Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ウォーリー

2012-05-13 | 映画(あ行)

■「ウォーリー/Wall-E」(2008年・アメリカ)

監督=アンドリュー・スタントン
声の出演=ベン・バート エリッサ・ナイト ジェフ・ガーリン フレッド・ウィラード 

●2008年アカデミー賞 長編アニメ賞
●2008年NY批評家協会賞 アニメーション賞
●2008年LA批評家協会賞 作品賞

※注意・結末に触れています。
黄金週間直前、子供が左足小指を骨折。通学にも不自由する状況になり、ゴールデンウィークは動くに動けぬ状況になった。おまけに休み最終日はもう一人も風邪が原因で腹痛と吐き気でのたうちまわることに。そんな今年のゴールデンウィーク。NHK地上波が粋な番組を放送してくれた。ピクサーアニメ「ウォーリー」だ。決して敬遠していたつもりはないのだが、これまで残念ながら見る機会がなかった作品。子供二人と僕とで楽しく鑑賞することができた。5月5日のゴールデンタイムに放送された本作。BSならばともかく、地上波の放送であれば、時間枠がきっちりしてるだけに通常カットされ再編集されるのは当たり前。だが、NHKは物語のその後も描いた素敵なエンドクレジットとピーター・ガブリエルの主題歌を最後まできちんと流してくれた。作品への敬意と受け取ってもいいだろう。

ゴミ処理ロボットであるウォーリーは、汚染された地球から人類が宇宙へ逃れて何百年もの間、一人ゴミを処理し続けていた。ゴキブリくらいしか動くものがなく、摩天楼と同じ高さまで積まれたゴミの塔がそびえ立つ都市の風景が示される。それは僕らがこれまで観てきた絶望的な未来観をもつ70年代のSF映画たちを思い起こさせる。誰もいない都市の風景は、チャールトン・ヘストンが誰もいない街をオープンカーで走り回り、疫病に冒された暴徒と戦う「地球最後の男/オメガマン」。こうなるに至ったいきさつは明確に示されないが、きっと「猿の惑星」やら「地球爆破計画」のような事態が起こってしまったのであろう。ウォーリーは長い年月を経て意思や好みが芽生えていた。ゴミの中からお気に入りのものを持ち帰るようになる。彼のお気に入りはミュージカル映画「ハロー・ドーリー」が収められたビデオテープ。何度も繰り返し観た彼は、いつか誰かと手をつなぎたいと願うようになる。そこへ突然現れた宇宙船が、真っ白なロボットを置いて飛び去っていく。あちこちを飛び回って探索し、危険と思えば容赦なく銃を向けるそのロボットの名はイヴ。やがて親しくなった二人だが、イヴはあるものを発見した途端に動きを止めてしまう。そしてそこに再び宇宙船が降り立ちイヴを連れ去る。ウォーリーはイヴを失いたくなくて、宇宙船にしがみつき大気圏外へ、そして人類が生きている超ド級の宇宙船にたどり着く・・・。

この映画の前半、ロボットの発するもの以外台詞らしい台詞はまったくない。ゴーストタウンのような都市をカラカラと音をたててロボットが走り回る映像を観るだけだ。説明臭いナレーションすらない。ウォーリーも表情があるわけでもないのに、僕らはそこに感情を感じることができる。映像のもつ力強さを感じずにはいられない。言葉もないこの映像を日本の多くの人々が今見入っている・・・そう思うと僕は不思議な気持ちになった。

後半、走行する椅子の上で暮らし、自ら歩くことも誰かと触れることすらなくなった人類の姿が示される。コンピュータの完全な管理の下でぶくぶく太った人類は生き続けていた。イヴが持ち帰った植物が、地球が再び人類が住める場所となったサインとなり、艦長は地球への帰還を決断する。しかし、コンピュータは「帰る必要はない」として艦長を監禁、植物の証拠を隠滅しようとする。赤い一つめの舵輪型ロボットが艦長に反抗する場面は、「2001年宇宙の旅」のHALのパロディ。ウォーリーとイヴの活躍と艦長の勇気で再び地球へと人類は降り立つことになる。ウォーリーが消火器を使って宇宙遊泳する場面は、実に美しい。

歩くこともままならなくなった人類が本当に地上で暮らすことができるもんかという見方もあるだろう。だが、映画が示したいのは、たとえ絶望的な未来であっても持ち続ける限り必ず希望はあるということ。人は立ち直ることができると訴えかける。5月5日のゴールデンタイムに、NHKがこの映画を敢えてセレクトして放送した真意。それは昨年の震災から1年が経過した日本に、わずかながらでも元気をあげたいという気持ちからではないか。みんなで立ち直れるというメッセージと、(ハリウッド的お気楽さはあれども)この映画示す希望は、今の日本だからこそ必要なものかもしれないのだ。この映画を今観られたことに感謝。

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私の好きなサンリオキャラクター10選(その2)

2012-05-12 | うちの子に御用?
サンリオがやっているキャラクター大賞に触発された10選シリーズの企画。
その1 では僕が選んだなんか気に入っているサンリオキャラを紹介したが、やはりここは現役世代の意見を聞かねば。

という訳で、うちのレイア姫(11歳)が選んだ10キャラクターをご紹介。
レイアはこのブログの侵略を狙っている。今回は大侵攻だ。

■いちごの王さま
1975年の誕生以来サンリオの「いちご新聞」で未来あるこどもたちにメッセージを発し続ける偉大な王様。テレビCM好きなレイアはこのCMを見てファンになった。
博多あまおうCM


いちごの王さま ビーンズドール 50th

■シナモロール
もっともレイアが気に入ったキャラクターはシナモロール。モカ、カプチーノ、エスプレッソなどなどお友達キャラの名前を覚えさせられたよなぁ。
シナモンのバースデーソング


Cinnamoroll 10th Anniversary Book (ぴあMOOK)

■シナモエンジェルス
そのシナモロールのモカ、シフォン、アズキが結成したアイドルユニットがシナモエンジェルス。
シナモエンジェルスをさがして! (サンリオギフトブック)

■ポムポムプリン
90年代に登場したサンリオキャラの中でもほんわかした癒し系で人気があるポムポムプリン。
meisaku05 ポムポムプリンのうさぎとかめ


ポムポムプリン ビーンズドール 50th

■マシュマロみたいなふわふわにゃんこ
レイアが特に気に入っているキャラふわにゃん。淡いパステルカラーが好きなようである。最近まで男の子キャラだと知らなかったらしい・・・。
ふわふわにゃんこ うなずきドール カラフル

■コロコロクリリン
大分県のハーモニーランドに遊びに行ったときにキャラクターと撮った写真の中の数々。コロコロクリリンと撮った写真がレイアのお気に入りなのだ。
meisaku21 コロコロクリリンの田舎のネズミ都会のネズミ


コロコロクリリンのみんなでめいろ (サンリオギフトブック)

■シュガーバニーズ
ここからうさぎ系が続く。パティシエツインズのシュガーバニーズもシナモンの後くらいの時期にお気に入りだった。アニメ化されたけど、そっちには興味は示さなかった。
シュガーバニーズのふしぎなスプーン

■マイメロディ
サンリオキャラ不動のツートップ、ハローキティとマイメロディ。実はレイアはキティがあまり好きではないようだ。定番キャラではマイメロの方が好きらしい。この事実を配偶者アミダラMはまだ知らない。キティ柄のTシャツ(子供服)を先行投資して購入しているのらしいのだが・・・(汗)。
meisaku13 マイメロディの赤ずきん


マイメロディ スタンダードぬいぐるみ(ドット)M

■ウサハナ
どちらかと言うと幼児向けキャラなのかな?最近はあまり興味を示さない。
ゆめみるバレリーナウサハナおはなしシリーズ―たのしいバレエのはじまりだよ! (1) (小学館のテレビ絵本―おはなしシリーズ)

■リトルツインスターズ
そしてサンリオキャラの定番、キキ&ララ。この魅力は時代を越えてるね。
meisaku24 キキとララの青い鳥(前編)


リトルツインスターズfan (生活シリーズ)


ハローキティがまさかのランク外!チャーミーキティも入らなかった!
ちょっとびっくり。

・・・という訳できゃわいいもの好きなアナキンtak一家のサンリオキャラ特集いかがでしたでしょうか。
子供とサンリオキャラの話題で盛り上がれる父親ってのもどうかと思いますが。

あなたもキャラクター大賞に投票を!

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私の好きなサンリオキャラクター10選(その1)

2012-05-12 | うちの子に御用?
サンリオが年に一度のキャラクターの人気投票をやっている。
サンリオキャラクター大賞(こちら
うちのレイア姫(11歳)もこれまでサンリオキャラにあれこれ夢中になってきた。
テーマパークでキャラクターと撮った写真はお気に入り。

・・・というわけで、このブログであれこれやってきた10選シリーズ。
今回は「私の好きなサンリオキャラクター10選」!今回はうちのレイアも参戦します。

僕は妹が二人いるので、昔からあれこれ見てきたサンリオキャラ。
まずは私アナキンtakの10選。どうしても80年代のキャラが中心ですが。

■みんなのたあ坊
シンプルな絵柄ながら、口をぽかーんと開けたあの表情に癒される。おおあくびをする度に配偶者アミダラMは相手を「たあ坊!」と呼ぶ。心外やなぁ、あんなかわいいキャラなのに。
こどもに伝えたい今も昔も大切な100のことば―みんなのたあ坊の菜根譚
こんな本出してたんだね。意外とインテリジェンス。

■シナモロール
うちのレイア姫がもっともハマったのはシナモロールとその仲間。ぬいぐるみは何度耳がとれそうになったことか。ハッピーセットのシナモンも揃えたよなぁ。
sanrio - cinnamoroll

こういう遊び方すれば耳も痛みます・・・
シナモロール スタンダードぬいぐるみ(ドット)SS

■ルロロマニック
シナモロールのスピンオフ的キャラクター。シナモロールの逆読みになっていて、シナモンたちと別空間にいる悪魔的存在という設定が面白い。ちょっとゴシックホラーな世界観が好き。
Lloromannic Episode2: トモダチ (FRIEND) 


ルロロマニック チェリー(本来の姿)S ルロロマニック ベリー(本来の姿)S

■ハローキティ
やっぱり昔から親しんでいるキティは外せない。センセイと呼ばれるお仕事してた頃、オーストラリアの気候区分を覚えるために、キティの顔をオーストラリア大陸にみたてて色を塗って覚える技を編み出した。これは妙技だぞ。
meisaku01 ハローキティの白雪姫


ハローキティBook

■けろけろけろっぴ
■おさるのもんきち
昔職場で仲良しだったY代さんは、見た目にはかっちょいいブランドを好みそうな女性。だが彼女の持ち物は異常にキャラものが多かった。「どうしても選んじゃうのよねぇ。takさんもキャラものに弱いでしょ。」僕らは妙に意気投合したっけ。彼女のお気に入りだったのはけろっぴ。同時期だったもんきちも捨てがたい存在だな。
meisaku16 おさるのもんきちの金の斧銀の斧


けろけろけろっぴ ぬいぐるみSS

■クロミ
ルロロマニックと同じくダークサイドのキャラクター、クロミ。マイメロディのスピンオフ的存在だけど、悪戯好きそうな微笑みがなーんか好きなんよね。
クロミノートNo.1126


クロミちゃんの恋愛小悪魔ノート

■パティ&ジミー
それでもやっぱりサンリオキャラと言えば、僕ら世代にはパティ&ジミー。上の妹がいろいろ持ってたのかなぁ?男女ペアのキャラクター、サンリオにはいろいろあるよね。
We Love パティ&ジミー ―PATTY&JIMMY×earth music&ecologyミニミニBagつき! (主婦の友生活シリーズ)

■リトル・ツイン・スターズ
これも妹があれこれ持ってた印象がある。ブリグリの川瀬智子は、tommy februrary6のシングル「ジュテーム、ジュテーム」のジャケにキキララを起用。これのせいでレジに持って行くのが恥ずかしかった男子、ここに1名。
リトルツインスターズfan (生活シリーズ)

■バッドばつ丸
サンリオの男子キャラの中でも好きなのはワイルド系のばつ丸。実はサブキャラの伊集院パンダバのとぼけたキャラが好きだったりもするのだが。
バッドばつ丸 ビーンズドール 50th バッドばつ丸 ビーズペンクラブ

その2 ではうちのレイア姫が選んだ10キャラをご紹介します。

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SPACE BATTLESHIP ヤマト

2012-05-07 | 映画(さ行)

■「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年・日本)

監督=山崎貴
主演=木村拓哉 黒木メイサ 柳葉敏郎 緒方直人 山崎努

「宇宙戦艦ヤマト」に始まる第一次アニメブームを小学校高学年で経験している僕ら世代。「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に涙し、「新たなる旅立ち」に感激し、「ヤマトよ永遠に」で首をかしげ、「完結編」で唖然とした一人だ。もし「ヤマト」がなかったらあの後もアニメを見続けていただろうか、松本零士作品に夢中になっただろうか。それを考えると「ヤマト」が自分の中で占める位置は大きい。僕ら世代ならみんなきっとそうだと思うのだ。

実写版である本作が劇場公開された頃、初めて観る世代からも評価されているし、リアルタイム世代もあのメロディーが流れた瞬間に涙する・・・とべた褒めの報道が多かった印象がある。一方でオリジナルとはぜんぜん世代や設定が違う年齢層高めのキャスティングに呆気にとられたのも事実(こんな記事まで書いちゃったし)。あちこちで賛否を聞きながら、なーんとなく観る気力を失っていた。んで、地上波でオンエアされたのでやっと観たのだ。

な、何これ?。リアルタイム世代としては許せないことがあれこれ。CG技術は確かに頑張ってるとは思う。しかし残念なことにヤマトの勇姿を拝める場面があまりにも少なすぎる。戦闘シーンの一切が船内のカットだけで終わってしまうのはあんまりだ。オリジナルの音楽は確かに気持ちをかき立ててくれるのだが、あれは航行するヤマトの姿と重なるから素晴らしいのであって、チャラい古代進のBGMではないだろう。脚本をてがけた佐藤嗣麻子は、「エコエコアザラク」(1995)や「K-20」(2008)など監督としてはいい仕事する人だと僕は思っている。この人のフィルモグラフィーはコミックから横溝正史、外国映画まで脚色や本案がめちゃくちゃ多い。それぞれにいいものもあるが、このヤマトに関しては思い入れがあるとは到底思えない。ガミラス星人の設定の改変はアイディアとしては面白いが、デスラー総統のオリジナルでの存在感を考えればあれはないだろう・・・と残念に思う。伊武雅刀が「アバター」みたいな肌の色のメイクしてでも、人間が演じた方がよっぽど説得力があったような気がする。監督は佐藤嗣麻子の旦那である山崎貴。この人は「ALWAYS三丁目の夕日」が代表作だけに、観客のノスタルジーに訴えかけるのがお得意。だが本作は「ヤマト」という響きだけがノスタルジーをかき立ててくれるだけ。畳敷いたら何枚だろう?と想像したくなる狭い第一艦橋、メイサ演ずる森雪の部屋はまるで寝台車。とにかく宇宙戦艦の中を見ているとは思えない。アニメでは航行中の効果音が通奏低音のように流れていたっけ。あれがあるだけでも随分印象は違うだろうに。ともかく残念でございました。

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永遠の僕たち

2012-05-03 | 映画(あ行)

■「永遠の僕たち/Restless」(2011年・アメリカ)
監督=ガス・ヴァン・サント
主演=ヘンリー・ホッパー ミア・ワシコウスカ 加瀬亮

死に取り憑かれた青年と余命わずかな少女との出会いと別れを描いたガス・ヴァン・サント監督の新作。正直ノーマークだっただけにこういう映画と出会えて感激するのは嬉しい誤算。透明感のある映像とそれを彩る音楽、主人公イーノックの繊細さと成長物語、相手役アナベルの死を目前にしながら前向きな姿。二人を見守る日本兵の幽霊。普通の難病ものとも違う、恋愛映画とも違う今まで観たことのないファンタジー。そして爽やかなラストシーンに心揺さぶられる。90分の上映時間で、僕らは人を愛すること、生と死について考えさせられる。こんな映画はめったにない。

他人の葬儀に参加することを繰り返す青年イーノック(ヘンリー・ホッパー)。実に不謹慎な遊びなのだが、それには理由があった。彼は両親を交通事故で失い、彼自身も同じ事故で臨死体験をしたことがある。両親の葬儀は彼が昏睡状態の間に執り行われた為に、両親の死を受け入れながらも、心の中では愛する人に別れを告げられなかった無念さがある。彼には日本兵の幽霊の友達ヒロシがいる。彼以外にはその存在は見えない。まさに死に取り憑かれている。そんなイーノックがある葬儀で出会った少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)。葬祭場の職員に縁もない葬儀に参列することを咎められたイーノックは、彼女の機転で救われる。彼女は余命3ヶ月であることをある日彼に打ち明ける。お互いにとって欠くことのできない存在になっていく。

積み重ねられていくエピソードはまるで詩を幾編も読んでいるように、不思議な余韻を残してくれる。素敵な場面がいくつもある映画だ。映画の冒頭、殺害現場の死体のように路上に自分の輪郭を書くイーノック。そこにビートルズのTwo Of Usが流れた瞬間に僕は「あ、この映画に惚れる!」と直感的に思った。アナベルが描く昆虫のスケッチ。生あるものを書き残すことに取り憑かれたようにも見えるそのスケッチ。「僕の両親に会う?」とアナベルをお墓の前に連れて行き、地面の下で眠る両親に彼女を紹介する。アナベルが余命を告白する場面でも、イーノックが返す言葉は「3ヶ月あればシロフォンの名手になれる」だもの。そこには、他の難病もの映画にありがちな死を前にしたもの悲しいムードはない。しかし、仲良くなった二人の行動は必ず死が隣り合うもの。いい年齢して小さな子供に交じってハロウィンの仮装をするのも、死体安置所でデートするのも、死の場面をシナリオ書いて演じてみるのも、普通に考えればおかしいし不謹慎な行動だ。でもそんなちょっと変わった二人の恋物語は、とてもすがすがしい。厳しい現実を前にしても決してめそめそせず、好きな野鳥のように今生きていることを嬉しく思うアナベルの姿に、僕らはとても勇気づけられる。そして彼女の死に向かい合うことでイーノックは成長する。ラストシーンの笑顔は、台詞を聞かずともすべてを集約したような笑顔。加瀬亮扮する幽霊は観る前どうなの?と不思議に思っていたが、愛する人を残して世を去るアナベルの気持ちを代弁する役どころで好印象。映画館を出るとき、とても優しい気持ちになれる映画。



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