◼️「激突!/Duel」(1971年・アメリカ)
監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=デニス・ウィーバー キャリー・ロフティン エディ・ファイアストーン
小中学生でスピルバーグに未知との遭遇してしまった僕ら世代の映画ファンは、スピルバーグのフィルモグラフィーを追いかけて育ったようなところがある。初期の作品が放送されたらテレビの前にかじりつき、監督を担当した唯一の「刑事コロンボ」はきっちり録画し、新作が封切られたら映画館へ。長いキャリアの半分以上をリアルタイムで追いかけている映画人はおそらく他にいない。観てないのは数える程だろう。
初期の作品はどれもすごいのだけれど、中でも忘れられないのが「激突!」。元々は低予算テレビムービーとして製作されたのだが、日本では劇場公開された。そのせいで劇場デビュー作の邦題が「続・激突!」になった。
タンクローリーを追い越したら、その後執拗に追い回されて、恐怖を味わう主人公デニス・ウィーバーをひたすらカメラが追い続ける映画。何がすごいって、会話するのは冒頭、途中から立ち寄るガソリンスタンドやドライブインのシーン程度で、後は疾走する車、車内での叫び。長距離ドライブする理由は申し訳程度に説明され、とにかく車中のシーンが続く。不気味なタンクローリーに追い回され、背後からプッシュされ、踏切ではグイグイ線路に押し込まれそうになる。デカい車が路肩に停まってるだけなのに、観ているこっちまで戦慄してしまう。
巨大な自動車が生きているみたいに見えてくる。さらに相手のドライバーは姿を見せない。窓からのぞく腕を除いて、最後まで全く映らない。そして主人公が追われる理由も具体的に示されることもない。ドライブインで客の中にタンクローリーのドライバーがいると疑う場面。カメラは主人公の視線となって、客の表情や目線、茶色のウエスタンブーツを追う。疑心暗鬼ってこういうことだよなー、とつまらないことを考えながらクッションを抱きしめる私💧
親父殿が見ていたドラマ「警部マクロード」で活躍する姿を知っているデニス・ウィーバー。テレビのヒーローが、恐怖で歪む表情を見せ、絶叫し逃げ惑う姿は、子供心に強烈に焼きついた。怖いのに面白い。クッション抱きしめながら観るくせに、何度も観たくなる。テレビで放送された翌日は、同級生たちと「激突ってすげえな」と興奮気味に話したっけ。