Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

安城家の舞踏会

2023-04-13 | 映画(あ行)

◼️「安城家の舞踏会」(1947年・日本)

監督=吉村公三郎
主演=滝沢修 森雅之 原節子 逢初夢子

華族制度が廃止されることで身分を失う一家の姿を描いた名作、と噂には聞いていたけど観るのは初めて。圧倒されました。没落貴族の映画なんて、ルキノ・ビスコンティの専売特許だと思っていたけど、日本映画にこんなすごいのがあったなんて。傑作。

地位も財産も失う日が迫る中、原節子演ずる次女は屋敷の売却先で奔走する。時代は確かに変わったけれど、爵位のプライドや過去を捨てきれない父と長女。「殿様」と慕われてきたが、その地位を維持することなどもはやどうにもならない。それでも過去にしてやった恩義を口にして債権者に頭を下げて猶予を訴える父。運送業で成功した元運転手は、次女に屋敷の購入を頼まれる一方で、出戻りの長女に愛情を抱いていた。しかし長女は貴族のプライドを捨てられない。手を振りほどいて「汚い」と言い放つ。時代の節目で、表舞台から姿を消す者たちと、経済力をつけていく者たち。

この映画が公開されたのは1947年。まさに華族制度が廃止された年だ。そんな時期に製作されたことが驚きだし、それが興味本位でなく、去りゆく者の揺れる心に触れるような繊細に描かれた物語。

庶民でない原節子も素晴らしい。森雅之って、今まで観たどの映画でも女性に好感度低そうな男を演じてる。それでも、許嫁だった女性にビンタ喰らった後で、高笑いしてピアノに向かう姿がなんか憎めない。

しとやかな獣」とこれを観て新藤兼人の脚本の良さを改めて感じた。時代の空気を感じ取れたり、短いけれど端的に刺さる台詞たち。




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シン・仮面ライダー

2023-04-11 | 映画(さ行)

◼️「シン・仮面ライダー」(2023年・日本)

監督=庵野秀明
主演=池松壮亮 浜辺美波 竹野内豊 斎藤工 森山未來

2019年に「仮面ライダープレミアムアート展」なるイベントに行った。昭和ライダーから平成ライダーまで歴代作品のパネル展示、ライダースーツ、怪人、石ノ森章太郎センセイの原稿や遺品の数々などなど興味深いものがたくさんあった。お子ちゃまたちが昭和の悪役が怖くて泣き叫んでいる。「V3」の敵幹部ドクトルゲーの前で「怖いよぉー」とガキんちょが座り込み、平成ライダーの展示になるとガキんちょが滞留して列が進まない(汗)。何はともあれ、仮面ライダーは世代を超えて愛されるヒーローなのだ。


僕は1号ライダーリアルタイム世代。地方都市在住だったから放送は日曜の朝。ミユキ野球教室の後でバイクの音と共に番組が始まるのが毎週楽しみだった。その初代を庵野秀明監督がリブートする本作。このところ公私共に忙しかったので久々の映画館詣で。頭使う映画は無理だな…と思い本作をセレクトw。

映画冒頭からカーチェイスで幕が上がる。いきなり!?あらら、浜辺美波ちゃん捕まっちゃったよ。そこにリアルタイム世代には耳になじみのあるヒュヒューッって効果音。崖の上に立つライダー。石ノ森ヒーローって必ず高い場所から登場するんよね。戦闘員を殴る、蹴る。飛び散る血飛沫!😳、うわっ、なかなかハードな描写。PG-12のレイティングは当然だな。本作の本郷猛がもつ優しさと対照的にも映る過激な力。葛藤を超え、現実を受け入れて、彼が使命を果たそうとする姿が描かれる。

確かに1号世代のハートに刺さる部分は楽しい。ベルトに風を受けて変身する場面にしても、オリジナルの菊池俊輔BGMも、オマージュ満載のアクションシーンにしても、死んだら泡になる場面も、ラストで名乗る二人の名前も😆。でも戦闘員は「イーッ!」って言わないし、ルリ子は守られる存在じゃなくて妙に自信満々だし、Wライダーキックは暗い場面だからオリジナルで感じたありがたみが薄らぐし。そこはオリジナルどっぷり世代には物足りなさが残るところかも。

庵野作品らしくエヴァや他の作品の影がチラつく。ルリ子のキャラクター設定や父親への感情は、もろに綾波レイを思わせる。森山未來演ずるチョウオーグは、玉座から離れる時に糸(ケーブル?)で繋がれていたのが放たれる。これはエヴァのケーブルでもあり、「ナディア」のクライマックスに登場する皇帝にも重なる部分(ネタバレ防止のため控えめな表現にとどめます)。新たな力を手にした主人公が何人かの敵と戦う映画全体の構成や派手な怪人の造形は、実写版「キューティーハニー」とアニメ「Re:キューティーハニー」で、庵野監督は既に実践済み。それだけについつい感じてしまう「またか」という既視感。でもそれは僕ら世代だからかもしれない。若い方々はもっと素直に楽しんだらいいと思うのだ。

エンドクレジットで流れるオリジナルの主題歌や子門真人の挿入歌。菊池俊輔楽曲独特のホーンセクションの派手なアレンジはやっぱりカッコいい(ジョジョの「その血の運命」のホーンアレンジはこれを受け継いでいると勝手に思っている😝)。本編のBGMでも流れるオルガンの音色は、初代ライダー作品の雰囲気を作っていると再認識。

蛇足。池松壮亮は苦手。共演女優と裸で絡む役が目立つから"前貼り先生"と呼ばれる。浜辺美波に「着替え中だから離れてて。変なことしないで」と言われる場面では、「そうだーっ!美波ちゃんに手を出すな!」と心で叫んでおりました(恥)。

ハチオーグ戦の後。「私、用意周到なの」と強気だったルリ子が「ちょっと胸を借りる」と言ってすすり泣く場面にキュンとした。マスク被ると台詞が聞き取りにくくなるのは難あり。全体的に正義や勇気というメッセージが薄味なのは、ちょっと残念なところ。




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ネバーセイ・ネバーアゲイン

2023-04-09 | 映画(な行)

◼️「ネバーセイ・ネバーアゲイン/Never Say Never Again」(1983年・アメリカ)

監督=アービン・カーシュナー
主演=ショーン・コネリー キム・ベイシンガー バーバラ・カレラ クラウス・マリア・ブランダウアー

ジェームズ・ボンドこそ男子の理想めいた刷り込みをされて育ったtak少年。「ユア・アイズ・オンリー」の頃には、007シリーズは家族で楽しむものと化していた(変な一家ですみません😅)。
👨🏻「でもやっぱりショーン・コネリーがいいのお」
贔屓目に見て(頭髪の具合が)ショーン・コネリー似の親父殿が言う。妹たちも同意。刷り込みって怖いよな。そんな1983年の暮れ。正月映画として封切られたのが、ショーン・コネリーが再びボンドを演ずる「ネバーセイ・ネバーアゲイン」だ。地元映画館での同時上映は残酷な場面満載のドキュメンタリー映画「グレートハンティング’84」。ビビる妹たちを尻目に、自称ハリソン・フォード似の僕は提案した。
😏「今回は男二人で行こうよ」
👨🏻「お前、3学期始まったらすぐ試験ち言いよったじゃねえか」
😜「平気平気、余裕だよ。ジェームズ・ボンド並みに余裕」
👨🏻「なにバカ言っちょんのか」

ご存知かと思うが、本作はイオン・プロダクションの正統派シリーズとは違う。コネリー復帰を望む声に、別の製作会社が名乗りを上げて、イアン・フレミングの原作の中でイオンプロが映画化権を取得していない「サンダーボール作戦」をリメイクしたもの。ケビン・マクローリー氏が映画化権を持っており、正統派シリーズの第4作「サンダーボール作戦」にも製作に名を連ねている。それ故にガンバレルで映画は始まらないし、お馴染みのテーマ曲も流れない。

貫禄のついたショーン・コネリーがテロリストのアジトに潜入するオープニング。相変わらずカッコいい!。と思ったら、いかにも官僚出身の新任"M"(なんと「ジャッカルの日」のジェームズ・フォックス!🤩)に、「身体の毒を抜け」と施設での健康管理を言い渡される。闇で動いていた悪の結社スペクター。核弾頭を手に入れてNATOを揺する声明を発表する。白猫を抱いた首領はもちろんブロフェルド(なんと名優マックス・フォン・シドー!🤩)。

悪役ラルゴはビッグビジネスで成功を収めた実業家で、ボンドとはカードで勝負せずコンピューターゲームと当世風にアレンジ。派手な見せ場も多いし、娯楽映画としてゴージャス。ミサイル飛行シーンの特撮にしても、潜水艦からミサイル状で打ち上げられる飛行ガジェットにしても、オートバイを使ったカーチェイスも派手で楽しい。初めて観た時は、そうしたアクションやキム・ベイシンガーのいい女っぷりが楽しかった(レオタードの透け具合のせいなのか、Amazon PrimeはPG-12)。ウン十年ぶりに改めて観ると丁寧に撮って、正統派と違う魅力を出そうとしているのがよくわかる。

監督のアービン・カーシュナーは「スターウォーズ/帝国の逆襲」を撮る際に、「画面を人々の顔で満たしたい。これにまさる娯楽はない」と述べている(Wiki)が、その演出編集の手法は本作でも冴えていて、ボンドが出てくる場面がやたらスタイリッシュで、映るだけで観客を納得させる。当時予告編やCMでも使われていた白い壁の向こうから黒いタキシード姿のショーン・コネリーが現れる場面。胸元から銃を出すワンカットだけで、誰もがジェームズ・ボンド映画だと思えてしまう。また、療養施設で怪しげな患者をボンドが覗き見る場面。暗視スコープでショーン・コネリーの顔が浮かび上がるだけで、ボンドとスコープで見ている悪女ファティマの緊張が伝わる。他にも表情のアップやバストショットなど人物に絞った映像は多用されている。悪役ラルゴのキレやすさ、恐れと不安に震えるドミノ、神経質なM。キャラクターが際立っている。

あと、力説したいのは悪女ファティマを演ずるバーバラ・カレラのカッコよさ。「サンダーボール」のファティマもエロくて自意識の強いキャラクターだったが、「ネバーセイ…」のファティマはさらに殺し屋を楽しむ気質やド派手なファッションが素晴らしい。ボンドに銃口を向けて、「私が一番だ。最高の快楽を与えてくれたのは私だったと書き残せ。」と迫る。スペクターの順列であろうNo.12と呼ばれてイラっとする表情など、細かいけど人柄がよく出ている。ミシェル・ルグランの音楽もジャズぽい劇伴もあって大人の魅力。主題歌のトランペットソロ🎺とプロデュースは、ハーブ・アルパートじゃねえか!🤩

水上スキーをしていたファティマとボンドが初めて交わす会話がオシャレ。
👩🏼‍🦰「ごめんなさい。服を濡らしちゃったわね」
😏「大丈夫。私のマティーニはまだ"dry"だ」
酒の辛口=dry、と乾いている=dryをかけたカッコよさ。映画雑誌に英語の台詞を解説するコーナーがあって、この台詞を取り上げていた。
😉「こんなこと言える大人って、カッコいいよな」
と試験勉強の英語そっちのけ。映画で使われたスラングの方が頭に入るのはなんでだろ。そういえば、関係代名詞のwhoの使い方は「私を愛したスパイ(The spy who loved me)」、付帯状況withの使い方は「黄金銃を持つ男(The man with the golden gun)」で覚えたぞ。何が悪い。

そして3学期が始まり定期試験。
…惨敗😱
返却された答案は、ボンド映画に倣って「読後消去すべし」(For your eyes only)と勝手に解釈しました😝。





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SPY x FAMILY

2023-04-07 | テレビ・アニメ


夫婦で隠し事があってそれがスパイや殺し屋でした、と言うお話なら世間にいくらでもある。アンジーやブラピ、トム君の顔が浮かぶことだろう。だけどそこに子供という要素が加わり、偽装するのが家族となると事態は一変する。この作品の基本設定を聞いて、最初は「なんぼのもんじゃい」と思っていたが、気づくとどハマりしていて、全12話を長女とキャアキャア言いながら完走。

任務に忠実になればなる程、隠し事を貫こうと思えば思う程、世間から魅力的に映る家庭にならなければならない。そのギャップ、ジレンマ、スパイの立場を利用しまくった家庭円満作戦、受験合格作戦の数々が楽しい。

ロイド・フォージャーがひたすらカッコいい。ああいう色のスーツいいな、そー言えばバブル期にモスグリーンのスーツ持ってたな。ED曲歌ってる星野源もPVでこんな色のスーツ着てるな。007、ジェームズ・ボンドこそ男子の理想と育てられた僕だけに、ロイドのキャラクターに憧れる。ヘンダーソン先生と一緒に「エレガント!」と称えたくなる。

長女に言ってみた。
😏「将来男の子の母親になったら、こういう男になりなさいって、このアニメ見せるんやろ」
🧒🏻「いいかもね、ちち(アーニャの口調)」
まあ、もともとうちは"ちち""はは"と呼んでいたから違和感はないのだが。

わが家は一応お受験を経験しているので、両親と子供での面接の回は、嫌な記憶が頭をよぎる。
😐「オレが質問に答えてる時に、お前立ち上がって走り回ったんだぞ。覚えてるか?」
🧒🏻「知らない。覚えてないよ、ちち(アーニャの口調)」

ヨルさん(大好き)の特訓が成功しないオチも笑わせてくれる。
🧒🏻「ははの教え、役に立たない(ここまでアーニャの口調)…って、近頃マぁジそう思う」
😟「まぁまぁ」
早見沙織のボイスアクトは、落ち着きを感じさせるのに、少女のような茶目っ気もあるキャラを見事に演じていて好感。「平家物語」の建礼門院徳子もよかったしな。

隠し事があるかないかは別としても、世間が考えるよき家族を演じなければならない場面って人生について回ることは得てしてあるものだし、関係を守るために真剣になることはどこの家庭にもある。それはフォージャー家となんら変わらない。フツーじゃないのに、どこか共感できる不思議な感覚。









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伴奏者

2023-04-06 | 映画(は行)

◼️「伴奏者/L'Accompagnatrice」(1992年・フランス)

監督=クロード・ミレール
主演=ロマーヌ・ボーランジェ リシャール・ボーランジェ エレナ・サファノバ

孤独な人生だと悟りきったように生きるヒロイン、ソフィ。歌手イレーヌへの憧れ、人から信用される喜びを知り、彼女のピアノ伴奏者として行動を共にするようになる。折りしもドイツ軍の影が近づく時代。イレーヌが音楽活動を続けられたのは、夫がドイツ軍と取引していたからだった。親独のヴィシー政権から招かれるが、イレーヌの意見でイギリスに渡ることに。政治的なつながり、夫婦の思いのすれ違い。彼らの間で翻弄されながら、ヒロインが少女から成長していく物語。

クロード・ミレール監督は俳優の魅力を引き出すのがとても上手な監督。シャルロット・ゲンスブール、イザベル・アジャーニ、リュディヴィーヌ・サニエ、遺作ではオドレイ・トトゥを起用して、特に若手からはその年頃の複雑な心情をちょっとした表情から感じさせてくれて、他のアイドル視されそうな映画とは違った魅力を引き出している。この映画のロマーヌ・ボーランジェもそう。そしてその成長を見守るかのように、実の父親リシャール・ボーランジェをキャスティングしているのも面白い。

「人生はいつも私のわきを通る。
 私はいつも置いてけぼり。」
ソフィがつぶやくひと言だ。

一緒にいる夫婦にはいろんなつながりがそれぞれにあるのに、自分だけにはそれがない。そして常に引き立て役でしかない。彼女が感じる自分への苛立ちと孤独感。

この映画を観た当時、僕は仕事のことで悩んでいた。社会人になって最初に勤めた会社で、それなりの経験も積んで周囲から頼られ始めていたけれど、気づくと誰かのしでかした事の尻拭いをすることばかりが増えていて。都合のいい人になってる。このままでいいんだろうか、と考えていた時期だった。

だから、決して表舞台に立つこともなく、誰からも賞賛されない伴奏者であるソフィの気持ちに共感した。他の映画では素敵な笑顔を見せるロマーヌ・ボーランジェは、この映画では大部分ニコリともしない。でも僕はこの映画のロマーヌに強く惹かれたのだ。

映画の最後、結局ソフィは再び一人になってしまう。戦争が人々を翻弄した日々ではあるが、誰かに翻弄された日々でもあった。故郷に向けて歩き出す彼女の姿は悲しげだけど、映画の初めとは違う歩みだと思えた。





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飛ぶ夢をしばらく見ない

2023-04-03 | 映画(た行)

◼️「飛ぶ夢をしばらく見ない」(1990年・日本)

監督=須川英三
主演=細川俊之 石田えり 加賀まりこ 

若い頃に観たっきりで、今の年齢でまた観たいな…と思ってる映画はいくらでもある。年齢というキーワードから、特にそう思うのは本作「飛ぶ夢をしばらく見ない」。

入院中の主人公修司の部屋に列車事故に遭った女性が運ばれて、一晩だけ相部屋となる。その女性睦子から、衝立越しに交わす言葉だけで愛し合いたいと、驚くような申し出が。イケボの細川俊之の囁く低音。衝立の向こうから女性の息づかいが聞こえる。緊張感のある導入部に引き込まれた。翌朝、衝立が外されるとそこにいたのは白髪の老婆だった。

その後、修司の元に睦子から連絡が入る。会ってみると睦子は魅力的な中年女性。彼女は日に日に若返っているのだと言う。一夜を過ごした二人。そして会うごとに睦子はさらに若くなっていき、修司は離れられなくなっていく。

石田えりファンには、その魅力をフルコースで堪能できる映画だろう。初めて観た時は120%石田えり目当てで観たっけ。でもラブシーン以上に心に残ったのはラストの虚しさだった。それが忘れられない。今観ると、年齢重ねた主人公が女性に夢中になっていく様子に変に共感しちゃうかもしれないな。

これを観た当時、僕は住宅関連のお仕事に関わっていた。建設会社に勤める主人公が住宅展示場に荷物を届けるシーンが強烈に印象に残っている。荷物を受け取った若い社員が、
「ありがとうございますー。あーっ、またアンケート用紙かよぉ。」
こんなん無駄だよ、書いてくれるわけねえじゃん、みたいなことを言うのだけど、その反応がすっごく生々しくて🤣。住宅業界を舞台にした映画ってなかなかないからちょっと面白かったんでした。そして、その展示場に一人残った主人公の前に、10代に若返った睦子が現れる…。ええーっ、そこで抱き合っちゃってぇーっ😳

現在では映像化できないような場面も出てくるだけに、放送媒体でお目にかかることはできないのかなぁ。中古DVDは高値になってるし。うーむ。山田太一の原作に挑んでみようかと。


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第七天国

2023-04-01 | 映画(た行)

◼️「第七天国/The Seventh Heaven」(1927年・アメリカ)

監督=フランク・ボーゼージ
主演=ジャネット・ゲイナー チャールズ・ファレル ベン・バード デヴィッド・バトラー

以前から気になっていた作品。タイトルは、宗教的には天国の階層や天使の住処めいた意味があるそうだけど、これがどうストーリーにからんでくるのか。Perfumeの楽曲にも同じタイトルの名曲があるしw。

パリの下町。姉に虐げられて絶望していた娘ジャニースが、下水掃除人シコと出会う。彼女の窮地を咄嗟の機転で救ったシコは「行くところがなければ俺のところに」とジャニースと暮らし始める。夫婦だと偽ったので警察が確認に来るまで同居という条件だったのが、お互いに離れられなくなる。でもシコは"愛してる"が言えない。それでも一緒にいることが幸福だと言う気持ちを表現する。
「シコ、ジャニース、天国!」
幸福を感じた二人。しかしドイツの侵攻により、シコは戦地に赴くことになる。二人は毎日同じ時間にお互いを思う約束をする。

活弁付きではあるがサイレント映画を観るのは久々なので、120分弱もつかなと思ったが、全くの杞憂。直球ラブストーリーの前半、戦争スペクタクルを含めた後半、感動のラストまで飽きさせない。主役二人に絞ったラブストーリーだと勝手に思っていたが、後半のスケールの大きさと、最前線の塹壕の中での人間模様に、戦争の無意味さと人間ドラマの深みを強く感じる。

「俺は特別な人間なんだ」
「常に上を向いているんだ」
という前向きなシコの考え方。生き方のベクトルがそうした言葉で印象づけられる。さらに地下で働く下水道掃除人から、地上に出て道路清掃人になりたいと願うこと。階段を上った7階にある部屋。そこが自分にとっての天国。それが二人にとっての第七天国になる。

相手を見下すような言葉を吐いたり、無神論者だったシコが変わっていく。ジャニースも笑顔を取り戻し、シコの生き方に共感するようになる。主人公二人の成長は、伏目がちだった目線が上がって行くこと。地下から地上、7階の住まいと、上へ上へと向かう舞台装置が相乗効果となっていて、スクリーンのこっち側の感動も盛り上がっていく。巧い。




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