Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

私の奴隷になりなさい

2023-05-07 | 映画(わ行)

■「私の奴隷になりなさい」(2012年・日本)

監督=亀井亨
主演=壇蜜 真山明大 板尾創路

 観てしまった・・・だって、気になって仕方ないんだもん(開き直り)。正直なところ。壇蜜が世に出てきたとき、あぁまた自分を安売りしている女性が・・・と僕は思った。その頃、グラビアアイドルたちは壇蜜の登場で過剰な露出を求められることが多くなったと迷惑がり、世の女性タレントさんたちもやれ下品だとかお下劣だと批判した。確かに過剰なグラビア写真は刺激的で魅力的だが、その多くは男子の好奇心と情に訴えるものだった。彼女の発言や記事、ドラマの脇役での印象的な表情を目にするにつれてだんだんと印象が変わってきた。彼女の発言には人を誘惑する言葉というよりも、人の心に訴える魅力や気遣いがある。心をとらえて放さない魅力がある。単にお綺麗な女性というルックスだけでない。確かに連日マスコミで取りあげられる彼女は、やり過ぎな露出過剰な女の印象だ。だけどビジュアルだけで彼女に夢中になっているのはもったいないと思えてきたのだ。そんな壇蜜が初めて主演した映画がこの「私の奴隷になりなさい」。

 主人公"僕"は転職した新しい職場で綺麗な年上の女性に出会う。彼女は既婚者だが、夫は大阪に単身赴任中。女性にはいささか自信をもつ"僕"は、彼女に執拗に近づいていく。ところが、ある日彼女からストレートな誘いのメールが届く。言われるがままについて行くと彼女はビデオカメラを渡して、行為の間、自分の顔を録画しろと言う。不思議に思いつつも従った"僕"。実は彼女には秘密があった・・・。

 僕は女性がいたぶられる映画が大嫌いだ。例えば団鬼六もの。杉本彩の「花と蛇」はテレビの前で「もうそのくらいにしてやれよー!」と叫びそうになったし(でも停止ボタンを押せなかった・笑)、坂上香織(大好き!)の「紅薔薇夫人」はハードな場面を心から楽しめなかった。それらはあくまで男性目線の願望(欲望)むき出しの作品。本作「私の奴隷になりなさい」は、彼女が"先生"と呼ぶ男(板尾創路、役得!w)による性調教のお話だから、同じように縛られもするし弄ばれもする。しかし根本から違うのは、女性側の目線からもその行為を描いている点だ。「私を先生の奴隷にして」と口にする程にのめり込んでしまった彼女だが、自分が快楽を知ることでそれまでの自分から解き放たれたこと、そしてその歓びを教えてくれた"先生"に対するある種の恋心。壇蜜がいろんな表情をみせてくれる映画。酒場で"先生"と出会ってからだんだんと、その表情も容姿も綺麗になっていく過程が面白い。

 僕がグッときたのは"先生"が"僕"に言う「ゴーリーよりフランシス・ベーコンになるべきじゃないのかね」という台詞。映画の前半で、出版社に務める"僕"は、ダークなファンタジーを描くエドワード・ゴーリーの不気味な絵が好きだ、と言っている。

しかし"先生"は不気味な絵に惹かれるように、未知の秘密やおぞましいことを垣間見るようなことよりも、フランシス・ベーコンの絵のように内面の欲望を自らさらけ出すことが必要なのではないのか、と言うのだ。

そういう意味では性の奥深さを主人公が垣間見るスタンリー・キューブリック監督作「アイズ・ワイド・シャット」に近いものを僕は感じた。「アイズ・ワイド・シャット」では、ニコール・キッドマンがうちひしがれた主人公に「ファックするしかないでしょう」と言い放つ。しょせん男と女はそこなんだ、とキューブリックは僕らをあざ笑うのだ。「私の奴隷に~」のラスト、秘密のすべてを知ってしまった"僕"に、彼女は静かに言う。
「それでもまだ私のことが好きなの?。だったら、私の奴隷になりなさい。」
エンドクレジットの主題歌まで壇蜜が歌う大活躍の映画。このひとことは"僕"に向けられただけでなく、銀幕の前でドキドキしている僕らにも向けられているのだ。

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ホット・ロック

2023-05-07 | 映画(は行)

◼️「ホット・ロック/The Hot Rock」(1972年・アメリカ)

監督=ピーター・イエーツ
主演=ロバート・レッドフォード ジョージ・シーガル ロン・リーブマン ポール・サンド

ロバート・レッドフォードの引退作「さらば愛しきアウトロー」が昔からの映画ファンにグッとくるのは、「明日に向かって撃て!」のサンダンス・キッドや「スティング」、この「ホット・ロック」などで数々の犯罪者を演じてきたからだ。でもレッドフォードが演じた美男の犯罪者は、根っからの悪党でもなく、人情やユーモアがあって仲間思いで憎めない。「ホット・ロック」ではスゴ腕なんだろうけれど、胃潰瘍の一歩手前で薬飲んでるキャラクターが身近な人間味を感じさせて好感。

「ホット・ロック」で演じた主人公は出所したばかりの盗みのプロフェッショナル。錠前破りである義理の弟から、ブルックリンの美術館に収められたダイヤモンド"サハラの石"を盗み出す仕事を持ちかけられる。警備員に化けて忍び込んだが、仲間の一人が捕まってしまう。彼は捕まる前にダイヤを飲み込み、留置された警察署に隠した。彼らはヘリコプターで警察署に乗り込むが…。

スマートに盗みが実行されたかと思えば、思わぬ事態で危機に陥り、ダイヤの行方をめぐって、ストーリーは二転三転。厳重に警備された貸金庫に預けられたダイヤにいかに近づくかが、クライマックスの見どころとなる。地下を掘り進むでもなく、変装するでもなく、まさかの催眠術😵‍💫を使うのが楽しい。この軽妙さで映画の好きずきが分かれるところかもしれない。でも"アフガニスタンバナナフロント"って呪文のおかしな響きがなーんか楽しくって僕は許せてしまう。

ラストシーンにつながる銀行を出てニューヨークの街をレッドフォードが一人歩く場面。それまで地味だったクインシー・ジョーンズの音楽が、少しずつ華やかになっていく。主人公がジワジワと高揚感を感じていく様子。歩くだけの演技に音楽が彩りを与える。劇伴のお手本と言ってもいい場面。

2001年の同時多発テロで崩れ去る世界貿易センターのツインタワーが、まだ建設中の建物として撮影されているのは貴重な映像。





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