◼️「ロッキーVSドラゴ ROCKY IV/Rocky IV:Rocky vs Dorago」(2021年・アメリカ)
監督=シルベスター・スタローン
主演=シルベスター・スタローン ドルフ・ラングレン カール・ウェザース タリア・シャイア
「ロッキー4」本編に使われたシーンやカット、台詞にシルベスター・スタローンは不満があった。コロナ禍でできた時間で再構築に挑んだ作品。本国では2021年に限定公開され、配信なしとの触れ込みで日本では劇場公開となった。
「ロッキー4」は初公開時に、熊本市の電気館で観た。あの頃、米国国威高揚映画だの、レーガン大統領が賛辞を送っただの、プロパガンダ映画だの散々言われていたのを覚えている。そう受け取られる描写が入ったのも、きっと時代の空気だったのだろう。
人間ドラマ重視で観るならば、圧倒的に「ロッキーVSドラゴ」が優れている。「ロッキー4」は、とにかく"東対西、国対国"の話に持っていこうとする流れが明らかにある。国旗に彩られたグローブが激突するオープニングに、なんて挑発的!とドン引きしたのを覚えている。エキシビジョンマッチに参戦したいと言い出すアポロに、ロッキーは「自分自身との戦いじゃないのか」と言うが、オリジナルだと「ソビエトに思い知らせてやらないと」めいた台詞が目立つ。
試合前の控室でもそんな事を言ってるのだが、今回の再編集ではアポロのそうした対立をあおる台詞は記者会見シーンに絞られている。それだけにリングに向かう前に「試合が終わればわかるさ」とのアポロのひと言は、自分のファイターとしての生き様や考えが理解できるさ、と受け取ることができる。こんなに印象が変わるとは。ドラゴの妻ブリジット・ニールセンの台詞がかなりカットされていることも同様。
また、この二つの試合に向けられる登場人物それぞれの思いが、再編集版では色濃く出ている。ロッキーがドラゴ戦を決心するまでの追加シーンもいい。特にアポロの葬儀シーンは別アングルから撮られた全く違う台詞になっており、オリジナルと違ってロッキーは嗚咽を抑えられない。また、アポロのトレーナー役トニー・バートンの弔辞が加わっている。これがロシアでトレーニングを始める場面でのロッキーとの会話への前置きになっているから、「お前が意志を受け継ぐ」との言葉がズシリと重い。
オリジナルに出てくるロボットは、潔くスパッとカット。一方で、No Easy Way Outが流れるほぼMTV的な演出はそのまま。ラストにビル・コンティのオーケストラスコアが少しだけ付け加えられているのと、ロッキーたちが試合会場を去る後ろ姿が付け加えられたのはいい余韻が感じられた。
この映画のキーワード、Changeが強く心に残る。オリジナルでは対ソビエト色が濃厚だったので、いい事言ってるよな!と思ったけれど薄味に感じられた。アポロとの会話でもChangeがキーワードだったとも気付かされる。ウクライナ侵攻があって製作された映画ではないけれど、「2000万人が殺し合うよりマシだ!」のメッセージが今心に響く。映画館で観られてよかった。
「ロッキー4」は初公開時に、熊本市の電気館で観た。あの頃、米国国威高揚映画だの、レーガン大統領が賛辞を送っただの、プロパガンダ映画だの散々言われていたのを覚えている。そう受け取られる描写が入ったのも、きっと時代の空気だったのだろう。
人間ドラマ重視で観るならば、圧倒的に「ロッキーVSドラゴ」が優れている。「ロッキー4」は、とにかく"東対西、国対国"の話に持っていこうとする流れが明らかにある。国旗に彩られたグローブが激突するオープニングに、なんて挑発的!とドン引きしたのを覚えている。エキシビジョンマッチに参戦したいと言い出すアポロに、ロッキーは「自分自身との戦いじゃないのか」と言うが、オリジナルだと「ソビエトに思い知らせてやらないと」めいた台詞が目立つ。
試合前の控室でもそんな事を言ってるのだが、今回の再編集ではアポロのそうした対立をあおる台詞は記者会見シーンに絞られている。それだけにリングに向かう前に「試合が終わればわかるさ」とのアポロのひと言は、自分のファイターとしての生き様や考えが理解できるさ、と受け取ることができる。こんなに印象が変わるとは。ドラゴの妻ブリジット・ニールセンの台詞がかなりカットされていることも同様。
また、この二つの試合に向けられる登場人物それぞれの思いが、再編集版では色濃く出ている。ロッキーがドラゴ戦を決心するまでの追加シーンもいい。特にアポロの葬儀シーンは別アングルから撮られた全く違う台詞になっており、オリジナルと違ってロッキーは嗚咽を抑えられない。また、アポロのトレーナー役トニー・バートンの弔辞が加わっている。これがロシアでトレーニングを始める場面でのロッキーとの会話への前置きになっているから、「お前が意志を受け継ぐ」との言葉がズシリと重い。
オリジナルに出てくるロボットは、潔くスパッとカット。一方で、No Easy Way Outが流れるほぼMTV的な演出はそのまま。ラストにビル・コンティのオーケストラスコアが少しだけ付け加えられているのと、ロッキーたちが試合会場を去る後ろ姿が付け加えられたのはいい余韻が感じられた。
この映画のキーワード、Changeが強く心に残る。オリジナルでは対ソビエト色が濃厚だったので、いい事言ってるよな!と思ったけれど薄味に感じられた。アポロとの会話でもChangeがキーワードだったとも気付かされる。ウクライナ侵攻があって製作された映画ではないけれど、「2000万人が殺し合うよりマシだ!」のメッセージが今心に響く。映画館で観られてよかった。