Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

激突!

2023-03-14 | 映画(か行)

◼️「激突!/Duel」(1971年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=デニス・ウィーバー キャリー・ロフティン エディ・ファイアストーン

小中学生でスピルバーグに未知との遭遇してしまった僕ら世代の映画ファンは、スピルバーグのフィルモグラフィーを追いかけて育ったようなところがある。初期の作品が放送されたらテレビの前にかじりつき、監督を担当した唯一の「刑事コロンボ」はきっちり録画し、新作が封切られたら映画館へ。長いキャリアの半分以上をリアルタイムで追いかけている映画人はおそらく他にいない。観てないのは数える程だろう。

初期の作品はどれもすごいのだけれど、中でも忘れられないのが「激突!」。元々は低予算テレビムービーとして製作されたのだが、日本では劇場公開された。そのせいで劇場デビュー作の邦題が「続・激突!」になった。

タンクローリーを追い越したら、その後執拗に追い回されて、恐怖を味わう主人公デニス・ウィーバーをひたすらカメラが追い続ける映画。何がすごいって、会話するのは冒頭、途中から立ち寄るガソリンスタンドやドライブインのシーン程度で、後は疾走する車、車内での叫び。長距離ドライブする理由は申し訳程度に説明され、とにかく車中のシーンが続く。不気味なタンクローリーに追い回され、背後からプッシュされ、踏切ではグイグイ線路に押し込まれそうになる。デカい車が路肩に停まってるだけなのに、観ているこっちまで戦慄してしまう。

巨大な自動車が生きているみたいに見えてくる。さらに相手のドライバーは姿を見せない。窓からのぞく腕を除いて、最後まで全く映らない。そして主人公が追われる理由も具体的に示されることもない。ドライブインで客の中にタンクローリーのドライバーがいると疑う場面。カメラは主人公の視線となって、客の表情や目線、茶色のウエスタンブーツを追う。疑心暗鬼ってこういうことだよなー、とつまらないことを考えながらクッションを抱きしめる私💧

親父殿が見ていたドラマ「警部マクロード」で活躍する姿を知っているデニス・ウィーバー。テレビのヒーローが、恐怖で歪む表情を見せ、絶叫し逃げ惑う姿は、子供心に強烈に焼きついた。怖いのに面白い。クッション抱きしめながら観るくせに、何度も観たくなる。テレビで放送された翌日は、同級生たちと「激突ってすげえな」と興奮気味に話したっけ。




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サーキットの狼

2023-03-12 | 映画(さ行)

◼️「サーキットの狼」(1977年・日本)

監督=山口和彦
主演=風吹真矢 夏木陽介 矢吹二朗 横本メイ

少年ジャンプを真剣に読んでいたのは小学校高学年の頃。お目当ては「サーキットの狼」だった。世はスーパーカーブームの真っ只中。外車ショーがあると聞けば父親に「連れてけ!」と叫び、学校帰りに近所の自動車修理工場にトヨタ2000GTがあるのを見かけてカメラ持って突撃していた少年。いつかポルシェに乗りたい…とか夢見ていたけど、現実はww

そんな小学生の頃、東映が製作したのが実写版「サーキットの狼」。公道レーサーだった風吹裕也がレーサーデビューするまでの物語。カウンタックもフェラーリも出てくるけれど、これらがサーキットで徐行運転をしてるかのような、とにかく迫力に欠ける映像にがっかりした。同時上映だった「トラック野郎 度胸一番星」がやたら楽しかったっけ。

何をいちばん覚えているかって、ヒロインが浜辺を駆けてくるビキニ姿と「およげ!たいやきくん」の子門真人が歌った主題歌。ヒールアンドトゥ、パワースライド、カウンターステアなどなど運転テクニックがまるでヒーローの必殺技みたいに出てくる歌詞の、哀愁漂う曲だったな。





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カンゾー先生

2023-03-10 | 映画(か行)

◼️「カンゾー先生」(1998年・日本)

監督=今村昌平
主演=柄本明 麻生久美子 ジャック・ガンブラン 世良公則 松坂慶子 

敗戦色が濃厚になってきた時代に、岡山の町医者として日々奔走していた赤城医師を主人公にした人間ドラマ。診てもらった患者がほぼ肝臓炎と言われるから、カンゾー先生と呼ばれている。現在のようにウィルス性肝炎が知られていない時代だけに、誰にでも肝炎と言うヤブ医者と誤解されていたのだ。日々駆け回るカンゾー先生は、親を亡くしたソノ子を看護婦として雇うことになった。生活のために淫売を繰り返していた彼女は、肝炎撲滅の為に情熱を傾ける先生を知り、その助けになりたいと思うようになる。

先生をとり巻く個性的な面々が楽しい。女好きな和尚、オンナの武器をチラつかせる遊廓の女将、女将に言い寄る軍医、モルヒネ中毒の外科医。厳しい時代に庶民が懸命に生きている姿も描かれている。今村昌平監督作は70年代以降の有名作4、5本しか観ていないけれど、こうした描写は共通しているように思える。

脱走してきたオランダ兵捕虜を交えて、男たちとソノ子が肝炎を引き起こす正体を解き明かす為に顕微鏡を囲む。その後に続く理不尽な出来事。戦争が人を狂わせる。身勝手にさせる。カンゾー先生はわかってくれる人がいない日常から、学会で仲間に認められて喜びを味わう。しかしそれがさらに研究に没頭させ失敗につながってしまう。

キャスティングがいい。クセのある脇役が多い柄本明が、信念ある赤城医師を力強く演じている。若々しい麻生久美子がまぶしくて仕方ない。世良公則演ずる外科医、フランスの俳優ジャック・ガンブランもいい仕事。ラストには、ユーモラスな味を持たせながらも、反戦のメッセージを強く印象づける。

今まで敬遠してたけど観てよかった。





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ふたりの女

2023-03-08 | 映画(は行)


◼️「ふたりの女/La Ciociara」(1960年・イタリア)

監督=ヴィットリオ・デ・シーカ
主演=ソフィア・ローレン ジャン・ポール・ベルモンド ラフ・バローネ エレオノラ・ブラウン

戦時下のイタリア。空襲が激しくなるローマを離れた母娘と厳しい状況の中で生きる人々の姿を描いた秀作。ヴィットリオ・デ・シーカ監督は、男と女の軽妙な娯楽作がある一方で、こうしたイタリアン・ネオリアリズモと呼ばれる現実主義的な作品もある。本作はネオリアリズモ路線ではあるが、後の名作「ひまわり」にも通ずる、戦争と男と女の物語でもある。

ローマを離れるチェジラは夫の友人ジョバンニの元を訪れる。戻るまで家を頼むだけのつもりが、暗闇で押し倒されてしまう。そこから娘と疎開するストーリーが進み始めるので、暗闇で抱擁するこの場面が長く感じられた。しかしここでワイルドなラフ・バローネを強調しているから、疎開先で出会う年下の男性ミケーレ(ジャン・ポール・ベルモンド)との対比が生きてくる。チェジラに愛情を示すミケーレに「このご時世では役に立たない男」と切り捨てるのだ。一方で娘もミケーレに好意を抱く。「平和だったらあんたにお似合いなのにね」

疎開先で出会う様々な立場の人々。ドイツ将校に媚びる富裕層の老人、生きるために食料をやり取りする人、脱走兵、ロシア兵、そして敗戦間近のドイツ兵。わずかな登場場面でも印象に残るキャラクターもいる。このあたりは現実主義的な作風が生きている。

母娘は再びローマに向けて歩き始めるが、北アフリカから来た兵士たちに襲われてしまう。心を閉ざした娘の定まらない視線と変わってしまった言動、必死になって守ろうとするチェジラには涙を誘われる。戦時下という状況、気持ちをむき出しにする男性と立場の弱い女性。ジョヴァンニやミケーレだけでなく、男の欲望までもがチェジラの身に迫ってくる。ミケーレがチェジラにくれる優しさが、あの時代に本当は大切なものだったのでは…と気付かされるラスト。とても切ない。




 

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オルカ

2023-03-06 | 映画(あ行)

◼️「オルカ/Orca」(1977年・アメリカ=イタリア)

監督=マイケル・アンダーソン
主演=リチャード・ハリス シャーロット・ランプリング ウィル・サンプソン ボー・デレク

スピルバーグの「ジョーズ」が大ヒットした後、70年代後半には動物が人間を襲う様々な映画が製作された。小学校高学年だったけどよく覚えている。犬、熊、蜂、ミミズ、ピラニアとかいろんなものがスクリーンの向こうから襲ってきていた。修学旅行で乗ったフェリーで蛸に襲われる映画のビデオが流れてて、「船に乗ってるのにそのセレクトどうよ?」と思ったもんですw

さて。そんな時期にディーノ・デ・ラウレンティス御大が製作総指揮した作品が「オルカ」。地上波で放送されたのを中学生の時分に初めて観た。

水族館に売る目的でオスのシャチを捕まえようとした漁師ノーマン。誤ってメスのシャチを撃ってしまい、胎内の子供も死なせてしまう。ノーマンの姿を水面から見つめていた瞳。その後、シャチが港で船を襲う事件が起きる。過去の出来事から妻子を失ったオスの気持ちが理解できると言うノーマンは、シャチが待つ海へと向かう。

「ジョーズ」の緊張感とは全然違う。本能で襲ってくる恐怖ではない。高い知性を持つシャチがどんな生き方をしているのかを、映画は理詰めで観客に示す。そうした生態や特徴を生物学者や乗組員から聞いていたにも関わらず、利益やら欲望から悲劇が起こる。シャチが港で仕掛ける様々な攻撃も、次第にシャチ側の気持ちに味方して観てしまう。こんな映画なかなかないだろう。手招きするようなシャチの動きを追ってたどり着く北極海。クライマックスはまさに決闘と呼ぶに相応しい。

「ジョーズ」の圧倒的な恐怖とは違った悲壮感がたまらない。村の漁民から冷たい視線を浴びせられる無言の出航場面にしても、エンニオ・モリコーネの音楽にしても、精神的に観客も追い詰められていく気がする。そこにイタリア資本が入った映画らしい(?)、ショッキングな演出も加わる。それでいて、ドラマ部分はしっかりしている。当時流行った娯楽映画のようで、他の映画にはない魅力を讃えている不思議な映画だ。中坊の頃に観た時も何とも言えない悲しさで胸がいっぱいになった。今でも忘れられないのはそのせいなんだろう。他の動物パニック映画とは違うのだよ。もっと評価されるべき。

この映画の語り部でもある生物学者を演じたシャーロット・ランプリングが美しい。ノーマンに反発するようで、理解者でもある存在。シャチ捕獲に向かう船で、「シャチの夫婦は一生添い遂げるのよ。私たちは家族を壊すことになるのよ」とノーマンに言う乗組員の女性。見たことあるなぁ、と思ったら「テン」「類人猿ターザン」のボー・デレク(懐)。




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トリコロール/白の愛

2023-03-04 | 映画(た行)

◼️「トリコロール/白の愛/Trois couleurs: Blanc」(1994年・フランス=ポーランド=スイス)

監督=クシシュトフ・キェシロフスキ
主演=ズビグニェフ・ザマホフスキ ジュリー・デルピー ヤヌシュ・ガヨス

カップルの間でなにかすれ違いが起こると、ついつい頭をよぎってしまうのは、愛し愛されていることのバランス。“あいつ、オレが思ってるほど、オレのこと愛してないんじゃないだろか“、だの“あの人よりも私の方が絶対愛してるのとおもうのよね“。郷ひろみのバラード「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」なんか聴いて、その歌詞に黙ってうなづいてしまう世代でなくとも、人生の経験値は日々確実に上がって、男と女について思うことも、次第に変わってくるものだ。

さて本題。フランス国旗の三色、トリコロールの白は“平等“。本作は、夫婦の愛し愛されることをめぐるバランスをテーマに、前作「トリコロール/青の愛」とは全く違うブラックコメディに仕上がっている。しかも前作が女の哀感ならば、本作は男の哀感。おセンチな「青」に気持ちが乗らなかった男性陣は、こちらの方が身につまされてしまうのではなかろうか。

ジュリー・デルピー演ずる美しい妻から、性的不能を理由に離婚を迫られる主人公のポーランド人男性。愛情を確かめ合うのにセックスを大切に思う妻の気持ちに応えることができない。金も希望もなく、失意のうちに祖国へ帰る。じめじめした話、と思いきや、そこから先は一転してコメディ色が強くなる。祖国でひと山当てた彼は、危険かつ奇妙な行動に出ていく。

クライマックスは、女の愛を確かめるのにそこまでするのか?とも思えるが、その一途さこそが男の性(さが)だし、悲しいところだし可笑しいところ。実は、今の年齢でこれを再度観たいと思っている。初見だった頃とは自分の経験値も上がっているだろうし、かなり違うところに気持ちが反応するんではないかと。いつ観たって映画は映画だけど、観るべき年齢があるし、その年齢で観るべき映画もあるだろう。

透明感のあるジュリー・デルピーの美しさには見惚れてしまう。まさに”白”の配役にふさわしい。



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トリコロール/青の愛

2023-03-02 | 映画(た行)

◼️「トリコロール/青の愛/Trois Couleurs: Bleu」(1993年・フランス=ポーランド=スイス)

監督=クシシュトフ・キェシロフスキ
主演=ジュリエット・ビノシュ ブノワ・レジャン エレーヌ・ヴァンサン フローレンス・ペルネル

音楽と映像が美しく絡み合う映画が大好きだ。「トリコロール/青の愛」はまさにそれ。主人公の脳裏に亡き夫が遺した旋律がよみがえるシーンや、登場人物それぞれの思いを抱きしめてくれるようなラストシーンでの音楽の効果。それぞれの瞬間に酔わされる。

フランス国旗の三色のうち、青は自由の象徴。でもこの映画で表現される青のイメージはとにかく重く、暗い。しかしそんなブルーな心を乗り越えて、彼女自身の自由へと歩み出す姿がじわーっと感動させてくれる。

ジュリエット・ビノシュ、「存在の耐えられない軽さ」を観て以来、昔も今もとても気になる女優さん。






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