◼️「オルカ/Orca」(1977年・アメリカ=イタリア)
監督=マイケル・アンダーソン
主演=リチャード・ハリス シャーロット・ランプリング ウィル・サンプソン ボー・デレク
スピルバーグの「ジョーズ」が大ヒットした後、70年代後半には動物が人間を襲う様々な映画が製作された。小学校高学年だったけどよく覚えている。犬、熊、蜂、ミミズ、ピラニアとかいろんなものがスクリーンの向こうから襲ってきていた。修学旅行で乗ったフェリーで蛸に襲われる映画のビデオが流れてて、「船に乗ってるのにそのセレクトどうよ?」と思ったもんですw
さて。そんな時期にディーノ・デ・ラウレンティス御大が製作総指揮した作品が「オルカ」。地上波で放送されたのを中学生の時分に初めて観た。
水族館に売る目的でオスのシャチを捕まえようとした漁師ノーマン。誤ってメスのシャチを撃ってしまい、胎内の子供も死なせてしまう。ノーマンの姿を水面から見つめていた瞳。その後、シャチが港で船を襲う事件が起きる。過去の出来事から妻子を失ったオスの気持ちが理解できると言うノーマンは、シャチが待つ海へと向かう。
「ジョーズ」の緊張感とは全然違う。本能で襲ってくる恐怖ではない。高い知性を持つシャチがどんな生き方をしているのかを、映画は理詰めで観客に示す。そうした生態や特徴を生物学者や乗組員から聞いていたにも関わらず、利益やら欲望から悲劇が起こる。シャチが港で仕掛ける様々な攻撃も、次第にシャチ側の気持ちに味方して観てしまう。こんな映画なかなかないだろう。手招きするようなシャチの動きを追ってたどり着く北極海。クライマックスはまさに決闘と呼ぶに相応しい。
「ジョーズ」の圧倒的な恐怖とは違った悲壮感がたまらない。村の漁民から冷たい視線を浴びせられる無言の出航場面にしても、エンニオ・モリコーネの音楽にしても、精神的に観客も追い詰められていく気がする。そこにイタリア資本が入った映画らしい(?)、ショッキングな演出も加わる。それでいて、ドラマ部分はしっかりしている。当時流行った娯楽映画のようで、他の映画にはない魅力を讃えている不思議な映画だ。中坊の頃に観た時も何とも言えない悲しさで胸がいっぱいになった。今でも忘れられないのはそのせいなんだろう。他の動物パニック映画とは違うのだよ。もっと評価されるべき。
この映画の語り部でもある生物学者を演じたシャーロット・ランプリングが美しい。ノーマンに反発するようで、理解者でもある存在。シャチ捕獲に向かう船で、「シャチの夫婦は一生添い遂げるのよ。私たちは家族を壊すことになるのよ」とノーマンに言う乗組員の女性。見たことあるなぁ、と思ったら「テン」「類人猿ターザン」のボー・デレク(懐)。