ないのだが、チラシやポスターデザイン、タイトルや流し読みしたあらすじから、ちょい萌えな青少年向け劇場アニメを想像していた。だがしかし。盛り込まれた設定やディティール、主人公をとりまく環境など、大人こそ感じて欲しい面白さがある。Filmarksを始めとした映画ファンの声と評価に後押しされて、劇場で観たのは正解。
AI技術で開発された人型ロボットシオン。人間社会でうまく適応できるかをテストすべく、周囲にはロボットとは知らされずに高校に送り込まれた。主人公は、シオン開発者である女性技術者の娘、里美。シオンはよりによって彼女のクラスに転校生として紹介された。里美を見つけたシオンはいきなり駆け寄って、「里美を幸せにする」と宣言して、高らかに歌声を響かせた。しつこくつきまとうシオンを鬱陶しく思う里美だが、シオンのまっすぐな行動が、思いがうまく伝えることができなかったクラスメートたちを結びつけていく。しかし、大人たちの事情が彼女たちに忍び寄ってくる。
お母さんが、"里美を幸せにしろ"ってプログラムして内緒にしてるって話かよ…ふーん。と早合点してはいけない。
純粋にファンタジー、青春映画として楽しむのもいい。だけど大人の目線でも共感できるポイントがたくさんある映画でもある。母親の会社での立ち位置と、失脚を望む人々との対立。企業城下町の生きにくさ。シオン奪還の行動に出るクライマックスには、この映画をナメていた自分に気づかされる。
シオンを演ずるのは土屋太鳳。ゴッちゃんとアヤの仲直りを手助けする場面では、シオンがその場で生成したと思われる歌を歌う。これが抑揚やビブラート控えめに歌っていて、AIが絞り出した感がある。これは演出だと思うけど、太鳳ちゃんが敢えてやってるならば実に上手い。一方で「今しあわせ?」と繰り返す問いかけが、だんだん人間味がついてくるようで感動的だ。対して、里美は感情の起伏を表現しなければならない難役。これを演ずるまいんちゃん、もとい福原遥が見事。2022年の朝ドラでの活躍も期待しよう。
「竜とそばかすの姫」も本作もそうだが、ディズニープリンセスの影響の大きさも思い知る。この作品が突然の ミュージカルと化す理由は、劇中出てくる里美が幼い頃から好きなディズニープリンセス的なアニメーションの存在のせい。柔道の乱取りが舞踏会のダンスになる場面は、往年のディズニーアニメのようなミラクル。かぼちゃが馬車になるようなもの。これもアニメ界の先達への愛情表現なのかも。
(ここネタバレ🤫)
アイザック・アシモフのロボット三原則に触れる台詞もあり、脚本も練られたものだと感じられる。また、コンピュータプログラムである電子の意思がネット回線に逃れて、シオンという義体を手に入れるという展開。「攻殻機動隊」好きなら、そう来たか!とニヤリとするところ。さらに、映画のラストでも里美を見守っているシオンの存在が示される。80年代外国映画好きなら、コンピュータを交えた三角関係ラブコメ「エレクトリック・ドリーム」にもつながるハッピーエンド。学校で起きていることをモニターできてないの?というツッコミどころはあるのだが、そこは置いとくとするか。
物語の結末を見届けて、ひとつひとつのエピソードの裏にあるものが理解できたら、ポンコツAIの話などと勝手に感じたことが間違いだったと思い知ることになる。予想外の良作。
AI技術で開発された人型ロボットシオン。人間社会でうまく適応できるかをテストすべく、周囲にはロボットとは知らされずに高校に送り込まれた。主人公は、シオン開発者である女性技術者の娘、里美。シオンはよりによって彼女のクラスに転校生として紹介された。里美を見つけたシオンはいきなり駆け寄って、「里美を幸せにする」と宣言して、高らかに歌声を響かせた。しつこくつきまとうシオンを鬱陶しく思う里美だが、シオンのまっすぐな行動が、思いがうまく伝えることができなかったクラスメートたちを結びつけていく。しかし、大人たちの事情が彼女たちに忍び寄ってくる。
お母さんが、"里美を幸せにしろ"ってプログラムして内緒にしてるって話かよ…ふーん。と早合点してはいけない。
純粋にファンタジー、青春映画として楽しむのもいい。だけど大人の目線でも共感できるポイントがたくさんある映画でもある。母親の会社での立ち位置と、失脚を望む人々との対立。企業城下町の生きにくさ。シオン奪還の行動に出るクライマックスには、この映画をナメていた自分に気づかされる。
シオンを演ずるのは土屋太鳳。ゴッちゃんとアヤの仲直りを手助けする場面では、シオンがその場で生成したと思われる歌を歌う。これが抑揚やビブラート控えめに歌っていて、AIが絞り出した感がある。これは演出だと思うけど、太鳳ちゃんが敢えてやってるならば実に上手い。一方で「今しあわせ?」と繰り返す問いかけが、だんだん人間味がついてくるようで感動的だ。対して、里美は感情の起伏を表現しなければならない難役。これを演ずるまいんちゃん、もとい福原遥が見事。2022年の朝ドラでの活躍も期待しよう。
「竜とそばかすの姫」も本作もそうだが、ディズニープリンセスの影響の大きさも思い知る。この作品が突然の ミュージカルと化す理由は、劇中出てくる里美が幼い頃から好きなディズニープリンセス的なアニメーションの存在のせい。柔道の乱取りが舞踏会のダンスになる場面は、往年のディズニーアニメのようなミラクル。かぼちゃが馬車になるようなもの。これもアニメ界の先達への愛情表現なのかも。
(ここネタバレ🤫)
アイザック・アシモフのロボット三原則に触れる台詞もあり、脚本も練られたものだと感じられる。また、コンピュータプログラムである電子の意思がネット回線に逃れて、シオンという義体を手に入れるという展開。「攻殻機動隊」好きなら、そう来たか!とニヤリとするところ。さらに、映画のラストでも里美を見守っているシオンの存在が示される。80年代外国映画好きなら、コンピュータを交えた三角関係ラブコメ「エレクトリック・ドリーム」にもつながるハッピーエンド。学校で起きていることをモニターできてないの?というツッコミどころはあるのだが、そこは置いとくとするか。
物語の結末を見届けて、ひとつひとつのエピソードの裏にあるものが理解できたら、ポンコツAIの話などと勝手に感じたことが間違いだったと思い知ることになる。予想外の良作。