◼️「ネバーセイ・ネバーアゲイン/Never Say Never Again」(1983年・アメリカ)
監督=アービン・カーシュナー
主演=ショーン・コネリー キム・ベイシンガー バーバラ・カレラ クラウス・マリア・ブランダウアー
ジェームズ・ボンドこそ男子の理想めいた刷り込みをされて育ったtak少年。「ユア・アイズ・オンリー」の頃には、007シリーズは家族で楽しむものと化していた(変な一家ですみません😅)。
👨🏻「でもやっぱりショーン・コネリーがいいのお」
贔屓目に見て(頭髪の具合が)ショーン・コネリー似の親父殿が言う。妹たちも同意。刷り込みって怖いよな。そんな1983年の暮れ。正月映画として封切られたのが、ショーン・コネリーが再びボンドを演ずる「ネバーセイ・ネバーアゲイン」だ。地元映画館での同時上映は残酷な場面満載のドキュメンタリー映画「グレートハンティング’84」。ビビる妹たちを尻目に、自称ハリソン・フォード似の僕は提案した。
😏「今回は男二人で行こうよ」
👨🏻「お前、3学期始まったらすぐ試験ち言いよったじゃねえか」
😜「平気平気、余裕だよ。ジェームズ・ボンド並みに余裕」
👨🏻「なにバカ言っちょんのか」
ご存知かと思うが、本作はイオン・プロダクションの正統派シリーズとは違う。コネリー復帰を望む声に、別の製作会社が名乗りを上げて、イアン・フレミングの原作の中でイオンプロが映画化権を取得していない「
サンダーボール作戦」をリメイクしたもの。ケビン・マクローリー氏が映画化権を持っており、正統派シリーズの第4作「サンダーボール作戦」にも製作に名を連ねている。それ故にガンバレルで映画は始まらないし、お馴染みのテーマ曲も流れない。
貫禄のついたショーン・コネリーがテロリストのアジトに潜入するオープニング。相変わらずカッコいい!。と思ったら、いかにも官僚出身の新任"M"(なんと「ジャッカルの日」のジェームズ・フォックス!🤩)に、「身体の毒を抜け」と施設での健康管理を言い渡される。闇で動いていた悪の結社スペクター。核弾頭を手に入れてNATOを揺する声明を発表する。白猫を抱いた首領はもちろんブロフェルド(なんと名優マックス・フォン・シドー!🤩)。
悪役ラルゴはビッグビジネスで成功を収めた実業家で、ボンドとはカードで勝負せずコンピューターゲームと当世風にアレンジ。派手な見せ場も多いし、娯楽映画としてゴージャス。ミサイル飛行シーンの特撮にしても、潜水艦からミサイル状で打ち上げられる飛行ガジェットにしても、オートバイを使ったカーチェイスも派手で楽しい。初めて観た時は、そうしたアクションやキム・ベイシンガーのいい女っぷりが楽しかった(レオタードの透け具合のせいなのか、Amazon PrimeはPG-12)。ウン十年ぶりに改めて観ると丁寧に撮って、正統派と違う魅力を出そうとしているのがよくわかる。
監督のアービン・カーシュナーは「スターウォーズ/帝国の逆襲」を撮る際に、「画面を人々の顔で満たしたい。これにまさる娯楽はない」と述べている(Wiki)が、その演出編集の手法は本作でも冴えていて、ボンドが出てくる場面がやたらスタイリッシュで、映るだけで観客を納得させる。当時予告編やCMでも使われていた白い壁の向こうから黒いタキシード姿のショーン・コネリーが現れる場面。胸元から銃を出すワンカットだけで、誰もがジェームズ・ボンド映画だと思えてしまう。また、療養施設で怪しげな患者をボンドが覗き見る場面。暗視スコープでショーン・コネリーの顔が浮かび上がるだけで、ボンドとスコープで見ている悪女ファティマの緊張が伝わる。他にも表情のアップやバストショットなど人物に絞った映像は多用されている。悪役ラルゴのキレやすさ、恐れと不安に震えるドミノ、神経質なM。キャラクターが際立っている。
あと、力説したいのは悪女ファティマを演ずるバーバラ・カレラのカッコよさ。「サンダーボール」のファティマもエロくて自意識の強いキャラクターだったが、「ネバーセイ…」のファティマはさらに殺し屋を楽しむ気質やド派手なファッションが素晴らしい。ボンドに銃口を向けて、「私が一番だ。最高の快楽を与えてくれたのは私だったと書き残せ。」と迫る。スペクターの順列であろうNo.12と呼ばれてイラっとする表情など、細かいけど人柄がよく出ている。ミシェル・ルグランの音楽もジャズぽい劇伴もあって大人の魅力。主題歌のトランペットソロ🎺とプロデュースは、ハーブ・アルパートじゃねえか!🤩
水上スキーをしていたファティマとボンドが初めて交わす会話がオシャレ。
👩🏼🦰「ごめんなさい。服を濡らしちゃったわね」
😏「大丈夫。私のマティーニはまだ"dry"だ」
酒の辛口=dry、と乾いている=dryをかけたカッコよさ。映画雑誌に英語の台詞を解説するコーナーがあって、この台詞を取り上げていた。
😉「こんなこと言える大人って、カッコいいよな」
と試験勉強の英語そっちのけ。映画で使われたスラングの方が頭に入るのはなんでだろ。そういえば、関係代名詞のwhoの使い方は「私を愛したスパイ(The spy who loved me)」、付帯状況withの使い方は「黄金銃を持つ男(The man with the golden gun)」で覚えたぞ。何が悪い。
そして3学期が始まり定期試験。
…惨敗😱
返却された答案は、ボンド映画に倣って「読後消去すべし」(For your eyes only)と勝手に解釈しました😝。