◼️「セント・エルモス・ファイアー/St.Elmo's Fire」(1986年・アメリカ)
監督=ジョエル・シュマッカー
主演=エミリオ・エステバス ロブ・ロウ アリー・シーディ デミ・ムーア
それぞれの世代の心に響く青春映画がある。元号が平成になってから社会人になった世代なら「リアリティ・バイツ」、今退職を迎えてる世代なら「さらば青春の光」とか。いやもっと他にもあるだろうけど。じゃあ、自分にとって心の青春映画が何かと言われたら、ジョン・ヒューズ監督作よりもまず名前を挙げてしまうのは「セント・エルモス・ファイアー」。80年代の群像劇ぽいトレンディードラマ(死語)の原点ともなった、YAスター(またはブラッドパック、これも死語)7人の青春映画である。
大学を卒業してそれぞれの道を歩む男女が、恋愛、挫折、友情を通して成長していく物語。映画を思い出すだけで、甘酸っぱい気持ちになるし、あの頃の自分や考えていたことを振り返ってしまう。"聖エルモの灯"とは、嵐に遭った船乗りたちがマストのてっぺんに青白い光を見る現象のことで、その後で嵐が静まる。船を導く灯火のようで、迷った時の心の支え、道標のような意味で用いられる。
年上の女医(アンディ・マクダウェルが綺麗♡)に恋をするエミリオ・エステベスは、特に印象的な役柄だった。アウトローを演ずる他の映画とイメージが重なって、背伸びしている感じがよかった。友達の彼女に恋をしたり、音楽家志望を貫いて苦労したり。派手な生活と強気な態度の裏で弱い心を抱えていたり。そんな迷う彼ら彼女らにとって、友の存在が聖エルモの灯なのだ。
公開当時、僕は新作よりもクラシック映画に走っていて、同時代的に観る映画をあれこれスルーしてきた。この映画を初めて観たのは社会人になった頃。そのタイミングで観たせいか、映画の中の迷える男女が「今のままでいいんだろか?」と日々考えていた自分に重なって見えた。特に文筆業に憧れるアンドリュー・マッカーシーに、僕は感情移入していた。彼が書いた記事のように、自己表現が誰かの役に立つことをカッコいいと思っていた。帽子がトレードマークだったアンドリューの役柄に影響受けたのか、今でも帽子被るのが好きだったりする。配偶者には「アタシの方が似合う」と言ってけなされるけどさw。
デビッド・フォスターの音楽は公開当時から大好きだった。ストリングスとピアノが印象的な「愛のテーマ」は結婚披露宴で流したっけ。あー、恥ずかしい🫣。ともあれ、僕にとっては大事な心の青春映画。最近ブルーレイを買ったけれど、観るといろいろと恥ずかしい気持ちになりそうで、まだ再生していない。でもそのディスクが棚にあるだけでどこか安心するのは、自分にとって聖エルモの灯のように思ってるからかもしれない。