◼️「シン・仮面ライダー」(2023年・日本)
監督=庵野秀明
主演=池松壮亮 浜辺美波 竹野内豊 斎藤工 森山未來
2019年に「仮面ライダープレミアムアート展」なるイベントに行った。昭和ライダーから平成ライダーまで歴代作品のパネル展示、ライダースーツ、怪人、石ノ森章太郎センセイの原稿や遺品の数々などなど興味深いものがたくさんあった。お子ちゃまたちが昭和の悪役が怖くて泣き叫んでいる。「V3」の敵幹部ドクトルゲーの前で「怖いよぉー」とガキんちょが座り込み、平成ライダーの展示になるとガキんちょが滞留して列が進まない(汗)。何はともあれ、仮面ライダーは世代を超えて愛されるヒーローなのだ。
僕は1号ライダーリアルタイム世代。地方都市在住だったから放送は日曜の朝。ミユキ野球教室の後でバイクの音と共に番組が始まるのが毎週楽しみだった。その初代を庵野秀明監督がリブートする本作。このところ公私共に忙しかったので久々の映画館詣で。頭使う映画は無理だな…と思い本作をセレクトw。
映画冒頭からカーチェイスで幕が上がる。いきなり!?あらら、浜辺美波ちゃん捕まっちゃったよ。そこにリアルタイム世代には耳になじみのあるヒュヒューッって効果音。崖の上に立つライダー。石ノ森ヒーローって必ず高い場所から登場するんよね。戦闘員を殴る、蹴る。飛び散る血飛沫!😳、うわっ、なかなかハードな描写。PG-12のレイティングは当然だな。本作の本郷猛がもつ優しさと対照的にも映る過激な力。葛藤を超え、現実を受け入れて、彼が使命を果たそうとする姿が描かれる。
確かに1号世代のハートに刺さる部分は楽しい。ベルトに風を受けて変身する場面にしても、オリジナルの菊池俊輔BGMも、オマージュ満載のアクションシーンにしても、死んだら泡になる場面も、ラストで名乗る二人の名前も😆。でも戦闘員は「イーッ!」って言わないし、ルリ子は守られる存在じゃなくて妙に自信満々だし、Wライダーキックは暗い場面だからオリジナルで感じたありがたみが薄らぐし。そこはオリジナルどっぷり世代には物足りなさが残るところかも。
庵野作品らしくエヴァや他の作品の影がチラつく。ルリ子のキャラクター設定や父親への感情は、もろに綾波レイを思わせる。森山未來演ずるチョウオーグは、玉座から離れる時に糸(ケーブル?)で繋がれていたのが放たれる。これはエヴァのケーブルでもあり、「ナディア」のクライマックスに登場する皇帝にも重なる部分(ネタバレ防止のため控えめな表現にとどめます)。新たな力を手にした主人公が何人かの敵と戦う映画全体の構成や派手な怪人の造形は、実写版「キューティーハニー」とアニメ「Re:キューティーハニー」で、庵野監督は既に実践済み。それだけについつい感じてしまう「またか」という既視感。でもそれは僕ら世代だからかもしれない。若い方々はもっと素直に楽しんだらいいと思うのだ。
エンドクレジットで流れるオリジナルの主題歌や子門真人の挿入歌。菊池俊輔楽曲独特のホーンセクションの派手なアレンジはやっぱりカッコいい(ジョジョの「その血の運命」のホーンアレンジはこれを受け継いでいると勝手に思っている😝)。本編のBGMでも流れるオルガンの音色は、初代ライダー作品の雰囲気を作っていると再認識。
蛇足。池松壮亮は苦手。共演女優と裸で絡む役が目立つから"前貼り先生"と呼ばれる。浜辺美波に「着替え中だから離れてて。変なことしないで」と言われる場面では、「そうだーっ!美波ちゃんに手を出すな!」と心で叫んでおりました(恥)。
ハチオーグ戦の後。「私、用意周到なの」と強気だったルリ子が「ちょっと胸を借りる」と言ってすすり泣く場面にキュンとした。マスク被ると台詞が聞き取りにくくなるのは難あり。全体的に正義や勇気というメッセージが薄味なのは、ちょっと残念なところ。