◼️「愛のメモリー/Obsession」(1976年・アメリカ)
監督=ブライアン・デ・パルマ
主演=クリフ・ロバートソン ジュヌヴィエーブ・ビジョルド ジョン・リスゴウ ワンダ・ブラックマン
ブライアン・デ・パルマ監督初期の作品。幸せなホームパーティの夜に、愛する妻子を誘拐事件で失った主人公マイケルは、失意の日々を送っていた。数年後、事業のパートナーであるロバートと商談で訪れたフィレンツェの教会で、彼は亡き妻エリザベスにそっくりの女性サンドラに出会う。滞在を延長したマイケルはサンドラに近づき結婚を申し込む。その出会いがもたらすのは幸福なのか、それとも。
詳しくは触れないが、ヒッチコック好きのデ・パルマが「めまい」を狙ったのは間違いない。またサンドラがマイケルの自宅で妻子の肖像画を見上げる場面は「レベッカ」を思わせもするし、手にする凶器や組み合う姿は「ダイヤルMを廻せ!」、冒頭のパーティ場面で給仕が拳銃を隠し持っているのをチラッと見せるのは「汚名」あたりを意識しているのかも。
肝心のストーリーは主人公の思い詰めた気持ち(原題にあるobsession:頭から離れないこと、強迫観念、妄想)グイグイ引っ張られるのだが、ところどころ合点がいかないと感じるところも。地味ながらもデ・パルマらしさを随所に感じられる作風は楽しい。
ラストに出てくる、二人の周りを回り続けるカメラワーク。他の情報がない分だけ、お互いの思いがぶつかり合う二人の姿だけに観客が集中できる効果がある。デ・パルマ監督は後に「キャリー」でこのカメラワークを登場させる。あの場面は画面の二人に観客の意識を集中させることで、次に起こる出来事をよりショッキングにする仕掛けの一つだった。そっちを先に観ている僕は、「愛のメモリー」でカメラが回り始めた瞬間、何か次に起こるのかも…!?と過剰な期待をしてしまったのでしたw