◼️「揺れる大地/La terra trema: episodio del mare」(1948年・イタリア)
監督=ルキノ・ビスコンティ
主演=アントニオ・アルチディアコノ ジュゼッペ・アルチディアコノ アントニオ・ミカーレ
40年代から50年代のイタリア映画には、現実主義的な作風のネオリアリズモと呼ばれる作品群がある。「無防備都市」や「自転車泥棒」と並んで代表作の一つとされるのが本作「揺れる大地」である。ロベルト・ロッセリーニも俳優の演技に頼らず、現地の住民を起用することで知られているが、本作のルキノ・ビスコンティも同様の手法で撮った。
貧しい漁民一家が仲買人に搾取される状況から自立への希望を抱く。市場に自ら競りに行くが騒動を起こして逮捕されてしまう。釈放された主人公は、借金をして加工業を始める。しかし…。
ネオリアリズモ作品がハッピーエンドになるはずもない、という予備知識があって観た。それでも、どうしてここまで彼らを追い詰めるのか、と悲しくて仕方なくなる。貧しい生活をドキュメンタリータッチで撮っていて、モノクロの映像生々しい。元々貴族階級のビスコンティ監督だから、ほんとうにその痛みを理解して撮ってるのだろうかと勘繰ってしまった。でも、とことん気持ちが落ち込む話を見せられて、エンドマークを迎える「自転車泥棒」とは違って、ちょっとだけ希望が見えるラストシーン。それでも海に向かっていく姿が心に残った。
日本では1990年初公開。助監督はフランコ・ゼフィレッリとフランチェスコ・ロージ。