■「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年・日本)
監督=山崎貴
主演=木村拓哉 黒木メイサ 柳葉敏郎 緒方直人 山崎努
「宇宙戦艦ヤマト」に始まる第一次アニメブームを小学校高学年で経験している僕ら世代。「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に涙し、「新たなる旅立ち」に感激し、「ヤマトよ永遠に」で首をかしげ、「完結編」で唖然とした一人だ。もし「ヤマト」がなかったらあの後もアニメを見続けていただろうか、松本零士作品に夢中になっただろうか。それを考えると「ヤマト」が自分の中で占める位置は大きい。僕ら世代ならみんなきっとそうだと思うのだ。
実写版である本作が劇場公開された頃、初めて観る世代からも評価されているし、リアルタイム世代もあのメロディーが流れた瞬間に涙する・・・とべた褒めの報道が多かった印象がある。一方でオリジナルとはぜんぜん世代や設定が違う年齢層高めのキャスティングに呆気にとられたのも事実(こんな記事まで書いちゃったし)。あちこちで賛否を聞きながら、なーんとなく観る気力を失っていた。んで、地上波でオンエアされたのでやっと観たのだ。
な、何これ?。リアルタイム世代としては許せないことがあれこれ。CG技術は確かに頑張ってるとは思う。しかし残念なことにヤマトの勇姿を拝める場面があまりにも少なすぎる。戦闘シーンの一切が船内のカットだけで終わってしまうのはあんまりだ。オリジナルの音楽は確かに気持ちをかき立ててくれるのだが、あれは航行するヤマトの姿と重なるから素晴らしいのであって、チャラい古代進のBGMではないだろう。脚本をてがけた佐藤嗣麻子は、「エコエコアザラク」(1995)や「K-20」(2008)など監督としてはいい仕事する人だと僕は思っている。この人のフィルモグラフィーはコミックから横溝正史、外国映画まで脚色や本案がめちゃくちゃ多い。それぞれにいいものもあるが、このヤマトに関しては思い入れがあるとは到底思えない。ガミラス星人の設定の改変はアイディアとしては面白いが、デスラー総統のオリジナルでの存在感を考えればあれはないだろう・・・と残念に思う。伊武雅刀が「アバター」みたいな肌の色のメイクしてでも、人間が演じた方がよっぽど説得力があったような気がする。監督は佐藤嗣麻子の旦那である山崎貴。この人は「ALWAYS三丁目の夕日」が代表作だけに、観客のノスタルジーに訴えかけるのがお得意。だが本作は「ヤマト」という響きだけがノスタルジーをかき立ててくれるだけ。畳敷いたら何枚だろう?と想像したくなる狭い第一艦橋、メイサ演ずる森雪の部屋はまるで寝台車。とにかく宇宙戦艦の中を見ているとは思えない。アニメでは航行中の効果音が通奏低音のように流れていたっけ。あれがあるだけでも随分印象は違うだろうに。ともかく残念でございました。
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